ザ・ギター・プラス・ミー @ 渋谷公園通りクラシックス (13th Jan. '07)
癒しと毒と
ザ・ギター・プラス・ミーの音楽に出会ったのは、渋谷の大型CD店の洋楽フロアだった。ちょうどBGMで流れていて、「あー、なんとなくいい感じの曲だな」と思った。柔らかい感触で落ち着いている四つ打ちのエレクトロニカが流れている。だけどダンスに使えるというものではなく家でゆったりしているときに聴きたい感じのものだ。CDは目立つところにディスプレイされていたので、即決でCDを買った。驚いたことに、これだけ洋楽フロアでプッシュされているにも関わらず、ザ・ギター・プラス・ミーは日本人アーティストだったのだ。どうやらフロアの担当者が個人的に惚れ込んでプッシュしたとのこと。
ザ・ギター・プラス・ミーは、シオザワヨウイチのソロ・プロジェクトである。アコースティックギターの弾き語りに、エレクトロニカなアレンジが上手く溶け合っている。つぶやくような、でもメロディアスな歌が染みる。そのときに買った『Silver Snow(シルヴァー・スノウ)』は、まさに冬の夜に聴くのがふさわしい冷たさと暖かさを同時に感じられる作品だ。コーネリアスとか好きな人にお勧めしたい。
そして、ザ・ギター・プラス・ミーがライヴをすると教えてもらい、渋谷公園通りのクラシックスというこぢんまりとした会場に足を運んだのだ。ほぼ全員が着席し、シンプルな照明の下、ギター一本のみというステージだった。エレクトロニカな部分は打ち込み機材か、テープに合わせるのかと思っていたら、完全にギターの弾き語りだけだった。
最新作『Zoo(ズー)』からの曲を中心に演奏され、アルバムのタイトル通り、さまざまな動物の生態をモチーフに歌われる。会場のせいか、ザ・ギター・プラス・ミーの歌がごく身近にダイレクトに届いてくる。彼の繊細でシンプルな音楽にはちょうどいいし、心地よい空間を作っていた。
翌日、おれは上野動物園に行ってしまったのであるけど、動物たちの動きを眺めるだけで全然飽きない。それぞれに表情があり、眺めている人たちはそこから何らかの意味を受け取る。あの動物はせっかちだとか、あの動物は退屈しているとか。だけど、そのようなものは、こちら人間が勝手にそう解釈しているだけなのだ。人の心を動物に投影しているだけなのだ。
だけどそうした行為を通じて人は癒される。全く身勝手なことだけど、動物を観るということは、人の心をほぐし、元気付けたりもする。ザ・ギター・プラス・ミーの音楽に触れたときに感じるのはこのようなことに似ている。しかし、気をつけなければならないのは、人が動物を見るとき、動物も人を見るのだ。うっかりと見られていることに無自覚になった人間のアホヅラを動物は見ている。ザ・ギター・プラス・ミーの音楽は、ただ癒しを求め安心したい人に、少しだけ毒を忍ばせているかのようだ
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