行方知レズ @ 下北沢モザイク (3rd Feb. '07)
ありふれた夜を変えた瞬間
行き先のわかる人生なんてナンボのモノでもない。
しつこいようだけどそう言わずにはいられない。このバンドに限り。今日、下北沢で鳴らされた音と、言葉の羅列は大げさではなくそんなもんだった。このバンドと同じ時代に生まれて良かった。少しはこの下らない人生も生きてる意味があるってもんだ。独りよがりと言われようがいつまでたってもそんな気持ちを捨てられそうにない。本気でそう思わずにはいられない。下北沢で鳴らされた音はそんな気持ち掻き立てるパフォーマンスだった。
彼らのライブは今年は2度目だが、セットリストは前回同様アルバム『モントレイユ』からの選曲が多く、ピアノも絡めBPMは比較的抑えめではあった。個人的にはギターでがつんと聞かせてくれる曲が好みのセットリストになるのは間違いない。しかし、そんな緩めの曲の中に孕んだ激しさががっつり耳に届いてくる。つまり、歌い込まれた言葉や音と客との距離がとても近づいてる。決してバンドの側がこちらに歩み寄ってきたわけでなく、こちらが吸い込まれるような魅力的な瞬間だった。投げられた言葉や音が宙を彷徨って、色んなモノを掻き立てる。それはシンガーロングするってことかもしれないし、遠い記憶がたぐり寄せられてしまうことなのかもしれない。そうやってフロアをぐるっと一回りしてステージに向けられるパワーはまさしくこのバンドが起こしたもの。その会場中を包む大きなパワーはライブバンドとしての彼らの真骨頂を見る思いだ。
多分、この日のライブをレコーディングして聞き直しても、決してきれいな音が聞こえてくるってわけではないと思う。でも、「それがどうした」と反論出来る音と言葉の力をこのバンドは持っている。グルグルと転がり続ける人生の中で色んなことに苦悩して、唇噛んだり、涙を流したり。そうやって何とかこの道を歩いている自分のような人間は沢山いるんじゃないかと。夜の闇の中で身悶えしながら朝を迎えなきゃいけない時だってあるはずだと。だからこそ、彼らの音はリアルに響いているのだ。尾崎豊みたいに盗んだバイクで走り出せない人なんていっぱいいるはず。いつだって、いまだってそうだ。心に突き刺さる言葉は突き出した拳の数だけあったはず。それはあの場所に立たなきゃわからない事だ。
ロックンロールっていつだってヒリヒリしてる。いやいや、ヒリヒリしてなきゃ音楽なんて聞いてる意味がないと思う。行方知レズはそんな基本的なことを教えてくれる。次の物語紡がれるまでこの気持ちは温めておこう。いつまだっても捨てられないモノがあるからこそ聞ける音楽。この日はそれを見事に証明してくれた素晴しいパフォーマンスだった。このバンド、ありふれた夜を変えてくれるに十分な音を鳴らしている。
写真は到着次第加えて、再編集でお届けします。
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report by sakamoto and photos by sam
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