カイザー・チーフス @ シェファーズ・ブッシュ・エンパイア、ロンドン (2nd Mar. '07)
お茶の間バンドの平均美学
Na na na na〜だの、アオーだのと雄叫ぶ狭間でしっかりキャッチーなメロディを主張し、2005年のアルバム・デビューから飛ぶ鳥落とす勢いで一気にブリット・ロック・シーンにおけるスター・バンドとなったカイザー・チーフス。単独ツアー、世界各地で行われたフェスティバルへの怒濤の出演。親しみやすいその音楽性と北部出身者ゆえの飾らないキャラクターとくれば、今夜の会場を埋めるオーディエンスの層も若者から年配のカップルまでと実に幅広いのもさもありなん。
2月から約1ヶ月に渡って開催されたNMEアウォーズ・ショウのフィナーレとして銘打たれたのが今夜のカイザー・チーフスのライヴ。このたび2ndアルバムも発売の運びとなり、先行シングルの"ルビィ"もダウンロード・チャートで1位を獲得など、ブレイク以降の人気に陰りの気配は皆無、マニックスのジェイムズよろしく売れ出した途端にデビュー当時のスリムな姿はどこへやら、顔の膨らみが止まらぬフロントマン、リッキーが何よりその活動の順調さを物語っている。溢れんばかりの大歓声の中での"エヴリデイ・アイ・ラヴ・ユー・レス・アンド・レス"、新マテリアルの"ハイロイド"の一度聴いたら忘れられない躍動的な旋律、ブラーに傾倒しているであろう一種ひねくれたメロディや、"ラーント・マイ・レッスン・ウェル"に見られるスーパーグラスばりのハイパーなキーボードの妙味が彼ららしいスタイルというか、ようやく2枚目にしてカイザー・チーフスの音というものを意識して作られて来たという印象を受けた。
3日間公演の初日ということもあり、やや抑え気味のパフォーマンスと思われる計算も見られたメンバー。特にリッキーがバンドのエナジーを膨らませるキー・パーソンだけに、フェスティバルでの興奮度100%のそれと比べると、2000人収容規模の会場では彼らの色々な意味での中庸な演奏力が浮き彫りになり、中盤でだれてしまう。けれどもアンコールのキラー・チューン、"オー・マイ・ゴッド"ではスタンドもシート席も総立ちで合唱するハイライトがあり、観客とバンドの熱狂が一つになった瞬間であった。これが野外や大規模なフェスティバルとなれば、非日常空間という意味も相まってそれこそ彼らの真価が発揮されるだろう。大きな会場でこそのお家芸。15日の来日公演も迫り、今年の夏も待ち遠しくなってきた。
-- setlist --
Saturday Night / Everyday I Love You Less And Less / Ruby / Heat Dies Down / Thank You Very Much / Born To Be Dancer / Modern Way / Highroyds / Learnt My Lesson Well / Everything Is Average Nowadays / I Predict A Riot / The Angry Mob / Retirement / encore / Na Na Na Na naa / Oh My God
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report and photos by kaori
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