buttonア・ハンドレッド・バーズ・オーケストラ
@ 恵比寿リキッドルーム

その30余りの人が、僕らを歓喜という楽器に変えてしまった

A Hundred Birds
 この日のライヴは伝説になる…と言えばさすがに大袈裟だろうが、これくらいは断言できる―この日ライヴを体験した人で、「良くなかった」と言える人は、一人としているはずが、ない!!!

A Hundred Birds  18時会場&開演というスケジュールを30分ほど遅れてスタート。まずはパーカッシヴな選曲のAgeishiや、さすがハウスミュージック界の雄とばかりに幅広い選曲の(Madonnaの"Hung Up"には驚きと喜び!)NORIによるDJプレイが3時間弱続く。照明を落としたクラブ仕様のリキッドルーム、この時はまだフロアの温度もそこそこといったところだ。やはり皆、今宵の主役に温存しているといった様子である。
 その温度が徐々に加熱しだしたのがDJ NORIがHarry Thumannの名曲"Under The Water"をスピンしだした辺り。フォトピットにまで土台を組んだステージへ少しずつメンバーが姿を見せ始めた。
 …いよいよ始まるのである。あらかじめステージには譜面台などが配置されていたので、30名にも及ぶ桁違いのボリュームは実感していた。だが、いざ本当にステージ人が立った光景というのは「なかなかのもの」どころではない。関西を拠点にしているせいでなかなか東京で拝む機会がなかった彼らをこのような形で見られることにまずは感謝したい。
A Hundred Birds  登場を前に誉めすぎの感もあるが、実際にその荘厳なる31のアンサンブルが始まってしまったら誉めることも忘れてしまった。再び登場した"Under The Water"を演奏したりというサービス精神旺盛な選曲や、まるでハウスDJのプレイを生演奏カヴァーしているかのようなノンストップのプレイスタイル、そしてその指揮をとるYOKUの実に楽しそうな姿…これら全てが自分をひたすらに踊り、笑い、そして楽しむという単純回路へ導いていくのだ。観ていて面白かったのが、時折YOKUがステージからフロアへ体を向きかえて指揮を続けるのだが、フワッと彼が手を挙げればフロアのオーディエンスも皆歓喜の声をあげるという瞬間。オーディエンスもまるで楽器のようだった。

A Hundred Birds  序盤はとにかくダンスダンスダンスといった具合。3人寄れば文殊の智慧というが、演奏するはその10倍で、それによる多様な楽曲の幅も躍らせる要因になっている。12インチになっている"Jaguar"のカヴァーは勿論、YMO"Firecracker"に"Street Player"、そしてまさかのHerbie Hancock"Rock It"というダンスミュージックファン唾涎モノ構成はまさにピークタイムは続いた。この日、東京の気温は例ならず寒かったせいでかなり着込んできた私だったが、"Jaguar"が終わってからの軽いインターミッションですぐさま衣服を軽くしたものである。

 そして後半からは彼らのもう一つの本髄でもある歌モノの美へ進んでいく。それまでは初めて彼らを体験した朝霧JAMの時と違い、アーシーな印象も強かった音の響きだった。けれどやはりヴォーカルが中央に立ち、演奏の中に声を重ねるとその印象もまた変わる。"Batonga"ではヴァイオリニスト金原千恵子をゲストにイントロを鳴らし、そして声が入る……!!言葉もない。そして"In The Sky"ですがすがしく本編を終え、会場は満足の心地にいた。そしてまさかのアンコール、曲はMFSB"Love is the message"というのだからもうどれだけもっていってくれるんだといった次第である。合計演奏時間は100分あまり。濃密で最高の宴に、会場を後にしても尚多幸感がついてきたのであった。

A Hundred Birds  個人的な話になるが、この日の私のコンディションは決して良いものではなかった。バイクは事故るし強烈に腹を下すし…とかく散々な目に遭っていたせいで、27日を振り返るととても「いい一日だったなあ」とは言えない。けれど、リキッドルームにいた時間だけはまったく別の記憶にあって、そして今も輝き続けている。
 聞くところによればA Hundred Birdsがオーケストラ名義でプレイするのは年に一度らしい。だからあなたもそれを覚えておけば、きっと1年のうちで出遭う散々な日のひとつを帳消しにできることだろう。

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