ブライト・アイズ @ ココ、ロンドン (16th Mar. '07)
天才とセンティメンタリズム
米国の名門レーベル、サドル・クリークの看板アーティスト、ブライト・アイズ。コナー・オバーストが中心となって結成されたこの表現集団、コナーの繊細で特徴的な声に、物憂う詩、フォーキーなサウンドが絡まるそれは懐かしさと新しさの混在した稀有な世界だ。2005年に2枚の異なるコンセプト・アルバムを同時に発売し、溢れ出る創造の泉は枯れる事を知らない彼らだが、今回は来月にリリースされるニュー・アルバム発表に先駆け久しぶりにロンドンはココに登場。
比較的20代後半と見られる男性陣が多いオーディエンスは、開演定刻にステージに現われたメンバーを口笛鳴らして歓迎。コーネリアスの小山田圭吾のようにやたらに目が大きく幼顔のコナーだが、なんだか肩まで髪が伸び、まるでヒッピィのよう。だからか知らないが、フォーク色が強まり更にはカントリィ・スタイルをも全面に出された今夜のセットにはその外見の変化もしっくりと馴染んでいる。
前半の"ウィー・アー・ノウウェア・アンド・イッツ・ナウ"のアコースティック・ギターに乗るコナーの嘆きの歌声、哀しみと諦観のやるせなさが心を突き刺す"オールド・ソウル・ソング"。ボブ・ディラン、ニール・ヤングというフォークの先達に鼓舞されたことが如実な彼のサウンド・スタイルだが、新マテリアルの"フォー・ウインズ"はザ・キュアーとエリオット・スミスを思わせるメロディ・ラインに、意識したのかしないのか、コナー自身の声すらもロバート・スミスに聴こえ、カントリィとポップさが同居した近づき易い曲だ。
ハーモニカの響きがどこか郷愁を誘う"トゥーリスト・トラップ"で一旦幕は降り、続くアンコールの2曲を入れても演奏時間は正味1時間強と、ファンにとってはまだまだ彼らのパフォーマンスを楽しみたかったところかも知れない。けれどもコナーがオーディエンスとの会話を楽しみ、バンドの面々と絡む情熱的なプレイをしていたことは非常に印象的であった。鬱蒼とした闇を脱出した先に目にしたであろう光は、確実に彼らの新たなる世界に陽を注いでいる。感傷的でネガティヴな天才にやっと明るい瞳が宿った瞬間だ。
-- setlist --
I Must Belong Somewhere / Cartoon Blues / We Are Nowhere And It's Now / Crazy As A Loon / Old Soul Song / Middleman / Black Comedy / Four Winds / Soul Singer In A Session Band / Tourist Trap / encore / Lua / June On The West Coast
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report and photos by kaori
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