メタルチックス & ブリーチ @ 下北沢ベイスメントバー (17th May. '06)
女重金属祭
会場の下北沢ベースメントバーに着いたときには、ちょうどメタルチックスが始まる前だった。メタルチックスは元DMBQの吉村とバッファロー・ドーターのシュガー吉永の2人組のユニットで、吉村のドラムと吉永のギターとシーケンサーという編成である。
吉永のギターがリフを刻み、轟音が唸りを上げ、吉村のドラムがそこに突っ込んでくる。DMBQのときにも思ったのだけど、この人ほど笑顔で楽しそうにドラムをたたいている人を見たことない。ドラムを叩くことが嬉しくてしょうがないというオーラが伝わってくる。やっているのは硬くて轟音のものだけども、2人の生み出すヴァイブがとてもよい感じで、打ち込みのビートでボトムが強化されているので、思わず体が動く。こういう楽しさの前には「もうちょっとドラムに迫力があれば……」とか「メタルならギターをギュワンギュワンさせたソロをやってくれれば……」という不満もやがてどこかに行ってしまう。吉村の笑顔にヤラれたのだった。
そしてブリーチ。いや、もう凄いです。キャミソールのカンナが可愛いなぁ、などと思ったのも束の間、いきなりトライバルなリズムが打ち鳴らされ、"踊る首"で轟音が襲いかかってくる。何というか、音の塊をぶつけてくるような3人の演奏が一体になった迫力。ヘヴィなロックが好きな人で、この凄さを知らないのは不幸だと言ってしまいたくなるくらいだ。
続く"右も左も支配する頭は今日も肉を食いヨダレを垂らす。"サムライジャングル"、"ロックに呼ばれている"、""ヘッドクリーナー"と、新しいアルバムからの曲が続くのだけど、どれもライヴならではの荒々しさがあるそして前作から"Sun-dance (Moon-dance)"。いつもそうなんだけど、この曲での「はいっっっっつ! はいっっっっつ!」というミヤの合いの手が凄くて、その叫び自体が何かのメッセージというか、人の心に迫ってきて震えをシンクロさせるものだ。セットリストでは"MJ"と呼ばれている、"この頃ファンタジー"は、ミヤとサユリの「最高〜!(最高〜!)感動をありがとう!」と野獣の雄叫びみたいで面白くて仕方がない。素に戻って「ありがとうございます」という声のギャップ! 思わず笑ってしまう。そして"裸の女王"の高速チョッパーにはゾクゾクする。この何かが動きだす感じは、ダークな感触と合わせてこの曲のマジックだ。それでいて曲が終わるとミヤの脱力系なMCで笑みが漏れる。という。そんなMCなんかを聞いているうちに「"トーチ"聴きたいなあ」と思っていたら、今度のアルバムで一番好きな曲"トーチ"が始まった。ダークに荒野をひとり疾走していくような寂寥感がある。それでいてこの迫力。3人がピッタリ組み合わさった結果出てくるこの音は、神がかっているとしか思えない。
アンコールに応えて登場して「国境も人種もジャンルも性別も超えていきたい」とミヤのお言葉。せっかくの言葉に続いて「沖縄の小さい子がやってるのを見て……自分も何かできるんじゃないかと……チャレンジして欲しいですね……炊事とか洗濯とか」と「な〜んやそれ」と突っ込みたくなる。まあ、これがミヤなんだけどね。やっぱり、サユリに突っ込まれていたが。そして"ハウリング"。容赦なく激しい言葉をたたき付け音が鋭く切れ込んでくる。このジェットコースターのようにヘヴィさとユーモアが同居している(決してバランスを取ってない!!)彼女たちの世界に魅せられるのである。
- set list -
1.踊る首/2.右も左も支配する頭は今日も肉を食いヨダレを垂らす。/3.サムライジャングル/4.ロックに呼ばれている/5.ヘッドクリーナー/6.Sun-dance (Moon-dance)/7.この頃ファンタジー(セットリストには「MJ」と表記)/8.裸の女王/9.トーチ/10.スカル裁判
- encore -
ハウリング
review by nob
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