ボナンザ feat. オーヴァーグラウンド・アコースティック・アンダーグラウンド スライ・マングース & キャレキシコ @ リキッドルーム恵比寿 (22nd Jan '07)
真っ白な世界地図を塗りつぶせ - part1 -
オーヴァーグラウンド・アコースティック・アンダーグラウンド
なにやら場内が、密かに流れている。まだ閉まりきっていない防音ドアにまるで安心していたが、ひょっとしたら、と、そのドアを抜けてみると、PA卓左後方という普段見慣れない方向へと目が向いた。だんだんと場内をあたためるバイオリンとアコギのたゆたう響きは、伏し目がちにちらとこちらを見やる演者の言葉として、今日のイベントに漂う異国情緒たらいうもんをたっぷり溢れさす。横たわる弦の残り香、その出どころとなった隅っこ。そこの灯が消えると同時に、別方向から、どん、というドラムの揺さぶりが起こる。ぐるりと顔を120度ほど回転させると、高校自分に見た顔が多数あったが、それとは別のものだ、おそらく世界田舎音楽へ視線を向けるきっかけとなったこと以外は、あえてここ に書くべきではないだろう。しかしまぁ、当時からバスクやインドに傾いていた一連の世界が、パンクという枠から抜け出して、結局この形に落ち着いたって、大いに納得出来るのだ。やがてバンドに混じったバイオリンは攻め方を変えてフィドルになり、アコギとウッドベース、ドラムとパーカスが主役の座をいれかわりたちかわりして、マーティン(Vo.)はアメリカ出身と言っていたけれども、浮かぶ世界はヨーロッパの片田舎。自らのルーツに近いものとなっている。
切れ目でアコギがハーモニクスを弾(はじ)いたりするのは、格闘技のはなれ際に繰り出す(KIDの膝蹴りとか)ような、油断を突く攻撃のように効果大。ゆったりできるはずのイベントなのに、いくらも気を抜けない。ツボらしきものを転がして叩き、やすりがけされていないくすんだ衝突音でぼやけさせ、金属でできた棒への打撃がちょこちょこと入り、丸みと鋭さを混ぜこぜにする。並外れたアイデアで、元々の文化と新たにとりいれた文化をかき混ぜてでき上がるOAUの世界はこれからも広がるだろう。
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スライ・マングース
そういえば、何度も見ているスライマングース、何故かあまり書いていない。ライブは何も考えずただ任せっきりにしているので、今日もそう。隙間をそれぞれのテクニックが埋め、塊となった強靭なグルーヴを感じれば、考えずとも勝手にいろいろが頭の内から湧いてかき混ぜる。っと突然、初めて見たらしい女性の口から「なんかわかんないけどすんごぃ!」がポロリして、頭にとりつく。パソコンに向かってキーを打つ段階になり、さらに威力を増してくるただひと言は、いともたやすく僕を論破してしまう。するとなんだ、ベースアンプが高くてまるでサウンドシステムのようだとか、パーカスの手は素早いときは見えないけれどもゆっくりな時は手首の返しのしなやかさに驚くとか、粘着質なカッティングギターを弾いてる矛盾を見た! とか、キーボードはよく爆(は)ぜてたまんないとか、トランペットが巻き起こす客皆殺しっぷりなどを書いても、とうてい勝てないのだ。
切れ目のないメドレーのおかげで浮かんだ映像にしてもそう。スライマングースが走る一本道が、ジャングルの獣道から山村のあぜみちになり、車が走れる農道となり、やがてはビル群の中を突っ切る幹線道路になってゆく物語なんて、すべて吹き飛んでしまう。ファンクにジャズにパンクにスカダブレゲエ、さらにハードロックやジャングルビートのせめぎ合いが、日本ヤクザとイタリアンマフィアと香港マフィアとその他色々が関わる乱闘が浮かんできて、あぁこれが動乱かぁ、ってふと浮かんでも、それもまた「なんかわかんないけどすんごぃ!」に比べれば、まだまだ。動乱といえば、獣を野に放て、とくるんだろうけど、なにも獣は放たずとも最初っからいるのだ。ジャンルの違う、針が振り切った濃ゆいクラブシーンの上澄みばかりをたいらげたライブがそこにあるわけで、隣にいた女性の正直なひと言がやっぱり一番しっくりくるのだ。
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report by taiki and photos by hanasan
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mag files : Sly Mongoose
真っ白な世界地図 (07/01/22 @ Liquidroom Ebisu) : review by taiki, photos by hanasan
photo report (05/05/03 @ Ebisu Garden Hall) : review by taiki, photos by hiroqui
photo report (05/05/03 @ Ebisu Garden Hall) : photos by hiroqui
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