ゲット・オン・ジ・オムニバス・ツアー feat. レザーズ・エッジ、エフ・アイ・ビー、モガ・ザ・ファイブ・イェン、ユア・ソング・イズ・グッド、アスパラガス、ケン・ヨコヤマ @ 恵比寿リキッドルーム (23rd Nov '06)
パンクを聞いた日
D.I.Y (Do It Yourself、自分でやっちまえ)という言葉が日本で一番似合うレーベルピザ・オブ・デス・レコードのオムニバス・アルバムのレコ発イベント。決して誰に頼るでもなく、我が道をひたすら歩んできたバンド達の集った一日だった。プレミアチケットを手にしたキッズ達は満面の笑みを浮かべ、会場となった恵比寿リキッドルームはクロークルームから既に大変な盛り上がりを見せていた。実はこの日の幕を開いたレザーズ・エッジのライブが始まった時点で僕はもの凄い感動に包まれてしまった。それは強い信頼感で結ばれたフロアとステージを目の当たりにしたせいだと思う。ステージに上がったバンドは当然気合の入った演奏を聞かせてくれる。実はフロアだって負けていないのだ。みんな我がバンドのライブを盛り上げようと一生懸命なのだ。止むことなく続くモッシュとダイブは決して単なる飾りじゃない。突き上げられる拳は必ず幸せな笑顔と一緒で、倒れた奴がいたらみんなが助け起こす。それを馴れ合いだと片付けてしまうことは簡単なことなのかもしれない。でもそんなもんだけじゃないと僕は思う。それは、誇りという言葉になるかもしれないし、勇気という言葉に変わるかもしれない。どちにしったってこのレベールの音を聞く10代後半から20代前半の人間にとって凄く大切なことだろう。自分がそうであったように。
そんな素晴しいお客さんに答えるようにこの日出演したバンド達の演奏も気合の入った熱演が続いていた。しょっぱなに登場したレザーズ・エッジはパンクロックにエンターテイメントという香辛料を大いにまぶしこの日のスタートを切るに相応しいアクトだった。エフ・アイ・ビーの若く初々しいステージに続いて登場したモガ・ザ・ファイブ・イェンは激しさの中に日本語の哀愁が漂う音を聞かせてくれた。この日の個人的な最注目バンドだったのはユア・ソング・イズ・グッド。パンクな音が並ぶ中、このお祭りバンドのエンターテイメントがほとんどアウェーな状況でどこまで通用するのかと。そこはエンターテイナーとしての素質たっぷりと、しかし自分の芯を曲げないしっかりとした演奏で大いに盛り上げ、このイベントに爽快な風を吹かせてくれた。3ピースの爆音で会場をグッと引き締めたナート、キャッチーなメロディと勢いのある演奏が同居したアスパラガスと続き、締めはお待ちかねのケンバンド。終始熱いパンクロックを鳴らしつつ、MCでは客席との掛け合いを楽しむケン。客席の平均年齢より年取ってるはずの彼だが、そのやんちゃな姿は一番はしゃいでいるようだった。いつまでも変わらずキッズでいる彼、だけど、その言葉や歌は自分で考えて、自分で行動して手にしてきたという誇りを感じる。まさにピザ・オブ・デスというレーベルがこれほどまでに熱い支持を集める事実を見事に証明しているのではないか。友達は周りにいてくれる、でも俺の道は俺が決めると歌う彼の決意は半端ではないのだ。それこそがパンクロックなんだ。
パンクロックが教えてくれたのは誰かに逆らうということじゃなかった。困っている奴を見たら助けるとか、人を見かけで決めつけないとか、自分のことは自分でやるとかいうことだったと思う。それは僕がまだ若造だった頃、ライブハウスに通って色んなバンドが教えてくれたことだ。それはパンクが生まれた時の意味とは違ってしまっているのかもしれない。でも、僕はそうやってパンクという音楽を自分のものにしてきたのだ。だからこそ、この日が嬉しかった。この日暴れまくったキッズ達もパンクに教えてもらったことがたくさんあるに違いないから。願わくば、この日のみんなの笑顔がいつもでも音楽とともに続けばいい。そう思った一日であった。
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