NMEニュー・ミュージック・ツアー2006 @ エレクトリック・ボールルーム (24th May. '06) feat.ボーイ・キル・ボーイ、ジ・オートマティック、フォーワード・ロシア、ザ・ロング・ブロンズ
馬鹿値で手にした、UKロックの玉手箱
はっきり言って、これじゃ採算合わないべ、とこちらが余計なお世話を焼くほど、観客にとっては破格の約2000円というチケット代で、発売後間もなく完売した今回のNMEツアー・ショウ。単に安いから売り切れたんじゃあない。出演者の顔ぶれに、今や飛ぶ鳥落とす勢いで人気急上昇中の面々が4組揃ってなお、この値段だからである。
開演一組目は、ザ・ロング・ブロンズ。女性ボーカル、ケイトを中心とした、シェフィールド出身の5ピース。アンダーグラウンドな雰囲気を特徴とした、アート意識ぷんぷんのバンドである。小気味良いリズムと、明朗なメロディは、音楽にファッション性を求める人ならば気に入るかもしれない。演奏、歌唱力共に安定してはいるが、肝心の音の独自性がいまいち感じられなかった。お洒落心を反映させるのもいいけれど、音符はスカーフで巻けるものではない。もう少し、主張のある音楽であればなあ。
*なお、EPがこちらで視聴できます。
続いて、リーズ出身の4人組、フォーワード・ロシア。正直な話、ヘッド・ライナーを入れ替えて欲しいくらいであったが、私情はともかく、あっさり現われた彼らを観賞し始める。ちょうどアルバムも先週発売され、観客のノリも非常に良い。すでに拝見済みである、ボーカル、トムの切れっぷり甚だしいステージングは今宵も全開、もとい全壊の勢いで、一人激しく舞台を所狭しとのたうち回っている。マイク・コードを体に巻き付けるだけでは収まりきらない興奮からか、この人、そのコード食ってます。もう、よその世界で響宴たけなわ状態であり、他のメンバーもトムほど乱れ狂いはしないまでも、猛々しく楽器を鳴らし、激情が、ぐぐりと体を突き破るかのような強大なロシア節で、観る者を圧倒させている。まだ帰らんでおくれよう、という願いも虚しく、短いセットで舞台を降りてしまった彼らだが、醒めやらぬ興奮はしっかりと残して行ってくれた。
三組目はジ・オートマティック。ウェールズ出身の4人組だが、このバンド、メンバーに一人、へんてこりんな人がいるのである。そのお方、キーボーディスト、ペニーの妙に甲高く、かつ楽曲から浮いているバック・ボーカルと、曲に関係無しに落ち着かなく、なんかあれば舞台で踊り狂っている変な人風情が、初めて彼らをTVで見て以来気になっていて、今夜はいよいよ生でその妙ちきりんな姿を観られると、密かに楽しみにしていた。前述したTVでは、バンド仲間ですらもやや引き気味に横目で見ていた感のある彼の独特なそのパフォーマンス、まあ、想像通り、一人脱線した行動が笑え、他のメンバーが淡々と演奏しているだけに、却って面白かった。サウンドは、躍動感みなぎるがっちり型ロックを主体とした、聴き応えのある、耳馴染み良いメロディが特徴。新曲"モンスター"はすでにアンセム並みの合唱である。要注目の新人。
*なお、EPがこちらで視聴できます。
お待たせ、大トリ、ボーイ・キル・ボーイの登場。"バック・アゲイン"のイントロが始まると、周囲の熱狂はすでに最高潮に達したのか、合唱はもとより、ダイビングの嵐である。頭を蹴られ、肘鉄食わされ沈没しかけているこちらにお構いなく"キラー"、"シヴィル・シン"と彼らの怒濤の演奏が続く。ポップ色が強いバンドなので、こんなに激しいモッシュ・ピットは予想外であった。気がつくと、皆、歌詞も暗記の勢いで一緒に歌い、体を揺らしている。パフォーマンス自体は最終公演ということもあり、気合いの入りようが十二分に伝わって来る力強いもので、ボーカル、クリスは「はっ!」だの、「てぇい」だのと舌先も滑らかに観客を煽り、この熱狂を楽しんでいる様子。メンバーも終始笑顔である。途中スローなナンバーを挟み、会場に落ち着くよう促した彼らだが、どっこい、観衆側のボーイ達は力が有り余って仕方ないのであろう。ラストまで沸き立つ興奮に身を任せ、新たなロックの端手と共に、熱い夜を満喫していた。ひつこいようだが、しめて2000円也。替えのパンツだけ持って、とりあえずロンドンへ飛びましょうよ、皆さん。
-- Set-list -- (Boy Kill Boy)
Back Again / On And On / Killer / Six Minutes / Civil Sin / Ivy Parker / Last Of The Great / Suzie / Two Pounds / Friday-Friday / On My Own
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