ザ・ズート 16 @ 新宿ロフト (28th Apr. '06)
16歳の手のひらで
ステージ前のスクリーンが開くまで、ただ繋げるだけでないフェーダーの妙技、スクラッチを駆使しながら、ラテン、スウィング、スカ、ロマにシャンソンなどを、新旧織り交ぜてスピンするクボタタケシはライブまでの2時間をカラフルな色で染めていく。いよいよ登場かという時には、オーディエンスは上気し、お酒のペースも早くなっている。場の雰囲気を察知し、見あう色を即興で選んでいく行為は、CD一枚をただロールするよりも、これから出るであろうバンドのバックボーンを知る重要な手がかりとなる。
そのバンドとは、クラブシーンと密接に関わる渡辺俊美率いる、ズート16。率いるって表現は当たっているが、間違いでもある。実のところ、TPOによってバンドメンバーが変わり、時には1人のこともある。すべては、真ん中に立つ爽やかな男の頭ん中にあり、その頭ん中にあるものごとは、同じステージに立つファミリーが自然に感じとって、表現していくというもの。バンドを「構成するメンバーが」というのはたやすいが、ここではまったくふさわしい表現ではなくて、「気心の知れたファミリーが」と言ったほうが正しい。遊びを染み渡らせた音楽をやっているのは、光線銃の音が証明してくれる。フロアでは誰もが若返り、羽目を外して踊り、ピーピーと笛が鳴る。
ターンテーブルから生まれるビートにファミコン時代の効果音、硬いドラムがほとばしり、ブロウしてのたうつサックス、サイケで多用されたゆらぐキーボード、そして、ロカビリータッチのグレッチが一点に集い流れ出すと、地球レベルで見る地方の音に電子回路が組み込まれたまるでサイボーグのような革新的サウンドができあがる。初っぱなのセッション後に炸裂した初期のナンバー"W.B.R"は、スカからBPMを落とし深化したレゲエ(@ジャマイカ)でも、ペラペラにして突っ走るスカコア(@アメリカ西海岸)でもなく、重量感を保持しながらパンクの縦ノリと打ち込みのビートが混ぜ、新鮮でやんちゃなアフタービートを作り出す。ライブで踊りだしていた自分をかえり見れば「なんかニヤリな不良が、楽しくて踊れるライブをやってるから来たらいいよ!」とだけ言えばいいんだろうが、ここはもうひとつ付き合って欲しいと思うんだな。
また、ストレートに世界の田舎音楽を表現したかと思えば、決まってリスペクトからくる確信犯的なメロとフレーズをちらつかせたり、何気ない意地や、だらしない男の身の回りを歌詞の芯にすえたりと、見え見えな狙いを用意してくれる。洒落たスタイルで来るときは、どこかに必ず外しが存在するのも魅力で、"ごめんねマイペース"、"ミニパト・ガール"や"Na-O-Su-Yo"なんて、歌詞だけで笑けてくるのだ。しかし、今回は"ごめんねマイペース"の展開にまんまともてあそばれて、ハメられた。間奏で、ダビーに反響したオルガンの裏打ちがしばらく続き、Down Beat Rulerを皮切りとして東名阪ツアーをおこなうオリジナルスカの巨人、リコ・ロドリゲスVer.の"Take Five"をあからさまに見せつつも、それを打ち消すように全体のサウンドが立ち上がったこと。金管のソロが入ってくると予想させながら、いったん身を引き、諦めさせたところで「やっぱり"Take Five"でした」なんてもう…悔しいけれど、やんちゃな16歳の手の上で、まんまと転がされたライブだった。
★THE ZOOT 16
4/30(日)ARABAKI ROCK FEST.06 @エコキャンプみちのく
5/14(日)FM802&SPACE SHOWER TV presents「SWEET LOVE SHOWER 2006 SPRING」@大阪城野外音楽堂 なんと、勝手にしやがれ+THE ZOOT 16の名前で出演!
6/11(日)RUSH BALL 8 @大阪城音楽堂
★DJ Toshimi Watanabe
5/21(日)Interplay Lunch Style pt.4 @下北沢440
以前行ったときは、晴れていることもあって、440の窓はすべてオープンでした。開けた空間の中で、女性ヴォーカルのジャズを中心にスピンしていた俊美さん。突然舞い込む「これは誰の曲ですか?」の問いかけにも丁寧に答えていました。あくまでもカフェスタイルですので、ゆっくりコーヒーなど飲み、小腹がすいたらゴハンを食べて、楽しんでみてはどうでしょうか?
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report by taiki and photos by sam
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