buttonヨ・ラ・テンゴ @ 渋谷オーイースト (20th Feb.'07)

諸行無常のクマさん達


yolatengo
 なんてファンタジック、かつ、奥の深い音楽(もしくはノイズ!)を、楽しそうに奏でるヤツラなんだ……。いえ、ヤツラなんていってしまうにはその20年を越えるキャリアに失礼にはあたるというものですが、その愛狂しい風貌と、こちら側が勝手に抱いてしまう親近感が、思わずそう呼ばせてしまうというか、なんというか!

yolatengo ステージ奥からのバックライトで浮かぶ3人のシルエットなどは、まさに、動物でいうところの、そう、クマだった(そのままといえばそのままですが)。ベースのジェームスはその巨漢とメガネでそのまんまなのですが、そう思うとジョージアも白いホッキョクグマのようだし、ギターのアイラも「実はぼくもクマなんだよ(笑)」とかなんとか言い出しかねない……。

 例えば、森に、そう森の中に捨てられていた楽器がある日あったとして、それに出会ったクマさん達は、手に取ってみては、タイコを叩いたり、ギターを電気の箱に繋いでみたりと、あれこれ音を出して遊んでいる姿を、彼らの演奏する姿から思わず想像してしまう私。ジェームスのベーススタンドにぶら下がっていた熊のぬいぐるみは、一部の人にしか見えない隠れた位置にありましたがやけに象徴的でした。(後でカメラマンさんから教えてもらった情報ではそれは"リラックマ"とのことでした。なるほど!)

yolatengo 彼らのライヴはまさに遊戯。担当楽器なんてものはほとんど無くて、ギター、ピアノ、ベース、ドラム、パーカッション、シンセ……3人が曲ごとに移動を繰り返し変幻自在、ドラム×小太鼓×ギター、なんていう時もあったし、紅一点(メインはドラム)のジョージアがステージ前方で歌う時は、ジェームスやアイラがドラムセットに座る、なんて時もあり、音楽のためのアイディアが満載のステージであった。自己主張としての音楽ではなく、音楽のために我々は生きている、音楽に生かされているといった姿勢……とでも言おうか。確かな揺るぎない愛情が彼らの音楽に感じ取れるのは、そういうところにも現れていると思う。

 時折、そんな楽器と戯れる姿が、赤ん坊がダァダァと遊んでいる姿にも見えてしまうし、全てを悟りきった仙人のようにも見えてしまう……。轟音ギターの後に、静寂な曲……彼らのライヴの醍醐味でもあるその激しいウェイブの揺らぎを繰り返し聴いている中で感じるのは、小さな虫の命から大きな宇宙の動きまでの自然界全体の音楽(なんていうと大袈裟ですが)が見えた気がした。そんな少し神秘がかった悟り的お話を聞いているような気分にもなった私でした(雰囲気的に言えばスターウォーズのヨーダなんかに似ている)。

yolatengo 例えば孤独。「人はひとりなんだよ」と彼らは教えてくれる。(最近イジメ問題で「君はひとりじゃない」みたいな文句が簡単に放たれますが僕は疑問に思う)「人はひとりだけれども孤独じゃないよ」と彼らの音楽は言っていると思う。

 結局終わってみれば、ニューアルバムから9曲もやってくれて、10分越えの大作"Pass The Hatchet, I Think I'm Goodkind"と、"The Story Of Yo La Tengo"(アルバムの始めと終わりを飾る2曲)は、CDで聴いている時はすこし重たく感じていた私でしたが、ライヴではばっちり決まっていました。ベースとドラムのリフのループは同じフレーズを道に迷ってしまうんじゃないかというくらいに繰り返し弾き、その上でアイラ・キャプランが叩きつけるように弾くフィードバック轟音ギター。2006年のアルバム、『I Am Not Afraid Of You And I Will Beat Your Ass』に置けるこの2曲の重要性を、これからもっと聴き込んで確認しなければいけない、という思いに駆られました。

yolatengo この日は恒例の"You Can Have It All"でのヨラダンス(?)が見られなかったのはやや残念だったかもしれませんが、その代わりなのか、"Mr. Tough"ではお客さん3人をステージに上げてのディスコタイムとなっていました。なんてフレンドリーな"ヤツラ"だ(笑)。

 Tom Courtenay、Sugarcubeといった名曲では最高潮に盛り上がった満員のオーディエンス(2階や階段の途中から見ている人も多かった)も満足の一夜だったと思います。この日のアンコールでは彼らのルーツを探るようなカントリー・ソング(ジーン・クラーク、ボブ・ディランのカバー)をアコースティックで披露。何曲かは1990年のアルバム、『フェイクブック』に収録されていたりもします!


-- setlist -- 21st Feb. @ Shibuya O East

1.The Weakest Part 2.I Should Have Known Better 3.Let's Save Tony Orlando's House 4.Pass The Hatchet, I Think I'm Goodkind 5.Stockholm Syndrome 6.Beanbag Chair 7.Season Of The Shark 8.Mr. Tough 9.Song For Mahila 10.I Feel Like Going Home 11.Cherry Chapstick 12.Tom Courtenay 13.Watch Out For Me Ronnie 14.The Story Of Yo La Tengo 15.Blue Line Swinger

-- encore1 --

16.Cast A Shadow (Beat Happening cover) 17.Tears Are in Your Eyes 18.Antmusic(Adam and the Ants cover)

-- encore2 --

19.Sugarcube 20.Tried So Hard (Gene Clark cover) 21.Did I Tell You

-- encore3 --

21.I Threw It All Away (Bob Dylan cover)
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