Belle and Sebastian @ Namba Hatch (1st Jun '06)
無防備の産物
楽しさが度合いを軽々と越えてしまうと最終的には「いつ・どこで・何が(誰が)・どうした?」という細かいことを全部省略して「すごい」という言葉でしか表現できなくなることがある。小難しい四文字熟語や横文字、小洒落た言い回しなんかでは説得力はなく、この一言に勝る言葉はない。この日のライヴがまさにそれだった。目の前にいるベルセバがあまりにも無防備だったのだ。
スチュアートが、この日のベスト・オブ・ダンサーにご褒美のワインを渡すために、ステージを降り、ライトも追いきれない客席に入っていって直々に手渡したり、ご機嫌でダンスしながらステージの端っこまで行こうとしたらプツって音と同時にマイクのコードが抜けてしまって、スチュアートの声が聞こえなくなったなんていう、あの場でしか起こりえなかったハプニングに立ち会うことができたから特別感じたのではない。もっともっと単純なことなのである。ベルセバ自身がオーディエンスの心へスッと溶込んできたからだ。人と話をする時の距離がその人との心の距離を表すと言われる。ベルセバはその越えてはならない領域に土足で入ってきたのに、不快感どころか、オーディエンスの心をカッさらっていった。簡単なことに思えるかもしれないけれど、こういう満足感を与えてくれるライヴに巡り会えることはそうはない。
「古い曲もやるし、新しい曲もやるよ」という挨拶代わりのスチュアートの言葉通り、2階席を陣取っていたのであろうコアなファンのドスの効いた歓声が沸き起こった初期の"ザ・ステイト・アイ・アム・イン"や"エレクトロニック・ルネッサンス"や、新譜『ザ・ライフ・パースト』からの曲を惜しげもなく織り交ぜて披露してくれた。マルチ・プレイヤーのサラが縦笛を吹くと、小学生の頃、先生にトゥって言いながら吹くとキレイに聞こえるよ、と教えてもらったことや、スチュアートが曲の前に「これは2人の女の子の話なんだよ」と説明してくれると、 自分の周りの人を思い出す。スティービーがネクタイをキュっと直す仕草をしながら「この曲のオーナーは僕なんだよ」とちょっと自慢気に話しだすと、自称2枚目……でも現実は揺るぎない3枚目っぷりに親近感を抱く。ミックもリズムを取りながら手拍子をしているんだけれど、どこか手持ち無沙汰で楽器を持っている時の勇ましさがどこかへ隠れんぼしている。目の前にいる一人ひとりがミュージシャンである前に私たちと同じ人間であり、同じ大好きな音楽を共有している空間が完全に出来上がっていた。それは時として、スカスカの口笛の合唱となったり、ゴスペルの持つ一体感が会場全体を包む瞬間となって現れた。
生活音によ音をかき消されるような音量でベルセバの曲を何百回もリピートする時間、リリースされた作品を全て揃えられるお金があるのならば、すぐにチケットをチェックしてベルセバに会いに行ってください。きっと暖かい笑顔と音楽でアナタを出迎えてくれるに違いないから。
-- Set-list --(原文のまま)
The state I am in / Another sunny day / Funny little frog / Mayfly/bell and Sebastian
Sukie in the graveyard / Electronic renaissance / Middle distance runner / To be myself completely
Dress up in you / We rule the school / (for the price of a cup of tea) / if you're feeling sinster / your cover's blown/arab strap
I could be dreaming / I'm a cuckoo / Jonathan david / White collar boy / Judy and the dream of horses
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report by kuniko and photos by yegg
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mag files : Belle & Sebastian
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