ザ・たこさん @ 大阪あべのザ・ロック食堂 (21st Oct '06)
緊急事態だったんです
出会いはフジロックの最終日。3日間で観たそうそうたる顔ぶれのアーティストの記憶を一気になくしてしまうほど、グッときたバンドがいた。それはレッチリでもフランツ・フェルディナンドでもなく、大阪から来たソウル・バンド、ザ・たこさん。よく「あの人とは運命的な出会いなの」と言うが、音楽にも運命的な出会いはあるのだ。HPをチェックしても、私の住む北海道へライブをする気配はない。となれば、こっちから行くしかない!しかもせっかくなら彼らを産み出した地でライブが観たい。というわけで、いざ大阪へ。
会場となったのは、阿倍野にある「ザ・ロック食堂」。壁や天井はたくさんのポスターやレコードで所狭しと埋め尽くされ、音楽好きの店主の趣味趣向がよくうかがえる店内。ライブハウスとは比べ物にはならない狭さだが、この狭さの中であのたこさんの強烈なライブが観れるかと思うと、かなり鼻息も荒くなるというもの。30人入ればもう誰も動けないという狭さのため、本日は完全予約制なのだが(なんと、料金は投げ銭制!)、予約しそびれた何人もの人が、なんとか入れないかとお店を訪れていた。
苗場での「どんな奴らが出てくるのだろう?」という期待とは少し違う、「今日もやってくれよたこさん!」という高い期待度を肌で感じる中、ボーカル安藤が「怪しき怪人」の名にふさわしいマスクとマント姿で登場。湧き上がる声援を前に、満を持してマスクを剥ぎマントを脱ぎ去る。レスラーさながらのコスチュームを身にまとっているけれど、豊満な肉体はまるで剥き出し状態!一曲目が始まったばかりなのに、丁寧に剃られた頭から噴出す大量の汗は、水揚げされたばかりのタコから滴る海水のよう。もしジェームス・ブラウンが大阪生まれのオッサンだったら、こんな感じじゃなかろうかという動きと貫禄だ。
厚くうねる松田のベースが太い波のように這い、そこに山口の表情豊かでなギターが加わると、一気に鮮やかな色が放たれる。ソウルやファンクのリズムだけが強調されたバンドは数々あるだろうが、全体を支えるリズムと、全体を覆うどこか哀愁や憂愁がただよう歌詞やメロディーが交じり合って作り出されるグルーヴ感がなんとも言えず、独特の大阪ソウルを感じさせる。
安藤がお客さんを捕まえ「youは便秘気味?」とメンチを切り、「誰か俺にコーラックをくれないか」と叫ぶ。ギターの歯切れのいい音が気持ちいい"便秘気味"は、彼らの曲の中でも特に泥臭い感じがして、私が生まれるずいぶん前の古い時代のソウルを感じさせる。裏打ちのリズムに合わせて体が動く。
お伝えしたとおり、ザ・ロック食堂は狭い。カウンターと壁の間は、窮屈な横並びでなんとか3人並べる状態なのに、その日本一狭い花道へとメンバーが突き進み、お客さんは異様に盛り上がる。が、窮屈すぎて手も足も出ない。ステージも、ベースのネックがいつ安藤の頭をかすめるかという具合だし、お客さんとの距離もわずか数十センチ。これを臨場感と呼ばずしてなんと呼ぶ。ギュウギュウ詰めになりながら、たこさんとお客さんがソウルという音楽で束になっていく。
実は、年内の脱退が決まっていたドラムのドンパッチ芝野が急病になり、ドラムが叩けなくなった。残されたライブに全力をかけようとしていた矢先の出来事。キャンセルも考えたらしいのだが、助っ人ドラマーを迎えてのライブとなった。3日前に始めて音合わせをしたという強行突破だったので、たこさんの音を知り尽くした芝野のドラムとは当然ながら違った部分もあったけれど、よくぞここまで叩いたと思うし、なによりザ・たこさんの音を作り出すメンバーの気合と技、そして彼らの体に染み付いたグルーヴが助っ人の彼にも伝わったことが、今日のライブを成功へと導いたのだと思う。端々で感じる緊張感もよかったし。
京都や東京でもライブを行い着実にその音を広めつつあるザ・たこさん。色んな大阪名物が日本全国の人の舌をうならせているように、日本のあちこちの人をグッとさせてほしい。
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report by rica and photos by ikesan
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緊急事態だったんです : (06/10/21 @ Abeno The Rock Shokudo) : review by rica,photos by ikesan
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