エンブレイス @ ハマースミス・アポロ、ロンドン (29th Sep. '06)
星の数だけ色んなギグがある
収容客数約3000人の会場ハマースミス・アポロを埋め尽くすスタンドには10代後半と見られる若者が、ゆったりシートにもたれて観賞する2階席は中高年のカップルが目立つ。この幅広い年齢層に支持されているエンブレイスであるが、音源で聴く限りでは何だか全体を通してお涙頂戴、感動ソング程度の印象が強く、脱力したコールドプレイ、或いは人数が増えてギターが入ったキーンみたいだと、敬遠さえしていた始末であるが今回彼らのパフォーマンスを観て、自分の知らないギグの展開というものが世の中にはあまたあるのだという事を認識する良い機会となった。
エナジーフル回転で、ファルセットの伸びもすこぶる良く、カニの様に敏捷に広いステージを横踊りし、飛び跳ねるディレイズの素晴らしいサポートの後でエンブレイス登場。キャッチーでセンスの高いメロディの続くディレイズにも好意的にノッていたエンブレイス・ファンであるが、そこはやはり大トリ登場とだけあって怒号の様な歓声が沸く。序盤から天に両手を振りかざし、合唱を煽るヴォーカリストのダニー。 もうお決まりの展開なのか、観客も手拍子と共に一斉に歌い出す。新旧織り交ぜた密度の濃く、筋金入りのファンも満足であろうセットリストに、バンドの完璧な演奏と一体感。特にダニーの観客の煽り方はこなれたもので余裕さえ漂う。中盤のスロウな曲には何度か心地よい睡魔に襲われてしまったが、どうしてどうして、私を取り囲むファンは思い思いに各曲にうっとりと聴き入っている。
好きなバンドをライヴで楽しむという非日常的空間というのは、まさにこういう事なのだと思い知らされたと同時に、この瞬間、瞬間をここにいる全ての人と共に分かち合い、紡ぎ合いたいというバンドの熱意がステージを見つめるこちら側にもひしひしと伝わってくる。"フーリガン"ではダニーの弟リッチーがヴォーカルを取り、太いグルーヴ感で観客の体を揺らし、ダニーの友人であるコールドプレイのクリスに捧げると歌われた"グラヴィティ"、"ファイアーワークス"、アンコール・ラストの"アッシィズ"ではこれぞエンブレイス節とばかりに聴き手の心を掴むメロディで約2時間のバンドとファン一体のショウを締めくくった。いかにも、というギグではあろうけれど、お金を払って楽しみに来ているお客さんの事を思いやる、そしてそれを最大限に生かした表現をすることのできるジェントルマン・バンド、エンブレイスであった。
-- setlist --
Heart&Soul/All Good Good People/Someday/Nature's Law/Target/Looking As You Are/No Use Crying/Sainted/Cbtwyk/Feels Like Glue/The End Is Near/Hooligan/Gravity/Save Me/encore/Bunker Song/Fireworks/Ashes |
report by kaori and photos by akemixxx
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mag files : Embrace
星の数だけ色んなギグがある (06/09/28 @ Hammersmith Apollo, London) : review by kaori, photos by akemixxx
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