ジ・アワーズ @ KCL、ロンドン (15th Mar. '07)
音楽が音楽であるために
オアシス、ブラー、スウェイド、そしてパルプにエラスティカ、と90年代のブリット・ポップ黎明期に燦々と輝いていた彼らでさえも結果避けては通ることのできなかった盛者必衰の理。流行る事とは、同時にいつか廃れる事でもあり、今現在英国の音楽市場において盛況を見せ続けるインディ、オルタナティヴ・バンドらの姿にもやはりこの刹那の影はつきまとう。良い音楽、いついつまでも聴き続けたいと思う、或いは語り継がれる音楽とは何ぞや。前述のバンド、エラスティカやパルプに在籍していたアントニィとピアニスト、キーボーディストのマーティンという男性デュオ、ジ・アワーズはそんなこちらの疑問に、彼らの音楽を通じ今夜一筋の光を差し込んでくれた。
結成は94年と比較的新しいが、二人共ミュージシャンとしての過去の実績があるので、パフォーマンス自体が非常に落ち着き、リラックスしたムードに包まれている。人気商売の光と影を実体験したからこその今の姿なのだろうか、表現そのものから気負いや衒いというものが全くもって無い。シンプルで美しいメロディと鍵盤楽器をメインにした平均的なバンド・サウンド。しかし、スコット・ウォーカー、トーク、トークらに比較される、繊細で、トリップ・ホップのタッチをも感じさせるその楽曲陣は、ライヴではギター・サウンドの主張が目立ち、むしろその力強い対比に驚かされた。
良く言えば控え目、逆に言うと大人しく野心に欠けるCD音源だが、サポートのミュージシャン達と共に作り上げるそのバンド・アンサンブルは王道ロックン・ロール。"ピープル・セイ"、"ダイヴ・イン"らの軽快なそれには体が揺れ、ノれる一方で、マーティンの流麗なピアノの調べにしっとりと柔らかなアントニィのヴォーカルがムードあるバラード、"アイ・ミス・ユー"。オーディエンスが咳をするのも躊躇われるほどの静寂の中、非常に心に染みるナンバーであった。音楽とは人と人とのコミュニケイションであるとシンプルに語るジ・アワーズ。彼らの素朴な世界、そしてそれを楽しむ観客達の気持ちは確かに繋がっていたことを、温かな拍手が物語っていた。
-- setlist --
Love You More / Big Black Hole / Let Me Breathe / I Need To Know / Icarus / Back When You Are Good / Narcissus Road / Dive In / People Say / Murder Or Suicide / encore / I Miss You / Ali / Horses
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report and photos by kaori
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