リリー・アレン @ 渋谷クラブエイジア (15th Nov. '06)
完璧なポップ・スター
ミシェル・○ィーの歯が眩しいスマイルや、ブーメランのようなロゴを持つスポーツブランドには若干の興味はあるけれど、わざわざCMなんぞを見るために渋谷までは行かない。冠がついたライブなら仕方ないと諦めようともするが、まったく予想だにしなかった光景だった。CMだけならいざ知らず、PVなんて、さぁ今からライブを見よう、ってのにどうして必要なんだろうか。世界に遅れをとった日本の大手レコード会社の焦りが、怒濤のプロモーション攻勢として表れたおかげで、ライブの魅力は半減させられていた。1時間に満たないライブなのに、どっと疲れた。
世界で最も知られたソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)である『マイスペース』にアップされたデモ音源が話題を呼んでデビューが決まったというリリー・アレン。そんなシンデレラ・ストーリーと「デジタル世代のスカ…」とのうたい文句に誘われ、いざ聞いてみたらこれが良かった。生き生きとしたヴォーカルと、モノクロ世代の音源を引っぱり出しての切った貼ったに、デジタル技術を大胆にちりばめた度胸には、正直「まいった」と言う他はない。それは今でも変わっていないし、過激な言動の裏側で着々と伸びたり広がったりしていく枝葉に期待すらしている。
新人とは思えないくらいに完璧なライブを展開したからか、可愛い人は声をかけやすいけれど整った美人は近寄りがたい、というように、ヴォーカルからエフェクトまでもがあまりに整いすぎ、機械的に聞こえた。"フライデー・ナイト"で失敗し、照れてしまったことでようやく血が通った気がし、ホッとしたのが正直なところだ。リリーの完璧なライブを見たいのではなく、最後にお客さんへバラまいたデモCDRやミックスCDRに詰まっているはずの、粗くて青い素の部分が欲しかったのかもしれない。
結局は今日のライブが、完全なプロモーションだったことが悔やまれる。「リリー!」と歓声をあげるお客さんを足蹴にするような、彼女も彼女に関わるものも全て売れりゃいいんだ、という大人の事情がしっかり腰を据えていて息苦しかった。彼女の意向はどうだか知らないので否定する気はないけれど、商業主義にはいくら言っても足りない。CM曲に選ばれるのは喜ばしいことだが、同じブランドに関わっているというだけしか接点のないプロゴルファーの映像がライブ前にドンと、しかも二回に渡って流されると、いくらなんでも本人は良い気はしないだろう…と思いきや終始ご機嫌で、何かと噛みつく爆弾娘の印象はない。うーん…案外大人じゃないか。
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