ザ・ホワイト・ストライプス @ ゼップ東京 (5th Mar '06)
原稿ひとつ吹っ飛ばしたギターの轟音
ボツ原稿
ホワイト・ストライプスとJSBX、ブルースを現代流に再解釈した白人バンドの双璧が「爆音&ベースレス」という大きな特徴を共に持ち合わせているのは、これは単なる偶然だろうか。否、アンプリファイドの技術が発達し、音楽の多様化もいきつくところまできた感のある現代においては、ブルースがこういった過剰な表現方法に辿り着くのはむしろ必然ではなかったろうか…(中略)…しかし、両バンドには明らかな相違もある。ジョン・スペンサーに何も考えず突っ走っているような熱感があるのに対し、ジャック・ホワイトにはどこかクールな印象を感じる。優れたバランス感覚とでもいえばいいのか。ストライプスの二人編成は、もしかしたらこのバランス感覚を追及した結果ではないのか。余分なものを全て取っ払った結果、こういう形がミニマムに残ったのではないのだろうか。(後略)
これはコラムにでも使おうかと思っていた、とりとめもない考えをぼんやりまとめていたメモを起こしたものである。しかし、今回ホワイトストライプスのライヴを久々に観て、この原稿の観点はまったく間違っていたことに気づきめでたくボツ行きが決定した。ジャック・ホワイトがクールだと? いったいオレは何を勘違いしてそんな印象を抱いていたのだろう。突然の急病でヒヤヒヤさせた今回の延期公演、そこにいたのはジョンスペ以上に熱く激しいロック馬鹿だった。
それではこの日何が起こったのかを書こう。15分ほど押してやっと開演。冒頭からジャックのテンションは異常に高い。ギターが轟音すぎてメグのドラムがほとんどかき消されている。もうこの時点で笑いが止まらなかった。メタリカのライヴみたいに、ジャックはメインマイクの他にもあちこちにサブマイクを設置しておいて、ステージ狭しと暴れまわりながらそれらを循環バスみたいに周期的にまわり吠え立てる。片や、どちらかというとルーズに叩き、時には演奏を完全に停止してそんなジャックの様子を星明子のようにじっと見つめるメグ。このコントラストがまた笑えて仕方ない。
次から次へ、ほとんど前置きもなく曲が連発される。ジャックは時々ギターを肩から外し、ピアノ・シンセ・マリンバ(木琴)などを次々に引っ張り出しきて、手当たり次第に演奏を始める。どれも達者で驚いた(特にマリンバ叩き語り!)が、いったいこれのどこが「バランス感覚の優れた人」なんだ。落ち着きをまるで感じさせず、とにかくなんつーか性急なくらい矢継ぎ早にどんどん曲を連発。
何かの曲を演奏し始めて、何だっけこれ"I think I smell a rat"だったかなと人が思い出そうとしているところへ、いきなり方向転換して"Blue Orchid"のイントロ・リフを弾き始めたりもした(観客も一瞬ぽかんとしていたが、それと気づくと大熱狂。若いファンは"Seven Nation Army"よりこっちのが乗りやすいみたいですね)。そのステージングのスピード感たるや、パンクやハードコアバンドにひけをとらないほどの勢いでしたよ。
そういえばこの日は結局セットリストが貰えなかったが、ギリギリまで選曲を決めないタイプの連中なのだろうか。だとしたらますます「勢いと気合重視バンド」といった印象が強まる。その迫力は確実にお客にも伝わっていて、ステージ最前ブロックはちょっと危険を感じるくらいの超過モッシュ地帯になっていた。こんなことはライヴ自体のほめ言葉にはまるでならんが失神者も出たらしいですね。しかしなんでこんなバンドを冷静だとか思ってたんだろう。CD聴いてる限りでは捉え方によってはちょっと頭よさそうに感じるからかな。事実はまったく逆だ。あいつら絶対バカだ。もちろん最上級のロックバンドへの賛辞として、ここに断言しておく。
|
report by joe and photos by saya38
|
|
|