BMXバンディッツ& ザ・カナンズ、テニスコーツ @ 新世界ブリッジ (14th Feb. '06)
変わるもの、変わらないもの
会場となった新世界ブリッジは、大阪市交通局の跡地に建てられたアミューズメント施設の、その施設を経営していた第三セクター(市と銀行が出資)が破綻した跡の一角に、ひっそりと作られた独立系の箱... と、少々事情はややこしいが、この10数年の時代の流れをよく反映していたりする。
パステル調に塗装されたメルヘンチックな建物の周囲を、『ジャックと豆の木』よろしくローラーコースターのレールが縫うように取り巻き、空中ゴンドラやメリーゴーランドが詰め込まれた外観は、開業当初はラスベガスのどこかのホテルにも喩えられたりしたが、今ではすべて休業状態。でも夜には建物は薄暗くライトアップされている。その廃墟感、フィリップ・K・ディック風にいえば「キップル」具合が、なんだか逆にSF的なランドマークだ。
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その廃墟寸前の建物に呼び寄せられたのが、独立系のミニシアターやアート系のNGOや劇団、そして現代音楽畑のアーティストやイベントを意欲的にブッキングするブリッジといったライブハウス。大阪プロレスのリンクもここにあった。細々とはしているが、オルタナティヴな息吹と刺激とで新たな役割を担うかのように思われたこの遺跡的ランドマークも、破綻した三セクの債権処理をめぐって先行きは不透明... これも、今という時代の断片か。
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デビューから20年目を迎えたグラスゴーのポップ番長バンディッツも、当時からのメンバーはずっと変わらずフロントマンだったダグラス・T・スチュワートひとり。だがあの、ハイランドの気候とはまるで正反対の、ふんわりとした羽毛のような暖かなメロディと歌声はそのまま。時を経ても色褪せないどころか、新たな相棒パールフィッシャーズのデヴィッド・スコットのピアノとコーラスを得ての美メロのカレイドスコープに、コステロとバカラックという英米屈指のメロディ職人のコラボを想起してしまった。"Serious Drugs"、"I Wanna Fall In Love"といった味わい深いアンティーク時計のような曲たちが、腕の良い職人によって磨かれオーヴァーホールされ、チクタクとまた元気に時代を超えて時を刻み始めたかのよう。紅一点レイチェルの屈託のない歌声にも、ローカルに脈々と受け継がれるポップでオルタナティヴなDNAを感じさせられる。
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オープニング・アクトだったテニスコーツ(1曲目はネバーエンディング・ストーリーのテーマ!)にもまた、こちらはバンディッツやパステルズのDNAがグローバルに飛び火した、その種子の跡を垣間見るのは容易いし、フロアには20代のお客さんも多くて、20年経っても、こういう音楽が訴えかけるものの強度は弱まらないのかも。深く考えてこじつけだすときりがないのだけど。窮屈なベッドルームで膨らんだ、脆さと背中合わせのヒリヒリとした自由…その共鳴波長。
ありふれたベッドルームや錆びついたガレージを出発し、グランジ、オルタナ、ドローン、音響をグルッとひとまわりしてから、じつに地に足の着いた演奏を聴かせてくれたのがオーストラリアのザ・カナンズ。こちらも20年選手だ。オージーのバンドらしくフォーキーで乾いた、でもどこか琴線に触れる情景的なサウンドに、80年代後半から90年代にかけてのロックの要素(ノイズ、サイケ、音響、ドローン…)を、それが俺たちのルーツとでもいうように手慣れた感じで混沌と散りばめた音楽は、どこかのベッドルームから飛び立つ行き先のないフリーツアーの、ひとつの到達点だったのかもしれない。
終演後バックステージでは、やっぱり10何年ぶりに再会したという少年ナイフの直子さんとダグラスが、思い出話に花を咲かせる姿が…ここにも変わらないものがひとつ。
(取材協力/オフィス・グラスゴー)
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2005
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2004
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波の音が聞こえない : Jack Johnson & Donavon Frankenreiter (4th Aug. @ Namba Hatch )
謙虚さと幸福のカタルシス : FERMIN MUGURUZA KONTRABANDA in Radical Music Network Festival (27th July. @ Club Chitta Kawasaki )
侘び寂び : Cat Powerand Women & Children (1st Jun @ Shinsaibashi Quattro )
ローマ -ベティ・イサンゴ・ドゥグ・ビルバオ- : Street Beat Festival (18th Apr. @ Piazza dei Tribuni in Rome )
ミラノ -ボブ・マーリーとジョー・ストラマーと- : Street Beat Festival (17th Apr. @ Leonkavallo in Milan )
ボルツァーノ -bad dog outside!- : Street Beat Festival (16th Apr. @ Ku.Bo in Bolzano )
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祭りだ、祭り : Shibusa Shirazu (10th Mar @ Shinsaibashi Quattro )
ポストモダン・ニンジャたちに時代は追いついたか : NINJA TUNE (4th Mar @ Osaka Mother Hall)
沖縄小旅行〜国際通りの喧噪と喜納昌吉&チャンプルーズ、基地の町嘉手 : (Mar @ Okinawa)
泥酔エンターテイナー : Gaz Mayall (13th Mar @ Osaka Big Cat)
Amore E Odio : Banda Bassotti (3rd Apr.)
僕たちはみんな同じ血の色をしている : Soul Flower Union (9th Mar @ Osaka Banana Hall)
これほど罪深いものは、ない : Ben Harper & The Innocent Crimiinals (1st Mar @ Namba Hatch)
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