プライマル・スクリーム @ ゼップ東京 (21st Sep '06)
現在進行形バンド
社会人なら誰もが経験したことがあるだろう。開演間近、終わらない会議。電車の中で聴く"Dolls"が虚しくて思わずiPodの音量を上げる。どうしてZEPPってこんなに遠いの?!駅のエスカレーターを駆け上がり、レクサスの前をヒールで猛ダッシュ!そんな私の横を比べ物にならないスピードで追い抜いて行くスーツ姿がZEPPに吸い込まれてゆく…ああ、貴男もですか…。
大分遅れて会場に飛び込むと、もう立錐の余地もない。今回のツアーは東京だけでも3日あるから、多少の余裕はあるかと思っていたのに、とんでもない!ステージではスーツ姿のボビーが"Kill all Hippiies"をクネクネ歌っている。息を切らせたままその場に立ちつくすも、いつものプライマルのステージとは違うような…?
どうもケヴィン・シールズが抜けてしまったのは本当だったようで、ステージには重鎮メンバー達よりも遥かに若いギタリスト、リトル・バーリーのバリー・カドカンがサポートに立っている。スロッブもいない、ステージが広い。申し訳ないがバリー君が並ぶと、オッサン達の顔のデカさが妙に気になる。まるで歌舞伎役者のバンドみたいで、イネスもマニも舞台映えしまくり。ボビーは細面だけれど、今日は気合いが入っているようで、存在自体がデッカイ!バリーもそれなりにキャリアもあるだろうが、プライマルの面々に囲まれると、ホント、少年ギタリストって感じ。演奏しながらチラチラとマニやボビーを気にしている(当然!)様子に、思わず「頑張ってー」と声援を送りたくなってしまう初々しさであった。
アルバム『Riot City Blues』の作風だからか、デジタル音は少なく、ロック回帰とも思われたが、その割にギターは押さえ気味。今迄ボギャギャギャギャ〜と暴れまくってたギターがいないのは結構寂しい。アルバムごとに作風がガラリと変わるので、それ自体珍しくもないけれど、ただ単純に作風の違いと言い切れない何か…そう、違和感が拭いきれない。
後半、"Swastika eyes"、"Country Girl"、"Rocks"の流れは素晴らしく、会場は大興奮。"Swastika eyes"が少々物足りないが、その足りない部分をボビーの頑張りで引っ張っているようだった。
アンコールでは珍しくバラードの"Damaged"をボビーが歌い上げ、"Rise""Skull X" と更なる盛り上がりを見せた。バリー君もギター振り上げ弾きまくり、「坊主、よう頑張った!」と、ボビー先生から拍手を頂戴したり、マニとボビーがチュッ♪したり、観ているこちらも笑顔がこぼれてしまうようなホンワカさもチラホラ。先ほどまで感じていた違和感も消えつつあったが、どうもステージ上でのギクシャク感は否めない。バリー少年はマニ、イネス、ボビーをじっと窺いつつ、ギターストラップをかけたり外したりを繰り返している…「やるの、続けるの?」
2度目のアンコールではウィルコ・ジョンソンが登場。彼がギターに加わると、俄然演奏が締まったのは、まったくお見事!としか言い様が無い。鳩のように首をクックッと突き出しながらチャック・ベリーばりのダック・ウォークで歩くウィルコおじさんリスペクト!「顔はデカくてナンボ!」「顔がデカイは大物の証!」とキャッチコピーをつけたくなるほどの活躍である。ケヴィン不在で不安だった "Accelerator"を救ったのも他ならぬウィルコおじさんで、そのスルスルの頭頂部に福々しい思いを抱いたのは私だけではないはず。
その後の"Sick City"は滅茶苦茶カッコ良くて、サビでは観客の手が一斉に上がり壮観。多分ボビーはもう一曲やるつもりだったのだろうけど、イネスがさっさとステージから消えてしまっている…。
ボビー:「もう一曲やろうぜ」
マニ:「でもイネスがもう帰っちゃったよ(大袈裟に手を広げる)」
ボビー:「な、なに〜?!(驚いて振り返る)」
バリー:「……。(じっと二人の様子を窺い、ストラップをかけたり外したり)」
そしてマニ、ボビー相談の結果(本当にステージ上で相談してた!)、ま、今日はこれでオシマイ!と、あっさり終了。
『Extermineter 』『Evil Heat』で、見事に独自の表現の完成させたプライマル、実は未だに現在進行形のバンドである。脱皮を繰り返す爬虫類の様に新陳代謝が必要なのだ。それを、この先ずっと続く重荷と受け取るか、次のレベルへ登る続ける冒険ととるか?…どちらかで未来は大きく変わるのだろう。大きな変化、方向転換に直面すると、度々違和感が生じるものだ。それは後になれば分かることだけど、変化している最中は理解できず、その違和感にネガティヴなイメージを抱くことも多いだろうが、私はまだまだ脱皮し続けるPrimal Screamが見たい。生みの苦しみは大変であろうが、今迄どおり粘り強く、しぶとく頑張ってほしいものである。そんなことを考えながら帰宅して"Coutry Girl"の歌詞を読んで思わずぐっと来た。「カントリーガール、持ちこたえなきゃいけないんだ、強く!」
なお、写真は前日のものを使用しています。 |
report by mimi and photos by keco
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