button サケロック with イースタン・ユース
@ リキッドルーム恵比寿 (24th Feb '07)

ピュアー&フレッシュな男達


eastern youth
 サケロックに初めて遭遇したのはちょうど三年前。イースタン・ユースの自主企画公演、極東最前線を見に行った時のこと。アメリカのアーティスト、マーティン・デニーのアルバム『エキゾティック・サウンズ』に収録されている日本風無国籍サウンド、"Sake Rock"という曲にバンド名が由来する彼らの演奏は、その名の通りどこか異国情緒あふれるジャジーなインスト。イースタン・ユースの吉野はその年の「ベスト・アルバム10枚」のセレクトで、他のアルバムを一切挙げずにただ一枚、サケロックのアルバム「慰安旅行」を挙げていたように覚えている。

 昨年11月に新作『songs of instrumental』を発表したサケロックの「フォー・フレッシュメン・ツアー」のファイナル、「スペシャル」と題されたライヴに、今度はイースタンユースがゲストとして登場した。会場のリキッドルーム恵比寿は超満員。客席は中央フロアを取り囲むように段差があり、とても見やすい会場なのだが、段差の所にも観客が鈴なりになっている。ガムランのようなSEが鳴り出すと、イースタン・ユースの三人が現れる。ベースの二宮がさりげなく手を合掌させて客席に挨拶し、会場に鳴っているSEと何だかハマっている。

eastern youth  爆音と咆哮のイメージの強い彼らだが、最新作『365歩のブルース』から披露された"希望の丘"では、吉野の飾らない力強い歌声がまっすぐにフロアに届いている。

「俺と星野源君とは凄く近所に住んでいたことがあります。そこら辺の近所の歌。」

 と吉野が語って演奏されたのが"天沼夕景"。演奏が終わると、歌とも唸りともつかぬ声をあげながら吉野がギターを爪弾き、そのまま"風ノ中"へ。息を呑むような曲展開に、会場からは歓声が漏れる。

 "大東京牧場"の間奏部分では、ギターの吉野とベースの二宮がお互いの出方を伺うように向かい合い、まるで剣道で間合いを詰めているかのような緊張感を感じる。一月末に左腕を骨折してしまった吉野は、ギターをギブスの重みごと振り下ろすかのように弾いている。

 基本的にMCは少なめだったのだが、ラストの手前、吉野がクリスマスイブにチーズフォンデュを作ろうと買出しに出かけた先で、「ハマケン」こと浜野謙太に遭遇した時の話。「冷たいビールを飲むと、チーズが胃の中で固まって死ぬらしいですよ〜。死なないで下さいネッ!」とハマケンに言われビクビクし、皆さんも「ご用心〜。」なんて最後にキメるものだから、その演奏中との落差に客席から和やかな歓声と拍手が沸き起こっていた。

 とても良い雰囲気のライヴだったのだが、イースタン・ユースは春から新作の作成に入るそうで、次回作がとても楽しみになった。

Sakerock
 いったんステージ左右から閉じていった幕が、再び客電が落ちると同時に今度はするすると左右に開いてゆく。現れたのは白いスーツもフレッシュな(?)四人組。ウッドベースの田中、トロンボーンの通称「ハマケン」こと浜野、そしてドラムの伊藤の三人は中央のスタンド・マイクを取り囲み、横で椅子に座りながら演奏する星野のギターに合わせて"インストバンドの唄"を歌い始める。途中で田中と伊藤がはずれてそれぞれのパートの位置に移り、浜野がトロンボーンを吹き始めると、続きを星野が歌い始める。歌詞自体はとてもシビアな内容なのだが、演奏が柔らかいクッションとなって客席フロアに届く。

Sakerock  で、問題はトロンボーンの浜野謙太(以下:ハマケン)である。"穴を掘る"の演奏では、甘やかな音色のギターに軽やかなリズム、良い意味で力の抜けたトロンボーンの音で観客のシルエットは揺れている。演奏中のハマケンは一見すると誠実そうだ。が、突如「やっぱ好っきやね〜〜ん」と気持ち良さそうに歌い始めた。しかもメロディが妙にハマっている。何故やしきたかじんなのか(笑)。

 彼の担当は楽器だけではなく、途中でイイ湯加減のスキャットを入れてカラ回ってみたり、着地点の分からないパントマイムを繰り出してみたりと予測がつかない。風貌は何だかリリー・フランキーの描く「おでんくん」に似ている。ただ、その笑顔が違和感満点で「悪いおでんくん」と言ったところか(すみません)。

 田中がエレキベースに持ち替えると、"慰安旅行"から"OLD OLD YORK"の流れはこなれた演奏で安定感がある。再びハマケンのスキャットという名のトーク・フリーインプロビゼーションが開始。

 「明治維新前夜、京都のある料亭に、明治維新の志士達が一同に会した...!」と唐突に時代劇ナレーションで始まり(しかも効果音込みで)、語りはどんどん不条理に転がってゆく。後ろの三人を見れば、ベースの田中はしゃがんでリラックス、椅子に座って演奏していたギターの星野は「ハァ〜。」という感じで脱力しながらハマケンを放置している。何故か辻本清美のモノマネまで飛び出し、「風が吹けば桶屋が儲かる」じゃないけれど、最初「幕末維新伝」から始まった語りは、「デスノ〜〜ト!」のキメゼリフで無事(?)着地したのであった。

Sakerock 極東最前線にゲストとして出演した時、当日会場でサケロックのアルバムが60枚も売れたという。「何だか知らないけど、物凄く自信が付いた。」とハマケンが本編のラストで語っていた。最初のアンコールでは、ゲストボーカリストとしてイースタンの吉野が再び登場。先ほどの激しいステージアクトとはうって変わって、白いスーツ姿のサケロックに囲まれて、ギターを持たないのが手持ち無沙汰なのか、上着のすそをつかみニット帽頭をかきながらモジモジ照れている。吉野はハマケンを見て「(顔が)赤ちゃんみたい。」と言ってニコニコしている。

 一曲目は吉野個人のサイト「吉野製作所」の「4tracks burning!」で聴く事のできる星野との合作"たいやき"。押さえ気味に歌う吉野の声と星野の渋いギターは穏やかで心地良い。二曲目に入る前に、ステージ上の吉野に缶ビールが差し入れされる。「アル中みたいじゃない?」と缶ビール片手に吉野が歌いだしたのは"スーダラ節"。「ちょいと一杯のつもりで飲んで...」あまりのハマりように会場から歓声と温かい笑いが起きたのだった。

 メンバーが去っても拍手は鳴り止まず、再びアンコールで演奏されたのは"信長"。ハマケンはステージで逆立ちはするわで高速でカラ回っている。最後には観客をより高くジャンプさせるために、フロアにいったんしゃがませ、一斉に観客の頭の高さがサーッとフロアに低く沈む。楽しい共犯意識も手伝って、一斉にジャンプした時の勢いと高さと、楽しさといったら無かったのだった。
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"青すぎる空" (国内盤)
"裸足で行かざるを得ない / 道端" (国内盤)
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