キングス・オブ・コンビニエンス @ 渋谷クラブクアトロ (12th Mar '06)
今日の主役はそこのあなた
「ここに来るまでに5年もかかっちゃったよ。」
顔に対して明らかに大き過ぎるのではないかと思われるメガネをかけた、ちょっと神経質そうな典型的なメガネ青年アーランドの口から発せられた通り、メンバーのアイリックとアーランド、そして観客にとっても、あまりにもここまでの道のりは長かった。『クアイエット・ライオット』と呼ばれたマンチェスター発の一連のアコースティックバンド達のムーブメントの波に、当時マンチェスターで音楽活動をしていたこの二人は乗ることとなって、日本でもその名前を知られる事となったキングス・オブ・コンヴィニエンス。そのムーブメント自体は悲しいことに自然消滅してしまったけれど、あくまでも自分達のペースで音楽を作り続ける姿勢。そして決して派手な部分があるわけではないけれど、まさに秀作という言葉がぴったりなアルバム『Riot on an Empty Street』は会場を満杯にするのに相応しいものであったに違いない。
ステージの上にはピアノ1台だけが鎮座し、ドラムやアンプなどが見当たらないので、まさかと思ったが、そのまさかでアコースティックギター一本を抱えた二人だけが潔くステージに立つという姿は、例えがちょっと古いかもしれないけれど、サイモン・アンド・ガーファンクルを髣髴させられた。観客の歓声が鳴り止むのをじっと待って静寂が訪れると、すーっと息を吸って"Until You Understand"のギターのリフを紡ぎ出すと、待ってましたと言わんばかりに、わっと拍手の洪水が起こった。アコースティックギター2本と息のあったコーラス、この二つがまさにキングス・オブ・コンヴィニエンスの世界を支配しているので、どんな小さな音も聴き逃したくない。そんな思いがあるのかどうか分からないけれども、演奏中のお客さんのぴーんと張った静けさと、演奏が終わる度に沸き起こる拍手の対比があまりにくっきりしていて面白かった。曲と曲の間でアイリックが覚えたての日本語を披露したり、「時差ぼけで眠たい」とアーランドが自らの顔をパチパチと突然平手打ちする場面でお客さんがどっと沸いたり、終始ほっこりした優しい雰囲気で会場は包まれていた。
アコースティック・セッションなので、どうしても単調になりがちなライブになるんじゃないかな?と不安を感じていたけれど、そんな不安は微塵にも感じさせず、お客さんに口笛を吹かせたり、指パッチンやハミングをさせたり、観客を引きずり込んで演奏側と観客との境界線が曖昧になってしまうほど、乗せ上手なお二人。途中、お客さんからピックを借りるなんていうハプニングもあって、ぐるっと見渡してお客さんの顔を見てみると、一人一人の顔が凄くいい具合で、まさに笑顔と笑顔の数珠繋ぎであった。
でも、やっぱり今夜の主役は"I'd Rather Dance With You"でギターをマイクに持ち替え、ヘナチョコなダンスを披露してくれた挙句、歌詞を度忘れしてしまった愛すべきメガネ君。君に違いない。
-- set list -
01. Until You Understand 02. Love is No Big Truth 03. Cayman Islands 04. I Don't Know What I Can Save You From 05. Sorry or Please 06. Homesick 07. Know-How 08. Winning a Battle. Losing the War 09. Gold in the Air of Summer 10. The Girl From Back Then 11. Stay Out of Trouble 12. the Boat Behind 13. Misread 14. I'd Rather Dance With You
--encore--
15. Toxic Girl 16. Little Kids
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report by sumire and photos by izumikuma
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