北海道の中でも有数の観光都市である函館。その函館の中でも屈指の観光スポットである金森倉庫の一角にあるホールが今晩の会場だ。ここは明治時代に建てられた赤レンガ造りの倉庫を改装したホールでレストランなども隣接しており、目の前には波止場があって夜になると辺りがライトアップされる、ちょっとロマンチックな場所だったりする。実際、今回のライブのオファーがあった時に決めてとなったのは、金森ホールの雰囲気がステキだったからだと、s-ken氏(中山うりのプロデューサー)は教えてくれた。中山うりは、初遠征ライブに、何というステキな場所を選んだのだろう!
そもそも、ライブのオファーが最初にあったのは去年の冬頃。s-ken氏が函館の知人にCDを送ったのがきっかけだった。それが巡り巡って、今回の話にまで発展したのだが、一時は諸々の問題により、この話は立ち消えそうになったらしい。しかしながら、今年に入って再び熱のこもったオファーをした結果、なんとか開催が決定したという。そういう経緯があったせいか、地元スタッフの歓迎振りは、なかなかなものであった。何せ、ライブの開催が決定してから当日まで二ヶ月ちょっとしかない中、全て手作りで用意したというのだから。主催者の笹木さんによると、スタッフのほとんどがボランティアだという。さらに面白かったのが、このライブが地元のタウン誌の裏表紙で大々的に告知されていたこと。大型イベントの告知でもあるまいし、こんなに大きく広告スペースをとっているのなんて見たことがない。もちろんこれも今回のライブに賛同してくれたボランティアの一環だというから驚きだ。
しかしながら、個人的には不安もあった。これから売り出すアーティストが遠征ライブを初めてチャレンジする場合、大きな都市でやるのが一般的であろう。ある程度の集客も話題性もある。しかしながら、中山うりがいくらフジロックフェスティバル出演の経験があったとしても、iTunes Storeで記録的な数字を残していたとしても、大都市ならいざ知らず、人口30万人程の函館に一体どれほどの知名度があるというのか? 万が一でも会場がガラガラだった時、何てレポートしたらいいのだろう…。そういう類の不安が私の中にあったの正直なところ。そんなもやもやを抱えながら札幌から5時間かけて会場に向かったのだが、開演時間を前に5時間分の不安は一瞬にして吹き飛んだ。詳しくは次のページで書きたいと思うが、とにかく私の想像を超える集客だったのだ。
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