BBB セッションズ feat. ザ・ケービーシー & ダスティンズ・バー・ミッツヴァー @ 渋谷クラブクアトロ (22nd Jan Jan '07)
英国ロックの下克上
まずはザ・ケービーシー。これは80年代に誕生したニュー・ウェーブとは一線を画く00年の新世代ニュー・ウェーブか!? ザ・ケービーシーのメロディラインをなぞるとそこにはそんな疑問が押し寄せてくる。何度も色んな手法を使って刷り直そうとされてきたそのジャンルを彼らは意図も簡単に裏切った。
これまでもザ・ミュージックやブロック・パーティなどダンスとロックを融合させたバンドがイギリスから多数生まれてきた。ギター&ボーカル、ベース、ドラムのみという最小限の中から生み出されるリズムを主体とした楽曲は、一歩間違えればとても単調でつまらないものとなってしまう。しかし、そこに何かひとつ彼らの特別なものが加わる事によって、ナイフなどの凶器の様に尖ったサウンドに転じる魔法が起こる。
ステージの上ではギターとベースの息のあった演奏が繰り広げられ、何も情報がなければ彼らがイギリスでもまだ無名の新人だとは決して思いもしないだろう。
ひとつ、彼らの惜しい点を挙げるとすれば曲のヴァリエーションの少ないところと言えるだろう。これは彼らの今後の課題。その課題を乗り越えた先には多くの成功が待ち構えているはずだ。観客を多いに沸かせた"ノット・エニモア"級の曲が揃った時の彼らを見るのが楽しみで仕方がない。
そして次にステージに現れたダスティンズ・バー・ミッツヴァー。彼らにとっては二度目の来日。Vinyl Junkie (ヴァイナル・ジャンキー)というインディー・レーベルからイギリスに先駆けてリリースされたデビュー・アルバムが異例の数の売り上げを叩き出し、耳の早いインディー・キッズを虜にした彼ら。その真の実力が試される2枚目のアルバムは私たちの期待を裏切らず、どの曲をシングルで切ってもおかしくない素晴らしい作品だった。タダ者じゃないその楽曲の素晴らしさはイギリスのインディ界の重鎮であるラジオ・パーソナリティのSteve Lamacq(スティ−ヴ・ラマック)のお墨付き。テレヴィジョン・パーソナリティーズなどの玄人バンドとも交流の深いところを見ると、只のメロディアスなパンク・バンドでは無いらしい。
獲物に噛み付く狼の様にマイクに飛び掛かるヴォーカルと高速回転のギター。とにかくその勢いは大御所バンド顔負け。演奏に関してはロンドンのローカルで活躍するバンドらしい若さみなぎるものである。見ているこっちがハラハラしてしまうが、この緊張は期待に満ちあふれたもので、身体が痺れる様な快感だ。この危うさは計算されたものでは決してないとは思うのだが、一瞬たりともステージから目を離したくないと思ってしまうのは、やはり彼らの罠にまんまとかかってしまったということ。3分にも満たない疾走感溢れる彼らのその音は、不完全さが彼らの次のステップを期待させる。演奏や楽曲面から言わせればほとんど共通点など見当たらないのだが、この両バンドとも共通して言えるのはCDを聴いただけでは分かりえない彼らの魅力が十二分に発揮されていることだろう。
本国では音源さえもろくに流通していないバンド達が日本から逆輸入されるという現象は、日本のリスナーが本当に質の良い音を求めている結果生まれたものだ。この現象が定着すればインディからメジャーへの下剋上が現実のものとなるだろう。その目撃者に私はなりたい。
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report by sumire and photos by izumikuma
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2007
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