フォーワード・ロシア@ ガラージ、ロンドン(18th Jul. '06)
進め!ロシアのみならずどこまでも
5月の、いや遡って2月のNMEツアー・ショウ以来待ちに待ち焦がれて約5ヶ月。やっとフォーワード・ロシアの陽の目を見る時がやって来た。サポート・アクトとしてツアー荒らしをしていた時から、既に彼らの凄まじいパフォーマンスには度肝を抜かされてはいたのだけれども、もっと聴きたい、観たいという所であっけなく終わってしまっていたので、今夜のヘッド・ライナーとしてのギグには並々ならぬ期待を抱いていたのだ。
サポート・アクト一組目はバーミンガム出身の5人組、ザ・スケア。あわわ、もうパンク、パンク、パンク一色。ひたすら掻き鳴らされる荒いギター・リフにボビー・ギレスビー似のボーカルの、もっぱら衝動に身を任せただけの様な乱雑な歌いっぷりに2〜3曲聴いただけで苦しくなってくる。ラジオで聴いた曲は結構メロディが良かったので、どんなもんか期待していたのだが、切れ間ない演奏のためにどこまでがどの曲か非常に分かりづらかった。パンクの分派が激しくなってきた分、音から察せらるる、純パンクとしての方向性は潔いのかもしれないが、曲にもっと特徴が欲しい。そんな彼らに三半規管をすっかりやられ、へなへなしていた所に現われたのが、オックスフォードから男5人衆のユースムーヴィーズである。これがまた、棚からぼたもちバンド。実験的でサイケデリックなリード・ギターと、風変わりなメロディを刻むリズム・ギターが上手く絡み合い、手数の多いドラミングと連帯感抜群の、グルーヴを支える逞しきベース。便所サンダルをつっかけ、ターバン巻いてるドレッド・ヘアのこのお兄さん、路上でアクセサリーでも売ってそうな風貌であるが、んなこととは無関係にこのリズム隊の縦のラインが素晴らしい。そこにトランペットが加わり、難解なリズム進行と絶えず起こる転調に、先の読めない怪しき個性を持ったバンドである。アッシュのティムをちょっとお坊ちゃまにしたようなヴォーカルの声質はやや特徴に乏しく、コーラスワークも皆無だが、プログレッシブ・ロックを連想させる演奏重視の曲展開は、今までに無い新しさだ。
そら来た、フォーワード・ロシアだ!トレード・マークのロゴ入りTシャツに身を包み、ゆっくり壇上、否ステージへ。小さな会場は溢れんばかりの観客で芋洗い状態。一発目の"サーティン"はシンセサイザーが調子悪かったのかイントロで少しだけ詰まったが、すぐにこちらに背を向けそれを操作していたヴォーカル、トムが振り向き、手の平をかざしてのたうつように歌い出す。自分で歌って気づいたのも間抜けな話だが彼の音程は高くて変則的である。だから地声もシャウトもファルセットも同じように歌えたもんではないのだ。切なげにメロディをなぞる時は美しく聴こえるし、身をよじらせ、切羽詰まった時の叫びは奇天烈。例によってマイク・コードを体に巻き付け歌うトムだが、序盤から興奮状態の彼は勢い余って自分の首を絞めちゃっており、いくら何でも苦しそう。その傍らで彼らの曲の心臓ともいえるウィスカスの、偏屈で、しかし屈強なギター・リフに、ロブの、男は黙って式にしっかり底辺を揺さぶるベース、ケイティの、もやし男児もひれ伏すパワフルなドラミングが怒濤の展開で鳴り響いている。妹のコーラスは兄のキンキンした声にも違和感なくはまり、ロシア節の華あるアクセントだ。"セヴンティーン"、"エイティーン"と中盤になるにつれ、男子も女子もモッシュして、ステージに上がり踊り乱れてはローディに引っ張られて行く。エナジーが膨張したフォーワード・ロシアが生むこの空間は、本当に驚異だ。ライヴを観る度に、声量が増し聴き易くなっているトムの声、もともと安定している演奏力だが、過剰に煽らずしても自ずと興奮をもたらすパフォーマンスは前よりももっと観る者に近づき、ずっと吸引力を放っている。電話くれたらご教授するよ、と天才アインシュタインに対して歌うリーズの奇才達、加速するその歩みはもう彼らにさえも止められないし、止まらない。
-- Set-list --
Thirteen/Fifteen Part2/Twelve/Seventeen/Eighteen/Sixteen/Fifteen Part1/Seven/Nine/Eleven |
photos and report by kaori
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