デイト・コース・ペンタゴン・ロイヤル・ガーデン Guest:面影ラッキーホール、サイプレス上野とロベルト吉野 @ 渋谷クラブクアトロ (22nd Jun. '06)
踊るパラダイムシフト
この日の前座は面影ラッキーホールだった。このバンドの名前を見たとき、マジ!? って感じで驚いた。最近はほとんどライヴをやらない伝説のバンドになっていたからだ。仕事のため少し遅れてクアトロの扉を押すと、人は一杯で、ステージには、おお! 初めて観る面影ラッキーホールが! ヴォーカルのアッキーがMCでお客さんたちをそれなりに笑わせていてから、演奏始めたのは"好きな男の名前 腕にコンパスの針でかいた"だった。タイトルでお分かりの通り、下流社会の男女の色恋沙汰をネットリした歌唱で描く傑作。フロアを埋めたコジャレた(?) お客さんたちにぶちかます、下品とソウルが紙一重のスリリングなムード歌謡。次の"夜のみずたまり"はさらにネッチョリしたムード歌謡を繰り出してくる。
お客さんドン引きかなぁと思っていたら結構ファンが来ているようだ。そして貧しさは貧しさを生むどうしようもないリアルな連鎖を歌う"おんなの線路標(みちしるべ)"。素晴らしいっス! これがリアルな日本の下流社会のブルースだ。おれがこの辺のCDを買い漁っていた98〜99年当時より、格差社会になった7年後の今の方が一層リアルに響く。夏の甲子園でお馴染みの"あゝ栄冠は君に輝く"が隠し味的に流れて、アッキーのモノローグがあり、そこから怒濤のファンク"俺のせいで甲子園に行けなかった"。コーラス嬢の振り付けがかわいい。暴力事件を起こして甲子園に行けかなった球児を歌うのたが、サビをフロアに大合唱させるという極悪ぶり。最高です。ホーン隊も含めた演奏陣のキレのよさにも驚いたけど、アッキーの存在感に参りました。
次はサイプレス上野とロベルト吉野。いきなりメタルゴッド伊藤正則の声がターンテーブルでスピンされ、ヘヴィメタルが鳴り響くオープニングから一転、鶯谷ミュージックホールのテーマ? みたいなのが流れて、MCが登場。ターンテーブルとMCだけのシンプルなヒップホップユニットなんだけど、"およげ! たいやきくん"などのネタ使いとヒップホップにまとわりつく様式(「セイ、ホー!」みたいなコール&レスポンスとか腕を挙げて揺らすアクションとか)をシニカルにコミカルに捉えた視線があって、それが笑いの芸にまで昇華している。DJのコスリ技もすごい、と言えるかどうか分からないけど、足や頭まで使ったスクラッチで「なんじゃコイツラ」的なインパクトがあった。面白い。最後は再びメタルでした。
そしてDCPRGの登場。菊地先生は、ジャージに毛がフワフワの帽子でジャミロクアイかと思ったりするけど、帽子をよく観ると、アライグマの顔と尻尾がついている。
菊地の指揮でホーン隊が短いフレーズを積み重ね、フリーに他の楽器が突っ込んでくる。そしてベースがゴツゴツしたフレーズを弾き、それを元に展開していく。ホーン隊全員にソロが回り、ギターのジェイソン・シャルトンにソロが回ったころから、ファンクぽくなり、キーボードの坪口昌恭によるソロが終わるころに、壊れたロックンロールへ突入する。お客さんたちも踊れる展開になり、喜びが大爆発する。その高揚感のままに"Playmate At Hanoi"へ。ここから本編のエンディングまでがいつものDCPRGの盛り上がりでフロア全体が踊っている。やっぱりすごいですよ。なぜそうなったのかよく分からないけど、こんな奇怪な音楽でみんなが笑顔で踊っているなんて、いい時代になったもんだ。しかもマニアックな人でなく、普通の、あるいはコジャレた人たち――女の子も多いし――が集まっているんですよ。やっぱり90年代の後半から今にかけて、「踊る」ってことの捉え方が変わってきたとしか思えない。それはフェスの影響も、もちろんある。今、その地殻変動を目の当たりにして圧倒される思いだ。
大幅に時間を過ぎたらしく、1曲削られてメンバーは下がるが、もちろんアンコールを求める拍手は大きくて、"構造V〜港湾と歓楽街の構造"へ。すごく盛り上がるんだけど、物足りない。1時間半なんて物足りない! というわけで、3時間たっぷりやると予告された7月4日も行くぞ!
PS 終演後に"ミラーボール"をゲーム音楽風にチープにアレンジしたのが会場内に流れていて面白かったです。
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report by nob and photos by naoaki
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