buttonピーター、ビヨーン・アンド・ジョン @ リキッドルーム恵比寿 (7th Mar '07)

若者達の為の音楽


Peter Bjorn and John
 去年のいつ頃だっただろうか?どこからとも無く軽快な口笛と、エレクトロでちょっと切ないメロディーが流れてきたのは。一度耳にした時から自分はこの曲に恋をしてしまった。その曲がPeter、BjornそしてJohnという三人のファーストネームから名付けられたバンドの曲である事を知ったのはそれから少し経ってからの事だった。彼らの出身地であるスウェーデンは北欧の中でもとりわけ音楽が盛んな国である。ノルウェーのキングス・オブ・コンヴィニエンスもフォーキーでちょっとエレクトロな曲が18番であるが、ピーター・ビヨーン・アンド・ジョンはそこにロックな部分も持ち合わせたちょっと異色のバンドだ。

Peter Bjorn and John 彼らはこんな地球の裏側にある国で自分達の歌が口ずさまれ、大喝采に迎えられるなんて想像しただろうか。何か明確な物を打ち出す訳でもない。強いメッセージを持っている訳でもない。エフェクトがかかったギターと、正確に叩き出されるビートはただひたすら甘酸っぱく、耳に心地が良い。

 ステージの上にはメンバー三人のみのミニマムな構成で、全員がボーカルをとるところも面白い。「次の曲は”Paris”です。」と流暢な日本語が飛び出し一気に日本の観客と彼らが近くなる。ハーモニカのサウンドがアクセントになった牧歌的なラブソングが心にぐっと染み渡る。ドラムのJohnがボーカルをとる“Start To Melt”は短いながらも荒削りで力強い。ただポップなだけじゃない。オブスキュアなギターはポストロック的でもあるり、表面的には知ることのなかった彼らの音楽的な下地が垣間見れる演奏に更に期待が高まる。

 そしてこのライブに来た人達が全員待ちに待っていたであろうあの口笛ソング。"Young Folks"が始まると会場の温度が一気に高まった。ゲストボーカルにヴィクトリア嬢を迎え、まさにあの曲そのものを披露してくれた。ピーターが自分のパートを間違ってしまうというハプニング付で!そんなところもまた愛嬌で、がっかりするどころかちょっと緊張の糸が緩んで彼らもリラックスをしているように見えた。

Peter Bjorn and John 過熱した空気を冷ます事なく、音の洪水を紡ぎ続ける姿はまるで長距離を走り続けるランナーを彷彿させる。息切れしそうなところをぐっと堪え最後まで走り切る。ゴールまでの長い距離、観客のテンションを上げたままテレヴィジョン・パーソナリティーズの”Silly Girls”のカバーで幕を閉じるまで彼らは全速力で走り続けた。パンキッシュで哀愁が漂うこの曲は彼らのイメージを覆すのにあまり相応し過ぎる。

 彼らの青春時代、それは80年代。テレヴィジョン・パーソナリティーズのこの曲が今の”Young Folks”へと自然とリンクしていく。

 あなたが十代の時の事を思い出して欲しい。通学路の何て事の無い道、冬の張り詰めた教室の空気、毎日何気なく過ごしていた日々を振り返ると今の日常とは比べ物にならない程濃縮された記憶が蘇ってくる。

Peter Bjorn and John スウェーデンだって日本だって、そこがどの地であろうと、初めてする恋はドキドキとワクワクが混在している。万華鏡を覗くと目に映るイメージの様にキラキラしているはずだ。今となっては美化されてしまった十代の恋の思い出は、美しいと同時に儚く終わってしまうという残酷な面も持ち合わせている。彼らの音を聴くとその思い出が一気に流れ込んで何とも切ない気分になる。

 大人なのに大人になりきれてない。寧ろ大人になんてなりたくない。この感覚、どこかで味わったことがあるかもしれない。そう思った時に頭にぱっと浮かんだのはニュー・オーダーだった。80年代にニュー・オーダーが時代の救世主になったのと同じように、絶望と希望が入り混じる曲達を鳴らしてくれるピーター・ビヨーン・アンド・ジョンを2000年代に生きる私たちは渇望しているに違いない。
Peter Bjorn and John
report by sumire and photos by izumikuma

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