Kein Titlewettkampf @ Shibuya O-East (9th Oct. '06)
feat. デートコースペンタゴンロイヤルガーデン、面影ラッキーホール、オシリペンペンズ & 水中、それは苦しい
6時間のぶつかり合い
天才、奇才、奇人、変人、変態。どうにでも言い方はあるだろう。この日、集った面子はそんな呼び名に当てはまりながらも、何にも当てはまらないような、つまり、やっぱり世間のそれとは違ったもんを持ったバンド達が一堂に会したイベントだった。全てに共通していたのは衝動だ。音楽への衝動、表現への衝動、そして生きることへの衝動。この日のライブはそんな衝動と衝動のぶつかり合いのように見えた。ある者は策略的に、ある者は迷わず直接的に、見せ方は違えど暑い音をビシビシ聞かせてくれた。
3連休の最終日、17時という普段ならまだ音の鳴り出さない時間に渋谷に集った人達はまだ数えるばかりだった。そんな中トップバッターで登場したのが関西の奇人石井モタコ率いるオシリペンペンズ。ステージがいつもより高いせいかなんなのか、この日モタコはステージを降りず、ひたすら雛壇の上で歌うことに集中していた。いつもならステージを降りてひっちゃかめっちゃかやらかし、客の緊張感を煽るのだがこの日はそんなパフォーマンスは一切なし。感情の塊のような彼の泣き叫ぶ声は聞くことは出来なかったが、バンドの音にはいつになく集中できた。迎祐輔のビートにとらわれないビートを叩くフリキーなドラムス、中林キララのほとんどコードを弾かずに単音ピッキングでサイケなリフを鳴らしまくるギタープレイ。普段はモタコのパフォーマンスに目を奪われがちだが、彼らの宙を彷徨うようなプレイも石井モタコの煽る緊張感と何ら変わることなく、僕らに興奮と混沌をプレゼントしてくれた。最後の最後でモタコがマイクスタンドをぶん投げて、中林キララがギター激しくかきむしった瞬間、最高の興奮と供にこの日の幕は降りた。
2番手で登場したのは面影ラッキーホール。全くの初見、初聴のバンド。ボーカルのアッキーは車椅子に乗って登場。一体なんなんだこのバンドはという思いがつきまとう。ホーン隊、コーラス隊込みのバンド編成を見た時は「明るく楽しく」なバンドかと思いきや、全体を包むダークな空気にあっという間に飲み込まれてしまう。歌詞は一貫してシニカルであり自虐的な内容が重ねられていく。場末の昭和歌謡なスナックで聞かされそうな音とこの歌詞のマッチングが正に彼らの作り出すダークな空気。後半に差し掛かり、車椅子を降り、立ち上がるアッキー。それをネタにするかと突っ込みも入りそうだが、それでもショーとして成り立たせてしまうのだから凄い。世の中きれいごとだけじゃ済まされないってことを身に染み込まされてしまった気がする。「絶対アンコールって言うなよ」と言って本編を終わらせた彼の言葉にこの日のライブは集約されていたと思う。もちろん、見事にアンコールに応えたのは言うまでもない。
この日、自分が一番盛り上がったのは水中、それは苦しいだった。以前見た時は、どうも作為が先に立っているような気がしてイマイチ乗れなかったのだが、この日はそんなもんは微塵も感じさせない熱いライブだった。激しいカッティングギターの向こう側から聞こえてくる甘いバイオリンのリフ。意味なんて全くないような歌詞がほぼアドリブで重なっていく。バカバカしいと言ってしまえばそれまでのスレスレのところにいるのだが、実はそれがこのバンドの緊張感となって伝わってくる。どうでもいいことを歌っているのに、それをどうでもよくないものにしようともがく必死なバンドのプレイに激しくのめり込んでしまった。作為なんてもんはどうでもいいじゃんと。明らかに放送禁止歌な名曲"オトタケ"みたいな世間に食って掛かるような姿勢にも凄く好感を持てた。これからもっと突き抜けること期待大な素晴しい内容だった。
そして、ラストを飾ったデートコースペンタゴンロイヤルガーデン(以下DCPRG)。びっちり3時間のロングプレイ。平日前の23時にも関わらずほとんど客を帰らせることのない白熱した演奏を聞かせてくれた。実はDCPRC初体験ではあったのだが、自分も見事にこの白熱に巻き込まれてしまった。コンダクターを務める菊池成孔と総勢13名のプレイヤー達との戦いは徐々に見るものを狂乱の渦に巻き込む凄さがあった。アンビエントな序盤戦ですっと聞くものを引き込み、徐々にペースを上げていく。中盤からはソロパートに重なるバンドの音が多くなり狂喜乱舞へと突入していく。特にベースのリフは非常に印象的だった。指揮を取る菊池との絶妙な掛け合いの中で、あの長い時間常にバンドを引っ張り続けるのは並大抵のパワーではないはずだ。その辺のプレイヤーの使い方のうまさに菊池のコンポーザーとしての魅力を感じたりもした。個人的に菊池の音楽以外での部分が鼻につき、食わず嫌いをしていたのだが、例え鼻につく部分を差し引いたとしても素晴しかったと言える内容のライブだった。
しかし、朝霧ジャム明けでたっぷり6時間も音楽にどっぷり浸かってしまった自分に半ば呆れ気味ではある。これだけの濃い面子が一堂に会して主張を繰り替えすんだから聞いている側もそれなりの覚悟いる。だからこそ、自分にとって音楽がどれだけ普通じゃないものなのかを深く心に刻んだ一日だった。
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report by sakamoto and photos by naoaki
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