ジェット @ 日本武道館 (9th Feb '07)
豪州羊は空気ギターの夢を見るか?
「サンキュー!!!」と、一曲目の"Come On Come On(カモン・カモン)"が終わった直後にヴォーカルのニックが発した一言が演奏の音よりデカくて笑えた。ジェットはとにかく「豪快」。最近行ったライヴでこんなに豪快なバンドは観たことない。ストレートでラウドなバンドだった。始まる前に会場にはニール・ヤングの"Southern Man (サザン・マン)"が流れていたけど、単に「オレタチは南の方から来たからさぁ」って感じで流れたように思えるし、ニックが日の丸を持って登場したのも、U2のボノが持つような意味もなく、ただ単にライヴをやる国が日本だからだろう。こんなストレートさが気持ちよく見えてしまう。
ヴォーカルのニックはステージから降りたり、お客さんを煽ったりして忙しい。声のデカさでは、最近のヴォーカリストの中では一番なんじゃないかと思えるくらいMCでの声もスピーカーが割れんばかり。だけど、おれの目を引いたのは、ドラマーのクリスだった。4曲目の"Holiday (ホリデー)"あたりで早くも上半身裸になり、野人のごとくドラムセットを叩きまくる。上手いとか下手とかじゃなくて、微妙な揺らぎもありつつ、その野放図なドラムの迫力はCDで聴くのとは大違いだ。そんなリズムが産み出す豪放磊落でストレートなロック。オーストラリアを豪州とはよく言ったもんだ。
始まりから何曲かはゴリゴリのロックで攻め、中盤はバラードやスローな曲、そして後半は再び豪快に決めるという構成だった。AC/DC、オアシス、ビートルズ、ハンブル・パイ、ストーンズと、周りのお客さんたちの声は、60〜70年代のロックやそれに影響を受けたバンドを引き合いにして語っていたように、このバンドは先人たちの遺産を引き継いでいる。そのいくつかの要素を、オーストラリアの青い空と乾いた空気、広がる牧草に羊の群れと共に生きるような大陸の足腰の強さで、単なる引用だけでなくロックの新たな次元を見せてくれるような気がするのだ。途中の連続したスローな曲のうち、クリスがヴォーカルを取り、マークが絶品のブルースハープを聞かせる"Move On (ムーヴ・オン)"も、ジメジメしたところがなく、涙もすぐに乾くような土地のバラードになっている。ジェットは過去のオイシイところをつないでOKという手軽さよりは、生活と音楽がつながっている、地に足がついたもののように思えるのだ。
|
 |
 |
後半を激しい曲で盛り上げたあと、アンコールに登場した彼らは、まずタンバリンを叩く。そのリズムにお客さんたちはすぐに気がつき歓声を上げる。そしてもったいぶったベースがモータウンのリズムを刻み始めて、お客さんたちをじらす。あの曲だ! 早まるお客さんたちの気持ちを見透かしたように怒涛の演奏へ。"Are You GOnna Be My Girl (アー・ユー・ゴナ・ビー・マイ・ガール)"!!! 武道館は爆発したかのように歓声を上げる。そして、この曲を日本で広めるのに貢献したお笑いコンビ、ダイノジの二人が登場する。大地(ブログ)はもちろんエアギター、大谷はエアヴォーカルにエアベースで、やはりこの日のクライマックスを作ったのだ。そして、ビートルズ風の"All You Have To DO (オール・ユー・ハフトゥ・ドゥ) "、続いてバラードの"Shine On (シャイン・オン) "では、回転するミラーボールが放つ光に見とれてしまった。ジェットはスローな曲に味がある。これでライヴでも陰影を作り出しているのだ。ラストのラストは、豪快に"Rollover DJ (ロールオーヴァー DJ)"。「ヘイ!」という声に合わせて腕を振り上げ、一体感を持ちながらライヴを締めくくったのである。
-- setlist --
Come On Come On / Get What You Need / Money Mouth / Holiday / Skin and Bones / Take It or Leave It /Move ON / King Horses / Lokk What You've Done / Bring It On Back / Cold Hard Bitch / That's All Lies / Rip It Up / Stand Up / Get Me Out Here
-- encore --
Are You Gonna / w guests / All You Have To Do / Shine On / Rolleover DJ
|
report by nob, photos by izumikuma
|
|
|