ジェイミーT @ HMV、ロンドン (19th Oct. '06)
ラップン・ロール
テニスの大会で有名な南西ロンドンのウィンブルドン出身、弱冠二十歳のシンガーソング・ライター、ジェイミーT。独特な節回しに、蓮っ葉なウィットと辛辣な視点から紡がれた詩をわざとメロディから外れるようにラップでなぞり、キッチュなサウンドを打ち出す不思議なミュージシャンである。
開演時刻ほぼ定刻にアコースティック・ギターを抱えてステージに現われた彼は、釣りに行くおっさんのようにカジュアルというか、普通の格好に黄色いキャップを被り、「元気かい?」とオーディエンスに語りかける笑顔もいたってその辺の少年と変わらない。けれど、ギターを鳴らし、"カームダウン・ディアレスト"を歌い出すと、それまでの無邪気さはどこへやら、裏町の酒場にいるブルーズ・ミュージシャンの如し渋い声に驚きである。バンドが加わりプレイされた"サルバドール"ではいやにロックンロール節が鳴り響き、"シーラ"というキャッチーなメロディでは心が跳ね躍る。13才位から、シャム69、ザ・ジャム、ザ・フォールといった80年代のスカやパンク・バンドを聴き漁り、それらから郊外に住む者の不安や苦悩を感じ取っていたというジェイミー。『今夜もおいらは他の奴らが気にも留めない愛を得ようとフロアを練り歩くんだ』とひねくれた言葉やその独特なファッション・センスが彼の同世代を中心にこちらで支持を集めている。若年寄り、というか生意気だけれどもどこか達観したようなふてぶてしさが面白い。
自ら、郊外の衛星都市で起こった銀行強盗の物語だと評するデビュー・アルバムは来年1月の発売予定。自宅レコーディング、街行く人の奇妙な会話をディクタフォンで録音、面白可笑しい情景に自分独自の捻りを利かせたミックステープのようになる よう試みたという予測不可能なその世界は「アハッ」ないし、「ヨウ」などといった既存のラップ・ミュージックとは一味も二味も違うことだけは確か。
-- setlist --
Calm Down Dearest/Back In The Same/If You Got The Money/Salvador/Down To The Subway/Sheila |
report by kaori, photos by akemixxx
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