buttonクラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤー
@ ザ・フォーラム、ロンドン(7th Jul. '06)

フジ・ロック前哨戦
其の五 クラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤーの巻

Clap Your Hands Say Yeah
 ロンドンのヴェニューにも質の善し悪しはあって、アリーナ・レヴェルの話は別としても、中堅バンドや旬のミュージシャン達がその音楽性も踏まえた上でどこを会場に選ぶかがギグの印象に大きく左右することが多い。今夜訪れたザ・フォーラムは、キャパシティと、かつて芝居やクラシック音楽が開かれていたという名残がアール・デコ調の豪奢なバルコニーやステージに見られる点で、シェパーズ・ブッシュ・エンパイアと類似しているのだが、この二つのヴェニューは演じ手と観客の間に近からず遠からじ程良い親密さをもたらす雰囲気と音響の良さから、好印象な会場である。あとはそれを生かすも殺すもその場で演奏される音楽次第。

 サポート・アクトはザ・ボーイ・リィスト・ライクリィ・トゥ。英国中部はバッキンガムシャーの田園地帯ワンドーヴァで幼少時代を共にしたジョフとピーターのデュオである。サポート・メンバー5人を従えて、牧歌的な雰囲気のある、やや奇妙なフォーク、カントリー調の曲を展開している。透明感のある声がそのロゥファイ・サウンドにたゆたうように絡み、軽く肩を揺らすリズムも適度に力が抜けていて良い。CDではいまいち特徴に欠ける素通りメロディだったが、ライヴはやる気まんまんな元気な音で、観客と一体感を得るのが好きなのか、手拍子や煽りを盛んにしていた。フル・アルバムはすでに2005年の2月に英国のインディ・レーベル"トゥー・ヤング・トゥ・ダイ"から発表済み。森の音楽隊をイメージしたような可愛らしいアートワークと共にアマゾンでも入手可能です。

Clap Your Hands Say Yeah さて、クラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤー、現われる。クラシック音楽という、大学生みたいな格好のバンドの雰囲気とはおよそ不釣り合いな雄大なSEが鳴る中、メンバーがそれぞれ楽器を手にしスタートを切ったのが"レット・ザ・クール・ゴッデス・ラスト・アウェイ"。は、激しい。強烈に音がでかく、ダイナミックな演奏に思わず意表をつかれてしまった。デビュー・アルバムの、頭に星が回っているような素っ頓狂なヴォーカルとゆるゆるなギター・ロックが醸し出していた脱力サウンドをライヴにおいても想像していたら、とんでもない、とんでもない。若干スカスカで影の薄い印象が拭えなかったリズム隊もメリハリがあって頼もしいのだ。大した量や大きさのアンプリファイアを使っているわけでもないから、CDで受ける世界観との違いに驚くことしきりである。そこにきて、肝心のヴォーカル、アレックの酩酊状態な歌声も調子っ外れではあるけれど、力強いバンド・サウンドに負けじと張り裂けんばかりの叫びや不可思議なうなり声を混じえ、マイクにかぶりつかんばかりの熱唱ぶりで、むしろこの人達、ガラージ・ロック・バンドなんじゃないかとさえ思ってしまう、良い意味でラフで骨っ節の強い演奏であり、ひょろひょろとした"イズ・ディス ・ラヴ"や、 瑞々しいリリシズムが心地よい"ザ・スキン・オヴ・マイ・イェロウ・カントリィ・ティース"などの出色の曲が、観客の大きな手拍子と共に空間を楽しく揺らしている。ただ、まどろみの様な浮遊感がなんともいえない"オーヴァ・アンド・オーヴァ・アゲイン"では、肩の力が抜けた緩い音を味わえ、それが曲の流れに緩急をもたらしている。本編終了と同時に沸き上がる歓声と、怒濤の勢いでオーディエンスに地団駄踏まれ、揺れるフロア。アンコールを求める熱気に満ちた会場に応え、彼らは鍵盤ハーモニカの音色が懐かしさを感じさせる"クラップ・ユア・ハンズ!"、から、これまた豪快にかっ飛ばされた"ヘヴィ・メタル"まで、約1時間半、新曲も交え、会場が完全燃焼したといっても過言ではないほど熱気に満ちたパフォーマンスで楽しい夜を締めくくった。

 フジ・ロックの登場は29日のレッド・マーキー。この日のメイン・ステージの大トリであるレッド・ホッド・チリ・ペッパーズまで、ちょいと疲れた体を癒しにロゥファイでも、と思って彼らに注目しておられる方々。今夜観た限りでは、どっこい、その前に体力なくなっちゃうかもしれません。けれども、どこにそんなパワーがって思うほど、脳内がハイになリ、底知れぬパワーが体を突き動かすのもフェスティバルの非日常さならでは。音楽から生まれる感動に二度と同じものはない。明日のぎっくり腰より、今日のクラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤー。手拍子して、揺れに揺れて。


-- Set-list --

Let the Cool Goddess Rust Away/In This Home On Ice/*new song*/Is This Love/The Skin of My Yellow Country Teeth/Details of the War/The Sword Song/Gimme Some Salt/Over and Over Again/My Papa's Waltz/Upon This Tidal Wave of Young Blood/encore/Clap Your Hands!/ Me and You Watson/ Heavy Metal


なお、写真は今年1月24日に渋谷クアトロで撮影されたものを使用しています。

report by kaori and photos by keco
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