モリッシー @ アレキサンドリア・パレス、ロンドン (1st May. '06)
ナルシシズムに手が届いた夜
北ロンドンの高台にそびえる、Alexandra Palace。祝日である今日は、モリッシー卿を拝むに相応しい晴天となった。今回のサポートはChristianという男女デュオと、スコットランド出身のSons And Daughtersの二組。どちらも全体的に黒で統一された衣装と、ダークな雰囲気が特徴。圧倒的な歌唱力と妖しさで前者のChristianが、単調に聴こえがちだったSons---を食った感ややあり。
さて、焦らすこと約3時間、いよいよMoz卿登場。えんじ色のシャツを腹部で結んだリゾート地ないでたちでゆっくりとステージへ。すでに会場はモリッシーコールの嵐、さあ、これから始まりだ!というのに、彼は何故かバンド・メンバーと肩を組み、お辞儀。まるでエンディングを観るような不可思議な気持ちのまま、冒頭の"First Of The Gang To Die"へ。会場は一気に涌き、いきなり大合唱。凄い、これがモリッシー教の響宴というやつだな、と納得。前作You Are The Quarryの雰囲気を汲んだメロディが秀逸な"You Have Killed Me"でも合唱は続く。詩人モリッシーの言葉は 信者である彼らにはすぐにそらで憶えられる魔法が込められているのか。"Ganglord"ではマイク・コードをぐるんぐるん腕に巻き付け、観客の熱狂に応えるように手をかざし、眉毛をこれが限界というほど八の字にし切なげに歌い上げる姿は、神がかった、としか表現できないくらい圧倒的なオーラを放っている。ボリュームいっぱいのサウンドと完全に同等な声量たっぷりの歌も頼もしい。マスコミの愚鈍さを揶揄したり、モッシュに失敗した人が最前列から退場させられる際、「何処かに出掛けるの?」などとモリッシー節も間に挟みつつ、汗だくシャツを爽やかなブルーのものに替え、気分一新、会場をさらにモリッシー教典に心酔させてゆく。
"Girlfriend In A coma"、"How Soon Is Now"といったSmiths時代のアンセムに往年のファンの心は泣き、"Life Is A Pigsty"、"In The Future When All's Well"といった最新作からの楽曲に至るまで彼の不変の情熱と美意識が、世代を超え聴く者全てを陶酔させる。通常のツアー時に比べると曲数が少なく、アンコールも1曲だけだった事で、ファンにはやや物足りない内容だったようだが、それでも燦然と輝く天上天下唯我独尊の人、モリッシーの魅力を完璧に堪能したいと思うならば、今手にしているCDを放り投げて、すぐにでもライブの会場に駆けつけて欲しい。彼と一体になる事で初めて完結するモリッシー教、ここにあり。
-- Set-list --
First Of The Gang To Die / Still Ill / You Have Killed Me / The Youngest Was The Most Loved / Ganglord / To Me You Are A Work Of Art / At Last I Am Born / On The Streets I Ran / Let Me Kiss You / I Will See You In Far-Off Places / Girlfriend In A Coma / Life Is A Pigsty(Intro:Maybe It's Because I'm A Londoner) / Trouble Loves Me / In The Future When All's Well / I Just Want To See The Boy Happy / How Soon Is Now?
-- encore --
Irish Blood, English Heart
なお、写真は今年3月16日にテキサス州オースティンで開催されたサウス・バイ・サウスウェスト。フェスティヴァルで撮影されたものを使用しています。
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report by kaori and photos by keco
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