アミューズメント・パークス・オン・ファイア @ルミナール、ロンドン (11th Sep. '06)
勢いあれど
じぃーっ、と靴を凝視し続けながら生み出される轟音ギター・ノイズとケオティックなサウンド・スケープ。アイルランドからはマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン、英国ではライドに代表されるこのシューゲイジングというジャンルの音楽は決して90年代の英国ロック・シーンにおいて長い勢いを持続はしなかったものの、今なお普遍のサウンド・スタイルとして既存のバンドに影響を与え続けている。今回は北西ロンドン、キルバーンにあるヴェニュー、ルミナールから、そのネオ・シューゲイジング街道をひた走るノッッティンガム出身の5人組、アミューズメント・パークス・オン・ファイアをご紹介。
開演時刻を15分程過ぎてステージに現われたメンバー。ヴォーカリストのマイケルはパッと見ミューズのマシュー・ベラミーそっくりである。細い体躯を斜めに傾け序盤からもう既に鋭いギター音を炸裂させ始めている。彼をはじめ計3台のギターが小さな会場に雷鳴とも悲鳴ともつかぬ轟音を響かせ、それはそれは幻惑的な音世界なのであるが、長いイントロの後のヴォーカルがそれらにすっかり覆われてしまいほとんど聴こえない。ギターを掻き鳴らせば鳴らすほど、その爆音の洪水に繊細なマイケルの声が当たり前だがかき消され、それが最初の3曲ほとんど同じ状態のままであった。マイクロフォンを調整し、そこそこギターの歪みが少ないその後の何曲かでは聴き取れるようになった主旋律だが、やはりもともと線の細いヴォーカルのためどうしてもメロディのメリハリが届かない。マイケルもそんな状態に苛つき出したのか、せっかくの新曲のヴァースの部分でも音程を下げて半ば捨て鉢な態度で歌ってしまっている。
感情を昂らせ、更に精神をその先にある無限の高みへと誘うかのようなギター・ノイズは、やはりこの恍惚とギターを抱え、歪みの中に身を委ねるシューゲイジング・サウンドならではの世界であろう。床に突っ伏して黙々と太い音を出し、深いベース・ドラムのキックで歪曲し続けるギターを挑発してゆくリズム隊にもなんら申し分はない。ただ、よりインストルメントに近い彼らのパフォーマンスには歌がもたらすメロディの妙味が感じられず、CD音源ではライヴ・パフォーマンスで生かしきれなかった、旋律の美しさが光る楽曲を聴かせるバンドであるだけにそれが痛かった。もう少しギターと歌のバランスを加味しながらライヴをこなしてもらい、いずれもっと大きな会場で思いっきり轟音をぶちかます日が来る事をまだまだ若き彼らに期待したい。
-- Set-list --
Blackout/New One/In Flight/Out Of The Angeles/Eighty Eight/Venosa/A Star Is Born/Venus In Cancer/Cut To Future Shock |
report and photos by kaori
|
勢いあれど : (06/09/11 @ Luminar, London) : review by kaori
|
|
|