中山うり @ 代々木ザー・ザ・ズー (12th Sept '06)
風景の見える音楽
音楽を通し、時折その音の先に風景をイメージすることがある。それは山であったり、海であったり、時には街であったりする。中山うりの音楽の先にも、その風景をイメージすることができた。
長袖を着ていても肌寒さを感じるほどの冷え込みに加え、雨もパラついている。あいにくと言わざるを得ない天候だった。会場へ入ると、ステージ_には30ほどのイスが並べられている。平日とはいえ、まさかお客さんはこれだけ?…とはいらぬ心配で、開演時間にはスタンディングの客もしっかり入り、ゆったりとライブを見るには程良い客入りとなった。
予定時刻から15分ほど遅れ、バンドメンバーと共に中山うりが登場。「フジロックから帰ってきました」。そんな言葉からライブは始まった。悩ましげなボーカルを聞かせてくれるタンゴ調の曲、"夜のレクエルド"がまず披露される。次いで、前曲とは異なり、Double Famousの音楽のような無国籍でゆるやかなサウンドに彼女の声をのせた "Blu-Voyage"。この曲はフジロックで最初に演奏したという。フジロック後、初めてのライブだということもあってか、この日はフジロックでのエピソードを思い出深そうに何度も話していた。
フジロックのエピソードもそうだが、曲間のMCが中山うりのライブにおける魅力の1つだ。流暢にペラペラと話すタイプではないが、のんびりと、客の1人1人に語りかけるように話していく。そんなのんびりとした喋りの中にも、彼女は時折"毒"を盛り込む。バンドメンバーの服装に対し、「彼のファッションセンスを疑います」と、真顔で厳しい指摘をしていく様は、会場に大きな笑いをよんだ。
ライブも中間へと差し掛かったところで、フィドル奏者の少路が登場する。21才と、他のメンバーに比べると若さが目立つが、演奏に関してはひけをとっていない。フィドルの奏でる繊細な音色は、楽曲との相性も良く、バンドサウンドの色彩感をより豊かにしていった。2曲を演奏し、惜しまれつつもステージを去る。そんな彼に対し、フロアの奥では「21才だって…」などという黄色い声も飛び交っていたのだった。
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セットの締めは、フジロックでも最後を飾った"マドロス横丁"という曲。日本語で歌われる詩とリズミカルに刻まれるアコーディオンの音色が、代々木の地下に異国情緒を醸し出し、言葉と音の先に西洋の街の風景を連想させる。そして、中山うりの歌に導かれるままに、オーディエンスはその街並みを闊歩していく。日本語で日常を歌う彼女のうたからは、そんなイメージが湧き出るのだった。
曲が終わり、ステージを去るメンバーに、オーディエンスから大きな拍手が送られる。鳴りやまない拍手は、やがてアンコールを求める手拍子に変わっていた。アンコールに応えると、さらに3曲を披露。計18曲を2時間にわたり演奏した。
フジロックのGypsy Avalonという開放感溢れるステージから、東京の地下という閉鎖的な空間へ移ってのライブであったが、ライブハウスならではの濃密な空気を味わうことができ、よりじっくりと中山うりの音楽を堪能することができた。幅広い音楽性を持つ楽曲、楽曲に寄り添うように変化していくバンドサウンド、それら全てを包括する中山うりの声。数え切れない魅力を持つ中山うりの音楽を、ぜひ多くの人に聴いてほしい。残念ながら音源は未発表だが、『i Tunes Music Store』(http://www.apple.com/jp/itunes/)の「今週のシングル」より楽曲のダウンロードが可能とのこと(13日〜19日までは無料)。また今回のライブを皮切りに、12月まで毎月第2火曜日にワンマンライブが代々木Zher the Zooにて行われる。こちらの方にもぜひ足を運んでもらいたい。中山うりの今後のライブ情報は以下の通り。
○ライブスケジュール
9月17日 (日) 渋谷 CLUB QUATTRO
10月10日 (火) 代々木 Zher the Zoo (ワンマン)
11月14日 (火) 代々木 Zher the Zoo (ワンマン)
12月12日 (火) 代々木Zher the Zoo (ワンマン)
-- setlist --
1. 夜のレクエルド / 2. Blu-Voyage / 3. 早起きラジオ / 4. 走る女 / 5. 夏祭り鮮やかに / 6. 生活の柄 / 7. 白猫、黒猫 / 8. 夢を売る男 / 9. 歌を忘れたあなた / 10. ショートカット / 11. 虹のパノラマ / 12. モントゥーノスカンク / 13. ほろ酔いブランコ / 14. 笑う月 / 15. マドロス横丁 / 16. 月とラクダの夢を見た / 17. ばいばいどっくおぶざべい / 18. ノスタルジア /
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report by funabashi and photos by naoaki
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mag files : Uri Nakayama
風景の見える音楽 : (06/08/29 @ Yoyogi Zher the Zoo ) : review by funabashi, photos by naoaki
photo report : (06/08/29 @ Yoyogi Zher the Zoo ) : photos by naoaki
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2006
風景の見える音楽へ : 中山うり (12th Sept. @ 代々木ザー・ザ・ズー)
次なるステージへ : スペシャル・アザーズ (15th Jul. @ 代官山ユニット)
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