buttonSakerock @ Shibuya Club Quattro (16th Dec. '06)

笑えて泣ける良いバンド


Sakerock
 このバンドはいつの間にこんなに人気が出たんだろう?クアトロの前に到着すると、入場を待つ長蛇の列と列にまとわりつくダフ屋の姿が見えた。サケロックを最後に見たのは今年の1月になるが、その当時はライブ前日にチケットを買って気軽に遊びに行けるようなバンドだったのだ。約1年ぶりにサケロックを見た驚きは、久しぶりに会った甥っ子がいつの間にか大きく成長していたときの驚きと似ていた。

 予想通り会場内は超満員。8割は女性客だったのではないだろうか。通勤ラッシュ時の女性専用車両。これがフロアを見たときの第一印象だ。黄色い歓声にハッとしてステージを見上げると、フジロックのときと同じお揃いの白のスーツを着たメンバーの姿があった。田中馨(Ba.)、伊藤大地(Dr.)、そしてハマケンこと浜野謙太(Tb.)が並んで立ち、星野源(Gt.)のギターに合わせて"インストバンドの唄"を歌い上げた。力の抜け過ぎ具合がなんともサケロックらしい。

Sakerock サケロックというバンドの表情はハマケンで決まるといっても過言ではない。でたらめなスキャットやMCでフロアを爆笑の渦に巻き込んだかと思えば、真面目な顔をしてグッとくる旋律をトロンボーンで聴かせてくれもする。そんな両極端のパフォーマンスを"オールド・オールド・ヨーク"でも見せてくれた。笑いから離れ、音楽と対峙したときのハマケンの表情の凛々しさといったらない。ハマケンが良い顔をしているときほど、バンドも良い演奏を見せてくれる。そういうとき、決まって僕は下唇を噛んで涙腺がゆるみそうになるのを絶えているのだった。

 後半に差し掛かったところで演奏されたのが"エイト・メロディーズ"という曲。ファミコンソフト『マザー』のテーマ曲をバンドでアレンジしたものだ。この曲には星野が随分と思い入れがあるようで、演奏前には「よし」と気合いを入れていた。マザーファンの視点から言わせてもらうと、サケロック版"エイト・メロディーズ"の出来はかなり良い。イントロではウッドベースとギターがファミコンの電源を入れた瞬間の音から再現してくれ、テーマ部分はハマケンのトロンボーンが主旋律を歌う。いかに星野がこのゲームを愛しているかが伝わってくる熱演だった。また、ステージ下ではマザーの生みの親である糸井重里氏が演奏を見守る姿も見られ、サケロック&マザーファンにとってはたまらないシチュエーションでもあった。

Sakerock サケロックの最新作、『ソングス・オブ・インストルメンタル』には数多くのゲスト・プレイヤーが参加していたのだが、この日はほとんどの参加者が集まった。高田 漣アサチャンをはじめとして、元メンバー、元サケロック・ファンという肩書きを持つミュージシャンも姿を見せた。一際会場を沸かせたのがアンコールで登場したハナレグミこと永積タカシ。冒頭で歌われた"インストバンドの唄"を歌う。サケロックの奏でる音に永積の声が自然過ぎるほどに溶け込んでいった。サケロックとハナレグミには同じ高校出身という共通点もあるようだ。

 笑えて泣ける。サケロックのライブを見た後は決まってこの言葉が頭に浮かぶ。この感想は昨年のフジロック、苗場食堂で初めてサケロックを見たときから変わらない。腹の底から笑えるパフォーマンスと、心の奥深くまで染みいる音楽。ふざけているようで、実は大真面目なこのバンド。本当に良いバンドだと思う。


-- setlist --

インストバンドの唄 / 穴を掘る / Green Land / 七七日 / トロピカル道中 / 慰安旅行 / OLD OLD YORK / 2、3人 / エンディング / ラディカルホリデー / ドゥエルメ・ドゥエルメ・ネグリート / 桜の花子 / スーダラ節 / 兵日記 / エイト・メロディーズ / ちかく / チャイニーズ・スケーター / 青葉コック / インストバンド

-- encore --

インストバンドの唄 / 生活 / 信長
Sakerock
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button笑えて泣ける良いバンド : (06/12/16 @ Shibuya Club Quattro ) : review by funabashi, photos by yusuke
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buttonSome Cubismo Washed Down With A Little Sake Always Makes For A Good Night : (05/08/27 @ Liquidroom Ebisu ) : review by shawn
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