buttonナイロン @ 下北沢シェルター (20th June. '06)

ララバイ、そして新たな胎動


Nylon
 本人たちが自覚しているのかどうか知らないが、現在のナイロンにとって鍵を握っている曲は、ずばり"ララバイ"である。今まで自分が観てきた中にもライヴでの爆発力を持つインディー・バンドはいた。しかし残念ながら彼らの多くが大飛躍を遂げる前に失速してしまった。理由のひとつはキラー・チューンを持っていなかったことだ。フロアで暴れまわる客のアタマの片隅に、「あっこの曲いいな。家でも聴きたいな」と思わさせられるかどうかで、音源の売り上げとライヴの次回動員が大きく違ってくる。ナイロンの"ララバイ"は人にそう思わせることができる名曲だと思う。他とはちょっと印象の違う切ない系の曲だが、ナイロンらしさも失っておらず、しかもライヴでは盛り上がる。今後も絶対にセットリストから外してほしくないナンバーだ。

Nylon 少し話が逸れるのを覚悟で書く。ここで思い出すのはブレイク以前のサンボマスターだ。当時その場にいた者として断言できるが、その頃サンボにとって分岐点となったのは"ふたり"という曲だった。それまでオーラスに演っていた"つながり"の代わりにこの曲をやり始めてから、動員がぽつりぽつりと増えていった(オレ自身この曲を聴きたくて毎回ライヴに通っていた)。そしてトドメは、例の大ヒット"そのぬくもりに用がある"が突然セットリストに加わった時。ライヴのラストを"ふたり"〜"ぬくもり"という二曲構成にし始めてから倍倍ゲームで客が増え始め、あっという間に会場はパンパンになった。

 話をナイロンに戻す。実は"ララバイ"こそがナイロンにとっての"ふたり"になるんじゃないかと、ひそかに期待しているのだ。この日のシェルター公演でも"ララバイ"を聴けるのが楽しみで楽しみで、ドラム・イントロが聴こえてきた時には待ってました!とばかりに思わず矯正を上げてしまった。相変わらずの哀愁系マイナーコードの響き、ミディアムテンポながら人を引き付け揺さぶってくるグルーヴ、そして途中で切り込んでくるギター・フレーズのカッコよさ。この曲は絶対にもっと世の中に知らしめるべきだ。将来的には再録してシングルリカットしてほしいチューンだ。

Nylon だけど正直言って、心の片隅では、もう何曲かインパクトを持った曲があればさらにいいのにな……とも思っていた。すると、その途端、シマノが「じゃあ次は新曲」といって、いきなりとんでもないリフを弾き出した。うおぉっ、なんじゃこりゃっ!? どこかコミカルなその音使いはコステロ"Really Mystified"なんぞを思わせるが、でもこれはまぎれもなくナイロン王道ロックンロール・ナンバー。その不思議なリフと歌メロが絡むところなんか絶妙。 これはさっそく「家でも聴きたい」と思わされる曲だった。早くレコーディングしてくれよナイロン!

 ナイロンは現時点でしばらく東京での公演予定が入ってない。この新曲が「育って」いく過程を観られないのは非常に残念だと思う。このまま"ララバイ"や"ライドオン"くらいの存在感を示す曲に育てば、ライヴでのラインナップはさらに最強になる。経験上言うが動員もおそらくガツンと増える。さすがにサンボやかつてのハイスタのようなトントン拍子の大ブレイクまでをいきなり期待するのは酷だろうし(あれらはひとつの奇蹟だった)、そもそも本人たちがいわゆる「売れた」がってるのかも定かではないが、どうも夢を見させてくれる何かがこのバンドにはある。単純にもっともっと色々な人に知ってほしい。もっとライヴを見せてほしいし、もっといい曲を創ってほしい。その環境を作るために何かできることがあればやりたいと思う。応援したいと思う。
Nylon
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