buttonBloodest Saxophone Presents "Snuck Uchu"
@ Shimokitazawa 440 (29th Apr. '06)

何といっても宇宙、Snuck 宇宙

Bloodest Saxophone
 Snuck 宇宙という摩訶不思議な響きが好きだから、しつこいくらいに連呼してみよう。毎回見慣れた冒頭の映像がずんずんずんと近づいてくれば、ついつい笑ってしまう。さびれた商店街、赤い看板、何か書いてある、英語と漢字だ、いよいよドーンと大写しになる「Snuck 宇宙」。タイトルコールは数少ない楽しめるマンネリだ、これがなきゃ、どうにも始まらない。大陸ではなく、宇宙。島国でもなくて、宇宙。ほとんどの人間が体験した事がない宇宙へ飛んでいく。

 揃いのスーツできめた伊達男達が登場し、2nd以前の曲を中心として、緩急をつけながら展開していくブラッデスト・サキソフォーン(以下ブラサキ)第1部。強靭なリズム隊のビートに煽られながらも、後方で酒と、テナーサックスの甲田"ヤングコーン"伸太郎が作ったつまみをパクつく。グルーヴも、舌に残る味にも、辛さがピリリと効いている。ブラサキ流の不良なジャズが香る"バックドロップスウィング"でバップすれば、縦のリズムにお客さんの間から踵のノックが返ってくる。張ったかと思えば、すかさず緩め、かしこまった深夜のFM調に「デューク・エリントンのナンバーで…」とはじまる"ムード・インディゴ"奏でられ、続く"LOVE SONG"でもしっとりとくゆらすメロディを贈られて、ブラサキが持つロマンチストの一面を堪能させられる。第1部のラストは"Hiasobi"で、読んでそのまの火遊びではなく、女遊びのことだろうと察する。メロディはエロく、ヴォーカルがなくてもタイトルを物語っている。このときの甲田はポーカーフェイスで、直後に起こるサボテンの大騒ぎをまったく意識していない。

Bloodest Saxophone  無限大に広がるボキャブラリーを上手く表わした言葉が「宇宙」なのかも知れない。ブラサキメンバーの中から、甲田とユキサマがテナーサックスでバトルを繰り広げるサボテンが再結成して登場だ。単にブラサキ第1部と第2部の合間というだけではない、驚きと笑いの時間がここにある。

 サボテンとは、ユキサマが妄想したただならぬアイデアを形にする場所でもある。ブラサキでは陰でちょこちょこと気になる動きをする彼が、プロデュース&意思決定をつとめるとなると…何が起こるかわからない。誰にもわからない。神懸かった「サボテン枠」には、2つのテナーサックスが抜きつ抜かれつバトルする魅せ場があり、サックスを加えたまま喋るユキサマの脱線MCありと飽きさせない。真面目なところも用意していて、アストル・ピアソラの"リべルタンゴ"のカバーもしっかり組み込んでいる。実は、隠れサボテンファンという人が結構存在していて、先読み不可能だから面白いのだろう。期待以上の演奏と、期待というよりはもはや楽しみなユキサマショータイムをあわせてサボテン枠、はたまた、ユキサマ+オレンジ色のツナギ=サボテン枠という説もある。

 今回のショータイムはかみしばいだ。タイトルは『ホンノー君 リローデッド』脱力したキャラクターが描かれているが、ページをめくると流れは無視された。竹取物語にすり替えられ、画ではなく文字がある。

「今は昔、竹取の翁といふものありけり。名をば、さぬきの造となむいひける」

とあった。「野山にまじりて〜」がカットされているがこれは狙いだろうか、抜けたのだろうか。真相はどうであれ、ユキサマはすでに古文の熱血教師となっている。

ユキサマ:ありけりの「けり」は終止形だな。ところがぁ、ところがだ、なぜこっちは「いひけり」でなくて「いひける」なのか? これはぁ、「なむ」という係助詞があることによって本来「いひけり」になるところが「いひける」の連体形で終わっているんだ。これをぉ「係り結びの法則」といいます!

 関心と笑いを一心に受け、ユキサマ至福の時間。画を用いたかみしばいのメインがいよいよ幕を開ける。子供がいない老人夫妻は、同棲ということにされているし『桃太郎』が出てくればポンポン…と桃太郎侍で、バッサバッサと切り捨てる。いつの間にか亀が出てきて『浦島太郎』に、障子の奥に隠れてみれば『鶴の恩返し』となる。そしていつものようにその場で"自然"解散した。笑いでかき消されそうだけれども、全編にブラックユーモア満載で、ユキサマの画はヘタウマだったと付け加えておく。

Bloodest Saxophone  さすがに笑いを引きずって登場した甲田、いつもは肩を震わすだけなのに、声をあげて笑っている。なれているはずの彼もノーマルな状態に戻す事は困難で、お客さんはというといつまでも高揚している。メンバー紹介で落ち着かせようとしてもまだ笑ってる。他のメンバーがユキサマのショータイムを見ないのは、笑いを押さえるためかも知れない。どこかで聞こえた「サックス吹けねぇゾ」の言葉に賛同しかけたが、メンバーが演奏を始め、リードを加えた瞬時に切り替わるのが甲田。先ほどとは打って変わって、文字通り、息吹がラッパより飛び出していく。

 ゴールデンパパのドラムは抑揚をつけながら、ベースラインを際立たせ、メロディーを生み出す金管やギターが出てくれば、一歩引いたところへと落ち着くが、しなやかな手つきは、時に視線をさらっていく。柔らかくいそれは、タケオ(B.)のぶつかっていくような運指とはまるで雰囲気が違う。おおらかさと闘争本能が表れた、一見アンバランスなリズム隊が絶妙なコントラストを生んでいくことを知る。

 甲田がヤングコーンと呼ばれるようになったいきさつは、一回だけノリでつけてみたらばメンバーが"Bop Corn"だの、"Corn's A' Poppin' "だのコーンネタがわんさか飛び出して引くに引けなくなったからだと暴露し、そうなると"意外とモロッコ"は「もろこしだったのか?」という疑問が頭をもたげてきたが、ブラサキはすかさず"走れヤングコーン"で彼のテーマソングへと続けた。リスのようにパンパンに頬を膨らませた甲田がサックスを捻りあげ、他のメンバーが「ヤングコーン!」と煽っていけば、追い立てるメンバーと逃げ切ろうとする甲田の画が浮かんで面白い。たとえ追いついても、一丸となってコースをはみ出し、群れをなしてフロアに突進してくるのだ。

 すかさず"愛そして英雄伝説"がムードたっぷりに展開し、臨戦態勢を軽くいなされ、馴染んで来たところで、再び全速力で駆け抜けるナンバーである"ポークチョップチップ"。2・1・1の柏手を打ち、上気したままブラサキとさよならしたお客さんは、当然のように足りないとリクエストする。そこで披露されたのは"暗がりでツイスト"で、ユキサマはこれでもかと低いツイストらしき(低すぎて相当おかしなってる)ステップを繰り出し、おつまみ共々、最後まで楽しませてくれるのだ。


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