buttonストラング・アウト @ 渋谷デュオ (4th Feb. '07)

メロコアは不滅!だ


 早い!ウマイ!アツい!なんか、どこかの謳い文句みたいだけど、彼らのライヴを表現するのにこれが一番わかりやすい。パンク・レーベルの名門、Fat Wreck Chords所属のバンド、ストラング・アウトのライヴに行ってきた。

 年齢を重ねるごとに、食事の好みが脂っこいものからあっさり系に変わるのと同じように、音楽の嗜好も血気盛んで押し合いへし合いのエキサイティングなパンク・ロックやメロコア系のものから、ちょっと落ち着いた、例えばSSW系(シンガーソングライター)やソフトなロックへと変わったりする。悲しいかな、そんなことを最近特に身に沁みて思う。そんなこと身に沁みちゃうほど、まだそれほど年いってない、と思いたいんだけど。でも今回ストラング・アウトの見てみたら、やはり好物は好物で変わりはない。久しぶりに食す(体感する)から、やっぱり好きなんだと実感したりして。

 Fat Wreck所属のバンドは色々と知っているけれど、彼らはお初。予習程度に彼らのウェブで音をチェックすると、案の定、血が騒いだ。ウズウズと、これは見ておいたほうがいいに違いないと思わせる、テンションを盛り上げるメロディーと勢いがあった。

 寒風吹きすさぶ中、コートの前をかき合わせ背中を丸めながらDUOへと向かう。どれほどの人気があるか想像もできなかったけれど、DUOの前には、寒さを吹き飛ばすほど元気なすでにTシャツ短パン姿のオーディエンスでギッシリだった。さすがパンク・ファンが放っておくはずがない、Fat Wreckの中でも人気を誇るバンドだけある。

会場の中に入ると、もうすでに戦闘態勢バッチリにきめたメンズがビッシリとフロアを埋め尽くしていた。ライヴ会場お決まりのタバコとビールの匂い、そして異様なまでに殺気立った感のある熱気。すでに始まる前から参った私は、すかさず上のフロアへ避難。むやみにすでに上半身裸で、ハチャメチャに盛り上がる外人。どのパンクのライヴでもお見かけする光景だ。

 ライヴ10分前から、待ちきれずに上がる雄たけび。その雄たけびがフロアを静観していた私の心臓をビクッと刺激する。そして「ストラング・アウト!ストラング・アウト!」の待ちきれないコールに手がじっとりと汗ばんできた。始まるまでのこの緊張感と爆破数秒前のオーディエンスの意気込み。そして18時のスタートきっちりにプロレスの入場曲(聴いたことある、有名な曲だ、あれは)に乗せて、男気漲るメンバーがステージに現れると、もうそこからフロアの波は大きく揺れだした。この先は一体どうなるんだ、これは! DUOに行ったことがある人だったら、あの狭さとちょっと邪魔な太い2本の柱のフロアはご存知でしょう。そんなところで、一曲目から柱なんかお構いなしに大暴れするオーディエンスの荒波。モッシュはいたるところでいくつもできて勢いを増し、そんなに早く回ったらバターになるよと思うくらいの勢い。凄まじいとはまさにこのこと。

 テンションは最初っから上がりっぱなしで、クラウドサーフィンが入り乱れ、オーディエンスの波は右に左に前に後ろに激しくうねる。すべてストラング・アウトの放つ、爆音と高速のメロコアとエネルギッシュなパフォーマンスにより、そのうねりは一層煽られる。前も後ろもわからない状態、シャウトの連続、音がしっかり聞こえてるのかと余計な心配は無用で、レスポンスと拳の振り上げは、見事に揃っていた。

 カッコイイ。一言で簡単に言ってしまえば、カッコよすぎるこのバンド。メンバー全員がお揃いの黒のTシャツ姿で、男前のヴォーカルのジェイソンを筆頭に、5人のパワーはオーディエンスのエネルギーと合わさって、DUOは爆発寸前。一時たりとも力を抜かずに走り抜ける。すべてがマッハのメロコアで、バンドの音すべてが力強く揺るぎない。すべて初めて聴く曲ばかりだけど、どれもメロディが際立っていて、スピード充分。メタル・テイストも織り交ぜながらの男気満載、これぞ男のメロコア。これがオーディエンスの9割がボーイズだった、その彼らを魅了する最大のポイントかもしれない。さすが、名門レーベルFat Wreckが放っておくわけない。

 簡単にバンドの紹介をしておくと、1992年結成。演奏テクニックは場数をこなした成果か、持って生まれた才能なのか。アグレッシヴなのにメロディックでエモーショナル。一気に南カリフォルニアのメロディック・パンク・シーンの最強バンドへとのし上がっていった。結成2年後の1994年にアルバム『アナザー・デイ・インパラダイス』をリリースし、着実にアルバム・セールスを上げ、サード・アルバム『トウィステッド・バイ・デザイン』も大成功のセールス、続く『アメリカン・パラドックス』はビルボードのアルバム・チャートにランク・インするほどの好セールス。ペニーワイズ、パパ・ローチ、オフスプリング、バッド・レリジョン、そしてレーベル・メイトであり彼らを見出したNOFXらとのライヴで彼らの引けを取らないパフォーマンスと曲で、ファン・ベースを着実に作り上げていく。やはり明らかなのは、彼らの独特のメロディ・センス、それは神経と興奮のツボをビリビリと刺激する、骨太なサウンドに絡めた際立ったもの。聴いていると、体は自然とリズムを打ち、気持ち良すぎるくらいの爽快感なのだ。

 再びライヴに話しを戻そう。オーディエンスの突き上げる拳は、まるで燃え盛る炎のようにも見え、柱の間や後方で渦巻くモッシュは鳴門海峡か、洗濯機か。いやはや、圧倒された。5枚のアルバムから、オーディエンスの聴きたい盛り上がりたい曲を絶妙なタイミングでやり、練られたライヴ。こういう場合、少しずつオーディエンスのパワーも終盤に向けて勢いが衰えがちなのも、まったくその様子もない。圧巻だった。

 1時間ちょっとの中に詰め込まれた、約17曲のパンク魂。オーディエンスは達成感と充実感で笑顔で満足気に語り合い、体から立ち上る湯気もなかなか冷めない中、しばらく会場で余韻に浸っていた。余韻に浸っていたというよりも、メンバーが来るのを待っていたようだ。ライヴ後、メンバーがフロアに降りてきてファンとの温かい交流が延々と続いていた。気軽にサインや写真撮影に応じる姿、ファンあってのオレたち、みたいな穏やかな光景だった。

 すでに5枚のアルバムを出し、バンド歴も軽く10年以上のストラング・アウト。メロコアの信念とメロディアスな曲の数々は、何かに流されていくこともなく貫き続けられていくんだろう。バキューンとハートを打ち抜かれた気分だった。久しぶりに見た、エキサイティングなメロコアのアツいライヴ。こういうエネルギー、忘れちゃいけないね。


-- setlist -- (原文まま)

Too Close / Kill your Scene / Deville / Paper Walls / Angel Dust / Virginia Madison / In Harms Way / Lost Motel / Dead / Misanthropic / Ultimate / Analog / Radio / Barfly / Savant / Swan Dive / Matchbook
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