buttonエドガー・"ジョーンズ"・ジョーンズ & ザ・ジョーンジーズ
@ 渋谷クラブクアトロ (17th Nov. '06)

腹の中から黒い音


Edgar"Jones"Jones & the Joneses
 エドガー・ジョーンズという男は化け物だ。あの細い身体のどこから心臓が揺さぶられるような声が出てくるのだろうか。

 音楽の趣味を分かち合うリバプールの友人からCDが送られてきた。数枚ある内の一枚にただ英語でエドガー・ジョーンズと殴り書きがしてあり、早速聴いてみるとドスの聴いたブルースが聴こえてきた。友人が何故この60年代のブルースを自分に聴かせたがっているのか疑問に思ったが、深みのある音にただひたすら感銘して、何度も繰り返して聴いていた。その歌い主が元ザ・ステアーズのエドガー・ジョンズであると知った時は「まさか。」と開いた口が塞がらなかった。しかし今思い出してみれば、癖のあるヴォーカルはまさに彼の物だった。ジャズ、ドゥーワップ、ブルース、ジャズ、R&B。縦横無尽にジャンルを渡り歩く才能は90年代のあの時代、突如として現れたステアーズの時期にもひしひしと伝わってきていたけれど、尚一層その雑食具合が加速して、その天才ぶりに感嘆するばかりだった。

Edgar"Jones"Jones & the Joneses その天才をこの目で見られるなんて、夢にも思わなかった。でも夢じゃない!来日が決まったというニュースを聴いた時に跳び上がる程興奮し、周りの友人に「これを見逃したら絶対後悔する!」と口を酸っぱくして言い続けていた。その行為はきっと彼の音楽の素晴らしさを独り占めにしておくのは勿体無い。そんな気持ちからとった行動だったに違いない。ステージ上に現れたエドガーに対して贈られた大きな歓声はきっと観客の皆が彼を待ち続けていたと言う絶対的な証だろう。

 エドガーを含め6人という構成はクアトロのステージの上ではちょっと窮屈かと思ったが、お互いの息を感じ取れる丁度良い絶妙な距離だった。カウベルを片手にリズムを取りながら、身体の奥底から声を絞り出すエドガーの表情には幾筋もの皺が刻まれていた。それは彼の音楽性、そして生き様までをも写し取っている様で、その一本一本に目が釘付けになってしまった。

 突出してしまいそうなエドガーの独特な唄い方を殺す事無く、十二分にも彼の才能を引き出すその仲間達とエドガーの間に生まれる絆は、心地良さそうに唄う彼の顔を見れば一目瞭然だ。仲間と集って思い思いの音楽を奏でる。きっとこんな夜を彼らは数えきれない程迎えて彼らの絆は太く頑丈になっていったに違いない。決して同じ夜は来ない。この一瞬を音楽に閉じ込める。彼らはその術を知っている。観客も全て同じ地点に立ってこの音に身を任せれば良い。自分の持っている音楽に対する知識がどれだけ薄っぺらいものなかのか痛感すれば良い。その痛みが心地良くなってくる瞬間、波のような快感が襲ってくる。

Edgar"Jones"Jones & the Joneses 途中、EGO-WRAPPIN'の中納良恵と森雅樹をステージの上に招いて、ぶつかり合う様な素晴らしい競演を見せてくれた。共演ではなく競演だ。真っ白な衣装に身を包んだ灰汁の強い日本の歌姫とリバプールの生き字引であるエドガーのシャウトが重なり合う度にステージの温度は上がりっぱなしだった。言葉の壁はあっても音楽の壁は無い。エドガー自身もこの歌姫の実力には驚かされたのか、その表情は驚き、そして喜びの繰り返しだった。

 「デューク・エリントンは好きかい?俺も大好きなんだ。凄い量のコレクションを持っているんだ。」この発言は彼の片鱗に過ぎない。彼のレコードコレクションを見てみたい。きっと彼の音楽のエッセンスが詰まった極上のコレクションだろう。一晩じゃ分かりっこ無い。もっともっと彼の事を知りたくなった。知らずにはいられない。だってこの身体の奥底で彼の音を求めているんだから。知れば知る程にその欲求は高まるばかりだ。

-- Setlist (原文のまま) --

Way It Is / Need For Lovin' / More Than / Y. K. Y. C. Do It / Do Doh Doncha Do / Fool No More / Mellow Down / What Is Wrong With Groovin' / Misty / Short Watch Your Back / Cying Now / You Know You Can Do It / I Let A Song / A Train / Dedicated

-- Encore --

Gonna Miss You / We Should Get Together
Edgar"Jones"Jones & the Joneses


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