ザ・スピント・バンド @ ディングウォールズ、ロンドン(12th Jul. '06)
フジ・ロック前哨戦 其の六 ザ・スピント・バンドの巻
カムデンのハイ・ストリートをマーケットに向かって歩き、橋を渡ると左手に見えるはカムデン・ロック。運河に沿ったパブを通り抜けると、ここディングウォールズの入り口がある。5月にミステリー・ジェッツのサポート・アクトを務めた米国デラウェア州の港街、ウィルミントン出身のザ・スピント・バンド。ミステリー・ジェッツにも負けず劣らずなキッチュなポップ・センスと、彼らに匹敵するパワフルなパフォーマンスが未だ記憶に懐かしい。今夜は彼らのヘッドライナー・ショウを御報告。
サポート・スロットは、ボーンマス出身の4人組、エアー・トラフィック。こちらのラジオでは最近デビュー・シングルの"シャーロット"が良く流れていて、彼らを推すDJもいる。リハーサル・スタジオに向かう途中に見えた飛行場の航空管制にちなんで付けられたというバンド名。その音楽は、前述した曲こそカッティング・ギターとメロディックな曲展開が自宅録音のようなラフさを持ったキャッチー・チューンだが、主にピアノの弾き語りを担当するヴォーカル、クリスが時にベン・フォールズと見まごうかのような卓抜した表現力で、しかも逼迫した感のある高音ファルセットが締め付けるほど胸に響き、律動するピアノとバランスの取れたバンド・アンサンブルと絡み合い、スケールの大きな豊かな情緒を秘めた楽曲を披露していた。まだ刺々しい歌声が先走っていた昔のトム・ヨークを思い起こさせる声、聴くものの耳を誘う、凛々しく美しいメロディは2枚目のアルバムまでコールドプレイが放っていた魅力に通ずるものがある。、ひょっとしたら、ひょっとして、はっとして。
来たよ、来たよでザ・スピント・バンド。満員のむんむん熱した客席から歓声が上がり、挨拶もそこそこに"ソー・カインド・ステイシー"を始めからぶっ飛ばしてくる。ドラム以外のメンバーは誰彼かまわずコーラスに加わり、飛び跳ねエビ反りになってギターをがんがん鳴らして、肩を揺らしステップ踏み踏み。彼らの、体全体で演奏しているからというだけではなく、止まらぬ勢いで弾き出される確かな演奏力に裏打ちされた力強い楽曲が、CDのそれらとどれだけスケールが違うか、こればっかりは肉眼で観ない限り本当にわからない。このライヴ・パフォーマンスを実際に目にして初めて、真新しい驚きと興奮をもたらすのだ。わっしょい、わっしょいと、まるでお祭りのように陽気にはしゃぐメンバーの姿に観客もつられて踊りだし、いつしか皆一緒になって歌っている。「カムォン!」と煽られたのでも、「一緒に歌ってよ」と促されたわけでもない。楽しく歌い奏でる彼らに魅せられて、いつしか自分も一緒に楽しみたい!と自発的に体が反応する。まろやかなマンデリンの音色から、甘酸っぱい魅力を放つ声の"オー・マンディ"や、溜めて、引く気怠い展開に、最後のあっけないチャラーンという拍子抜けなギターで一気に肩の力が抜ける"マウンテインズ"を後半に持ってきて高揚した空間に一呼吸入れつつ、同棲するカップルが別れることの難しさを歌っているわりに、ひょうひょうと笛なんか吹いてるとぼけた感じが良い"ブラウン・ボクシィズ"、締めはやっぱり陽気に楽しいアップ・テンポな"スパイ・ヴァーサス・スパイ"で歌い、踊り、奏での総決算。
汗だくになり、充実した満面の笑みでプレイしていた姿が印象的だったメンバー6人はまだ下は19歳から上は22歳と、ヤングの花盛り。フジ・ロックの出演は初日のレッド・マーキー。この日のアンコールでも大合唱となった"ジャパン・イズ・ジ・アイランド"が果たしてジャパニーズにどう届けられるか、乞うご期待。
-- Set-list --
Roman Is Better/So Kind Stacy/Trust Vs Trust/Crack The Whip/Did I Tell You/Late/That Cat's Pajamas/Direct To Helmet/Alphabetical/Mountains/Franco Prussian/Oh Mandy/
Airport(The Motors Cover)/Brown Boxes/Spy Vs Spy/encore/Japan Is An Island/I Think We're Alone Now(Tiffany's Cover)
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report and photo by kaori
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