行方知レズ @ 新宿ルイードK4 (12th Jan '07)
行き先なんてなくてもいいじゃん
行き先のわかる人生なんて面白くともなんとでもない。
このバンドの音を聞いているといつもそう思う。新宿は歌舞伎町の穴蔵みたいなライブハウスで、最後までフロアに残った人達はまばらだった。凄いのはそんなことはどうでもいいものにしてしまったこのバンドと楽曲。「パーティーは人数じゃない」という真理を新しく発見してしまったような、そんなリアルな感触が一晩たったいまでも手元に残っている。行方知レズの年明け一発目のライブ、相変わらなライブバンド振りをしっかりと見せてくれた。
セットリストに載せられたのは、いつものナンバーに加えてアルバム『モントレイユ』からの数曲が加わっていた。このバンドとしては比較的ミドルテンポな楽曲達だが、これがバツグンに素晴らしかった。ハイテンションなグルーブでフロアをグイグイと引っ張っていくいつもの感じとは違うグルーブ感で会場をしっかり包んでいった。それは、ステージからフロアの後ろまでじわっとやってくる。ライトの光に照らされるというよりは、ロウソクの炎にじっと照らされていく感じ。切々と歌われるメロディーにピアノの音が加わっていく。言葉が切り取るのは決してかっこいいことばかりだけじゃない。うまくいかない日常やら、どこかで覚えのある切ない感情。ジャジーでブルージーなサックスやウッドベースが絡み、それはまるで映画のワンシーンにいるかのような美しさが存在したのだ。余計な邪推かもしれないが、この日の集客は決してバンドにとって満足出来るものではなかったはずだ。そんな隙間だらけのフロアを埋めてしまうような感情の換気を呼び起こしたバンドの姿。それは、いつもとは違った激しさ孕んだ音だったと思うし、聞いている側もこのバンドの持ち味であるリアルな感情をまじまじと見つめることができた。しつこいかもしれないが、激しさってのはBPMだけの問題じゃないし、パーティーってのは人数だけの問題でもないのだ。
本編が終了し、アンコールの声は決して大きくはない。だけど、このバンドを愛して止まない力強い声だ。再びステージに姿を見せることを選択した彼らは最後にありったけのテンションをフロアにぶつけた。じわりと広がっていったエネルギーは一気に爆発を起こす。そこには何の「フリ」もなかった。本気で楽しむ客のパワーとバンドの演奏がごちゃ混ぜになった会場は素晴しいダンスフロアと化していった。最後の最後の大合唱。行き先なんてどうだっていいと思わずにはいられない瞬間だった。これって凄いロック。初期衝動を持ち続けることの素晴しい喜びだ。
実は1曲だけ新曲と思われる曲が披露されていたが、これがまたこのバンドのグルーブと言葉のセンスにはまったいい曲だった。2007年はそんな新しい瞬間をたくさん聞かせて、見せて欲しい。次回のライブは2月3日下北沢MOSAIC。何だか行き先がわからなくて困っている人はぜひ足を運んで欲しい。行き先がわからないことが、どれだけスリリングでエキサイティングであるかを証明する素晴しい時間を味わえるのだから。
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report by sakamoto and photos by sam
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