髭 @ リキッドルーム恵比寿 (8th Jan. '07) 強烈に発生する磁場
かつて髭が東京での2度目のワンマンを行なった時、何故か登場したのがサンタクロースの置物。以来、節目となる東京公演で必ず「彼」がステージ上でライヴを見守っている。会場に入ると、今夜も「彼」がドラムブースの横に鎮座して、客席フロアに向かって微笑みかけていた。
開演時間を少しだけ過ぎて客電が落ちると、いつものオープニングSE、ジャクソン・シスターズの"I BELIEVE IN MIRACLES"が流れ始め、メンバーが現れると同時に観客の歓声が沸き上がる。昨年11月にリリースされた新作『ピーナッツ・フォーエヴァー』に合わせて行われたツアーのファイナル、会場の恵比寿リキッドルームは超満員のソールドアウト。前作『I Love Rock n' Roll』のツアーファイナルとして行われた昨年1月の渋谷クラブクアトロでのワンマン公演を皮切りに、定期的に行われた代官山UNITでの自主企画イベント、全国各地での夏フェス出演等、もちろん精力的に活動を行っていた彼らだが、ここに来ていきなり大会場がソールドアウト。髭のライヴに中毒する観客が後を絶たないのは今に始まった事では無いのだが、わずかな期間で勢いが急激に加速したのではないだろうか。別に加速がいけないとは思わない。が、何故こんなにも見る者を惹きつけ始めたのだろうか。
序盤、丁寧に演奏が進められていく中、ドラムのフィリポ、そしてもう一方のドラムブースでパーカッションを担当するコテイスイがヘッドフォンをはめると、演奏されるのは"1mg"。ボーカルの須藤はハンドマイクで、まるで酩酊しているみたいにふらふらと歌い出し、ゆらゆらと会場を照らし出す幻想的な照明と浮揚感溢れるサウンドは会場内を現実から切り離し始める。"髭は赤、ベートーヴェンは黒"では圧倒的に渦を巻いて迫ってくるサウンド。その衝撃は、真顔でツカツカと近づいて来た人物に突然胸ぐらを掴まれ、グラグラ揺さぶられているような凄い感覚。
髭のライヴを初めて目撃した当時、ステージ上にまるで磁場のような強烈な空気が発生するのを感じ、その存在感に驚いたのを良く覚えている。ステージ上に彼ら5人が揃うと強烈な磁場の発生を感じるのは、今夜も変わらなかった。ただ、初めて目撃した時の彼らの演奏は、どこかステージ上だけで完結していて「分かる方だけどうぞ。分からなくても結構ですよ。」と言われている気がしたのだ。同時に強烈な磁場も、当時ステージ上以外への広がりはあまり感じさせなかった。
昨年リリースされた『ピーナッツ・フォーエヴァー』の新曲群は、先に何度もライヴで披露され、聴いたかぎりではとても食べやすいお味、と感じていた。髭の毒気をより多くの人に食べさせるためなのだろうと思っていた。が、実際に新作を聴いた時、意外にも「だまして食べさせてしまおう」といった悪意が感じられなかったのである。代わりに「伝える」という純度の高い意思が感じられる気がしたのだ。
今、強烈な磁場も一緒に開放され始めているのかも知れない。明らかにバンドの方から、ステージ上から、何らかのリアクションを観客に求め始めているのを感じる。
分かる訳が無いという感情と、伝えたいという欲望は、どこかで繋がっていたのかも知れない。
ドアーズをカバーした"ハートに火をつけて"では、後半の即興部分が圧巻だった。落ち着いた佇まいとはうらはらな斉藤のギターは凶暴にうねり、常にフィリポ側のドラム横にポジションを取っていた宮川のベースは、ドラムと一緒に震動となって持っていたドリンク越しに手に伝わって来る。パーカッションのコテイスイの叩くドラムの音色がうねる演奏の上を気持ち良く泳いで行く。パーカッションというポジションの彼は、ギターのチューニングの際にはMCを入れ、またある時は拡声器片手にフロントに出て来てお客を煽ったりと本当に可動域が広い。本編ラストの"白い薔薇が白い薔薇であるように"では、間奏の即興部分でフロントに出て来て腹筋&腕立て伏せをしていた。文章にするとさっぱり何の事か分からない状況なのだが、ライヴ中はそれもアリかもと思えてくる。アハハ、磁場の影響で、こちらのアタマの地軸も狂ってきたのかも知れない!
何回か髭のライヴを見た人の中に、今夜のライヴに多少物足りなさを感じた人がいたかも知れない。丁寧に演奏された反面、どこか大人しい印象を受けたのだ。おーいどうした、という感じだったのだ。でもあまり心配は無さそうである。アンコールでは"ドーナツに死す"ともう1曲、ボーカルの須藤いわく"Paint It Black"の計2曲、新曲が披露された。去年から続いたツアーのいくつかの会場では、これとは別の新曲も披露されている。まるで吐き捨てるかのように叫ぶ須藤のボーカルは、強烈だった。
今年彼らは確実に、その強烈な磁場で見る者聴く者を惹きつけ、惹きつけた先に猛毒を用意して待っていてくれるのである。
-- setlist --
ネアンデルタール Punks Fuck Off! / MR.アメリカ / ヒサシ,カリメロ / 1mg / 王様はロバのいうとおり / 髭は赤、ベートーヴェンは黒 / ギルチィーは罪な奴 / Good Feelin' / ハートに火をつけて / せってん / ランチ / アメニウタエバ / ブラッディ・マリー、気をつけろ! / ロックンロールと五人の囚人 / 白い薔薇が白い薔薇であるように
-- encore -- ドーナツに死す / ダーティーな世界 / ハートのキング
-- encore 2 -- Paint It Black
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