スペシャル・アザーズ @ 代官山ユニット (15th Jul '06)
次なるステージへ
スペシャル・アザーズのここ数年の躍進は目覚ましいものがある。2年ほど前はよくライブハウスでもその姿を見ていたが、集まるオーディエンスもまだまばらだった。それが、2005年のフジロックでは朝一番の出演にも関わらず、その出演ステージでは3日間を通して最大の人数を動員し、この日のワンマンライブでも700人を動員したという。700人という数字を見てどう感じるかは人それぞれかもしれないが、この日の会場となったUNITのフロア後方にいたお客さんからは、「ステージは見えないし、前の方へ移動することすらできなかった」という声も出ていたほどだ。
メンバーがステージへ登場するともに歓声が沸き起こった。ステージ下手から、鍵盤の芹沢、ギターの柳下、ベースの又吉、ドラムの宮原と半円をつくり、いつもの配置へとつく。最初の曲は"Mellotron"。呼吸を合わせるかのようなジャムが続く。4人の呼吸が合い始めたところで演奏を終えた。即興性の強いジャムバンドとしては、メンバー間の呼吸の合い具合によって、その日の出来が左右される。まずは様子見、そんな印象を受けた。
「とにかく楽しんでいってください!」。短めのMCをはさみ"NGORO NGORO"へ。メロディーラインが強調されるこの曲は、オーディエンスの反応も素晴らしく良い。歓声とも奇声ともつかない叫びがフロアを飛び交った。続く"Cacao"は、スペシャル・アザーズの持ち曲の中でも数少ない歌モノの1つ。浮遊感のあるサウンドと美しいメロディーライン、そして上を向き、力強く歌い上げる芹沢のボーカルがとても印象的だった。
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オーディエンスの男女比はほぼ5分で、20代前半から半ばの人が多かったように思う。MCで現在レコーディング中ということや、久々のワンマンという話を芹沢がすると、意外にも大声で反応を示したのは男性客だった。メンバーの容姿などから女性ファンの多いバンドと勝手に思っていたが、幅広い客層からの支持を得ているようだ。そして、約50分ほどの1stセットを終え、休憩をはさみ2ndセットへ。
"QUINT"では、目まぐるしく変化していく赤や青の照明と、強く鳴り響く低音がフロアを深遠な世界へと導いていく。そこから一変して、"Sunshine"では4つ打ちのバスドラがオーディエンスを踊らせた。
ここからは流れるように曲が進み、知らぬ間にスペシャル・アザーズの世界へと引き込まれていた。ふと我に返ったのは"random"が始まった時。芹沢の手によって一定のリズムをうち鳴らされる鍵盤、そこに他のメンバーの音が重なり、爆発的なグルーヴが生まれた。派手なパフォーマンスをするメンバーはいないが、それぞれがうっすらと口を開け、焦点の合っていないような目で下を向いて演奏をしていた。表現こそ良くないが、自分の世界に入り込んでいるのが見ている方からでもよく分かる。
そして2ndセット最後の曲となったのは"UNCLE JOHN"。ゆったりとした3連のリズム、鍵盤とギターによって鳴らされるメロディー、芹沢のボーカル、体を横に揺らすオーディエンス……。目の前に広がるその光景は感動的ですらあった。その気持ちはおそらくメンバー自身も感じていたのではないかと思う。芹沢は演奏中、何度も何度もフロアを見ていた。その度演奏にも熱が入り、その熱はバンドとしての音に反映されているようだった。
演奏を終え、「どうもありがとうございました!」という挨拶と共にステージを去っていくメンバー。しかし、フロアの熱は下がることなく、アンコールを求める手拍子と共にさらに加熱していった。アンコールに応えメンバーが再びステージに上がると、オーディエンスは待ちわびたように温かい歓声と拍手で迎え入れる。アンコールでは"BEN"と新曲"Aims"を披露した。バンドにとっては節目ともいえるワンマンライブだが、そのショーを新曲で締めたということに、今いる位置に留まらず、まだまだ先を見据えているスペシャル・アザーズの姿を感じた。
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2006
次なるステージへ : スペシャル・アザーズ (15th Jul. @ 代官山ユニット)
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