buttonミルクティース @ 渋谷オーウェスト (24th Nov. '06)

もっと愛のままにわがままに

Milkteath
 ミルクティースのライヴは、あの手この手で来てくれた人たちに、楽しんでもらうように工夫を凝らしている。ポップでキャッチーなメロディを持つ歌と、デジタルを下味にした元気でノリの良さだけでも十分のような気がするけど、それだけではなく、視覚に聴覚に、たくさんのサービスをしてくれる。

 特に、この日は単独でのライヴということもあり、ミルクティースの持つユーモアと実験と、ちょっとひねった批評性というべきものが組み合わさって、見事なエンターテイメント精神あふれるショーになっていたのである。

 ライヴは、まず"台風ベイビー"から始まる。acoとq_taのレポートによると、この前の札幌では、TV番組のような録音されたMCが控え目だったということなのだが、この日は、全面的に復活。テレビの歌番組のパロディなど、小ネタも有効に絡めつつ、笑わせて、飽きさせないステージになった。

 バンドの顔であるヴォーカル&ギターのシャクシロッキンのビートルズ大好き趣味が全開になっているような、弾むリズムとせつないメロディが、ノスタルジーまで感じさせ、一見ストレートなロックンロールと思えるのだけど、よく聴けば緻密なアレンジが施されているうえに、過去の様々な名曲から引用したフレーズなどか散りばめられている。こんなにひとつの曲の中にたくさんのアイディアを込めるなんて贅沢は過剰なまでのサービスだと思える。それは、このライヴ全体にもいえることで、途中、ステージに現れた大きなスクリーンに映るシャクシロッキンとバーカウンターに腰掛けたシャクシロッキンがアコースティックをかき鳴らしてデュエットしたり、お遊び的にアリスの"チャンピオン"ジョン・レノンの"Happy Xmas (War Is Over)"をアコースティックセットで披露したりと、デジタルな音だけでない姿も見せてくれる。

 もちろん、"ニューウェイブ・ワルツ"や"キャプテン・トマト"、アサコ歌う"いとしのランブレッタ"など定番の曲はもちろん演奏される。アンコールでは、疾走感ある"真っ赤なジェリービーン"、2度目のアンコールでは"Long Tall Sally"(オリジナルはリトル・リチャード、もちろんビートルズでも有名)と、ロックンロール、パンク、ニューウェーヴ、ダンス、バラード、果ては80年代風アイドルのパロディまでバラエティ豊かなのだ。

 こうまでして、すばらしいステージを繰り広げているのだけど、どうも、その人の良さ、サービス精神が、このバンドの壁になっているように感じるのだ。今、こんなにユーザーフレンドリーなバンドはいないと思う。そのアイディアと努力はすごい。それでいて、決してお客さんに対して媚びることなく、あざとくも感じさせない。それは称賛されてしかるべきものである。だけど、そのために何かがスポイルされているような気がして仕方がない。ブランキー・ジェットシティやミッシェルガン・エレファントのように、多少なりともふてぶてしく(見えるように)しろとはいわないまでも、もうひとつ突き抜けてほしい。目の前のお客さんだけでなく、もっと広く、遠くを見てほしいと思わずにはいられない。


* 11/12 札幌公演(ベッシーホール)の写真を使用しています。

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