buttonザ・フューチャーヘッズ
@ ザ・フォーラム、ロンドン (12th Jun. '06)

おみそれ入りやのライヴ魂

 古今東西、バンドの歴史を振り返れば、その人間関係が引き起こす様々なドラマもまた、彼らを象徴する大きな意味をもっている。音楽性の相違から、痴話喧嘩、金銭問題に至るまでとにかくありとあらゆる事柄で、決別、解散という最悪の事態にすら発展してしまうことはもう避けられない事実で、再結成ブームの昨今でも、一度切れた絆の修復とはそう容易なことではないのだと複雑な思いに駆られるが、今夜のロンドン北部、地下鉄のケンティッシュ・タウン近くにあるここ、ザ・フォーラムにて行われたザ・フューチャーヘッズのギグでは、日頃耳に、目にするそんな寂しいバンドの人間模様を覆す、とてつもなく優しい、そして友愛に満ちた素晴らしいショウを体験した。

 今回のサポート・アクトは、フューチャーヘッズと同郷の出身であり、かつ元ドラマーでもあったピーター・ブリュイスとその兄弟、デヴィッド、キーボーディストのアンドリューからなるトリオのフィールド・ミュージック。そのピーターが、自分がどうしても表現したい音楽があるからと、ザ・フューチャーヘッズを脱退、バンドのヴォーカリストであるバリー・ハイドの弟、デヴィッドが後任のドラマーとして加入し、現在のラインアップに至る。デビュー前だったにせよ、一度は同じバンドで活動していた者が目指す音楽が違うという理由で去ったというのに、彼らの別れは非常に友好的なものであったらしい。それ故に、今回のサポート・アクトもザ・フューチャーヘッズが自ら彼らに打診したとのこと。こういった経緯を知って、ではそのフィールド・ミュージックがどのようなバンドで、音を持っているとかいうと、まずそのバンドの編成にびっくり。メインが軸に、その他の2人が演奏とバック・ヴォーカルを担当しているが、1曲目のメイン・ヴォーカルとドラムがピーターで、ギターとコーラスがデヴィッド。2曲目のメイン・ヴォーカルはデヴィッド、とここまでくれば単にツイン・ヴォーカルなのかと思うが、なんと彼らは楽器まるまるパートを変えてしまうのだ。つまりこの2曲目ではピーターはギターを弾いて、コーラスに勤しんでいるということ。ビートルズ、はたまたCCBも、フィル・コリンズも真っ青なほどの器用っぷり。その声質はどちらも柔らかで、丸みを帯びた優しさが印象的。牧歌的なメロディと、ひねりを効かせた先の読めない曲展開は、フォークとポップスが融合された、実験的かつ、インテリジェンスな雰囲気を漂わせている。かといって一人よがりな世界の没入に終わっているのではなく、軽やかで、懐かしさと、甘酸っぱい青春の香りをパウァーアー、パッパーと美しいコーラスに乗せ、心を和ませる音楽をもたらしてくれた。なぜピーターが自分の表現したい音楽作りへと巣立っていったのか、彼らの音楽をフューチャーヘッズと比較して聴いてみると、その違いが分かるはずです。

 はい、フューチャーへッズのお出ましざんす。すでに彼らの登場を待ちわびていた観客は、セカンド・アルバムからの"イエス、ノー"で波揺れ状態。ウエーブが床をごうんごうん鳴らし、バンドのメンバーも激しく楽器を弾き鳴らし、熱いムード満点である。"エリア"、"ミーンタイム"と続き、波はより高く、大きくうねりを上げて、ステージの興奮をダイレクトに反射させている。それも縦ノリじゃなくて、横ノリで。バリーの歌声は可愛さと憎たらしさが同居したように、時にマイルドに、時に毒気を帯び、ロスの声も太く、大きく弧を描くように会場に響き渡る。ギター・リフもリズム・セクションも快活、ダイナミックで、激しいギターの掛け合いと、マイ・ペースなのほほんリズム隊の対照が面白い。4人で一緒に歌う事で、楽器も鳴らす合唱隊であるかの様な雰囲気をも醸し出している絶妙なコーラス・ワークもとにかくオリジナリティに溢れ、聴いていてただもう楽しくて、体が自然に揺れて反応する。新曲の数々もかなりの人が口ずさみ、CD以上により、力強く、逞しさをもって会場と一体になり素晴らしい空間を作り上げていた。最後は前座のフィールド・ミュージックのロゴ入りTシャツ姿でアンコールに現われた4人。こんなに「楽しかった」と、家路へ向かう足取りを軽くさせるギグを観たのは正直初めてである。"スキップ・トゥ・ジ・エンド"。いやいや飛び跳ねる先はまだまだ明るい。



-- Set-list --

Yes, No / Area / Cope / The City Is Here For You / Meantime / Burnt / Favours for Favours / Hounds Of Love / Return Of The Beserker / FAllout / Thursday / A To B / Back To The Sea / Skip To The End / He Knows / Man Eat / Decent Days And Decent Nights / Worry About It Later

-- encore --

Carnival Kids / News And Tributes / Face


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