buttonシックスティーファイブ・デイズ・オブ・スタティック
@ タワーレコード渋谷店 (15th Aug. '06)

初来日ライブ・レポ

65daysofstatic
 サマーソニック ゼロシックスで初来日を果たした65daysofstatic(シックスティーファイブ・デイズ・オブ・スタティック)がインストア・ライブを行うということでタワーレコード渋谷店へ足を運んだ。まず驚いたのはその会場。地下一階に下りるとそこはまさにライブ・ハウスそのもの。インストア・イベントのためにこうした会場が設けられているということが私のような大阪の田舎者にとっては衝撃だった。心斎橋クラブクアトロをひと回りほど小さくしたような印象。300人くらいは収容できそう。英国でよく使われているような小さなライブ会場よりも断然広い。さすがはトーキョー。

65daysofstatic  この日のイベント整理券は、今年7月に残響レコードから発売された彼らのデビュー・アルバム『The Fall Of Math』の日本盤についていたものだそうだが、あっという間に配布予定枚数に達してしまったということで、見たくても見ることができなかった人も多かったのではないだろうか。また、サマーソニックで初めて彼らのことを知って気に入ったという人もいるかもしれない。どのような曲が演奏されたかは下記のセットリストを参考にしていただくことにして、果たしてほんの少しの雰囲気くらいならこれらの写真でも伝わるのだろうか。彼らの音をコトバで表現するのは難しいし、曲から感じるものは人それぞれなので、ポストロックなどというジャンル分けや雑誌やレコード店の宣伝文句に書かれている言葉によって先入観を持ってしまう前に、まず実際に音を聴いてもらいたい。そして彼らのライブへと足を運んでもらえれば、ナマで音を聴くことの重要さや素晴らしさを実感してもらえるはずだと信じている。今回、彼らの初来日ライブを通してそうしたことを実際に体験した人もいたであろうし、残念ながら機会を逃してしまった人もいるだろう。近いうちにまた日本へやってきてくれる可能性も無きにしも非ずということなので、その時はお見逃しなく。

65daysofstatic  サマーソニックでのライブはフェスティバルならではの時間制限があり、演奏されたのは下記の7曲。初日の幕張メッセでは、はやる気持ちを抑えつつ後方から見ていたのだが、予想以上に観客の反応が温かく、意外なところで大歓声が上がった光景などを見ていると、なぜだか不思議と仕合せな気分になった。曲を聞き込んでいると思われる反応を示していた観客が思った以上にいたのはうれしい。「コンニチハ」や「アリガトウ」といった簡単な日本語を交えてのMCや演奏からは過度の緊張は感じられず、むしろ落ち着いていたように見受けられた。演奏が進むにつれて観客の興奮度も上がって会場全体が熱気に包まれていくのは目に見えて明らかであり、メンバーの表情こそ見ることができなかったものの、全体的にバランスの良いライブであったと思う。珍しくドラムセットの上に立ち上がって激しくリズムを刻んだドラマーの姿はきっとこれから先も忘れることはないだろう。あのような彼の姿を見たのは初めてだった。ただし、個人的にどうしてもライブ中に気になって仕方がなかったことがあった。見慣れない白いフェンダーだ。残念ながら、まだまだ新人である彼らには持参できる機材に当然のことながらかなりの制限があり、あの白いギターは借り物だったようだ。やはりギターとは一本ずつ微妙に鳴り方が違うのだということを実感させられた。

65daysofstatic  翌日のインテックス大阪では、やや複雑に配置された柵のために息もできないほど押し潰され立っているだけでも精一杯の状態の場所へ流されたまま生き残るのに必死の40分間となってしまった。終わってみれば腕には内出血が多数。演奏曲目は前日と同じであったが、バンドの演奏は前日よりも気迫がこもっていたのではないだろうか。特にギターリストのすさまじい集中力には圧倒されっぱなし。前日に比べてMCは少なく、その口調からもギターの音色からもすさまじいエネルギーが感じられた。一方で、激しいながらもタイトにリズムを刻むドラムとベース、ステージ上を前後左右に動き回りながらも、時折しっかりと観客の様子を見ているピアノ兼ギター。激しさと冷静さのバランスがこのバンドの魅力のひとつでもあるのだと思う。

 さらにその翌日、大阪の茶屋町にあるタワーレコードで彼らのインストア・イベントが行われた。トークショウとフィルム・ライブ上映会ということで、一体彼らが何を話すのか興味があり行ってみることにしたのだが、集まったファンからは積極的に質問が飛んでいたし、そのまなざしは皆一様に真剣で、これまたうれしい光景だった。フィルム・ライブは前日のサマーソニック大阪でのライブ映像が流され、客観的に後方から録られた映像で観客の盛り上がり具合を改めて見るというのもなかなか興味深いものであった。最後にサイン会も行われたのだが、ひとりひとりと丁寧に接する彼らの姿はその音楽と同様に常に誠実で真摯そのものであった。

65daysofstatic  そしてタワーレコード渋谷店でのインストア・イベント。ライブだけではあったのだが、贅沢なことに通常のライブと同じくらいの演奏時間。サマーソニックでは演奏されなかった"install a beak in the heart that clucks time in arabic"と"fix the sky a little"も演奏され、幸運にも整理券を手にすることのできた観客は暴れたり押し合ったりすることなく、ゆったりじっくりその爆音世界に浸ることができたのではないだろうか。アンコールにはThomason Soundsより発売された彼らのセカンド・アルバム『One Time For All Time』の日本盤にボーナス・トラックとして収録されていた"aod"という曲が演奏された。久しぶりにライブで聞いたのだが、いつものごとくやはり思わず手を止めて聴き惚れてしまった。

 インストア・ライブ終了後に姿を現したメンバーは会場内でも会場外でもあっという間にサイン攻めにあっていた。大阪でも東京でも、英国で限定発売されていたポラロイド写真付き7インチ・シングル"Radio Protector"を手にしていたファンが多くいたことが印象的だった。日本人の音楽購買意欲や音楽好きの情熱もまだまだ捨てたものではないのだなぁ、とファンに囲まれる彼らを見ながら思いつつ、決して大手ではないけれど、いわゆるインディーと言われるレコード・レーベルでありながらも日本盤発売等こうして彼らを支えてくれる人たちがこの国にもいることを本当にうれしく思った。いちファンである自分のような者がこのような取材の機会を与えていただけたことを心から感謝すると共に、残響レコードThomason Sounds、この両レーベルの関係者の方々には深くお礼を申し上げたいと思う。

 10月にはセカンド・アルバム『One Time For All Time』の北米地域での発売が決定している。現在の予定では、12月にサード・アルバムのレコーディングを始めるという65daysofstatic。次は一体どんな音を届けてくれるのだろう。そして、どんなライブを見せてくれるのだろう。加速度を増しながら進化するも決して自分たちを見失うことのない彼らに対する興味はまだまだ尽きることはない。

65daysofstatic

SET LIST

Summer Sonic 06, Tokyo (12th Aug. 2006) / Osaka(13th Aug. 2006)
drove through ghosts to get here/i swallowed hard, like i understood/await rescue/ retreat! retreat!/
radio protector/65 doesn't understand you/aren't we all running?

Instore Live, Tower Records Shibuya (15th Aug. 2006)
drove through ghosts to get here/i swallowed hard, like i understood/
install a beak in the heart that clucks time in arabic/fix the sky a little/await rescue/
65 doesn't understand you/radio protector/retreat! retreat!
[encore]aod

report and photos by miyo
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The official site

65daysofstatic

http://www.65daysofstatic.com/

The latest work :

65daysofstatic

"One Time For All Time"
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the previous works

65daysofstatic

"The Fall of Math"


"Hole" (7 trax)
"Retreat Retreat" (3 trax single)



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