モグワイ @ 代官山ユニット (24th Jan '06)
ノイズとミラーボール
セットチェンジ中にミラーボールを見ていた。デートコースペタンタゴン・ロイヤル・ガーデンの菊地成孔の「ミラーボール、あの装置はすごい。あれを発明した人にはノーベル平和賞を上げるべきだ」という言葉を反芻しながらミラーボールをずっと眺めていた。ひとつの球でありながらたくさんの面を持ち、光の当り具合で輝き方が変わっていくミラーボールを眺めながら、さっきのオープニングアクトであるメルトバナナのヴォーカルの女の子は松本まりかに似ているなあとか、ホリエモンはこれからどうなるのだろうか? とかいろんなことが頭に浮かんでいく。
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約30分の転換時間の後、モグワイのメンバーたちが現れる。そして"Glasgow M/S"から始まるも、何だか跳ねていて躍動感のある曲で、モグワイとしては、意外な感じがした。それ以降は本来のモグワイらしい、どっしりとしたリズムにギターやキーボードの音が乗るもので、この日はノイズというよりは楽器の繊細な響きを重視した演奏が続いた。
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だけども、みんなはアレを待っているのだ。全身に浴びるような凄まじいノイズを。代官山UNITという今までのハコと比べ密室感のある会場だからこそ、さらに期待が高まるものだ。それなりに轟音は出る。でも、全身を覆い尽くすほどのものではない。気持ちはいいけど、エクスタシーには至らないという感じだった。ただ、それは彼らの「じらし」だったのかも知れない。溜めて溜めて爆発する策士だったのだろうか? それとも轟音から歌モノへシフトしていっているのだろうか? 以前のライヴのように最初から"Mogwai Fear Satan"をぶちかまして度肝を抜くというようなライヴからは離れているということだ。
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しかし、やはりクライマックスは終盤にやってきた。"New Paths To Helicon Pt I"から本編ラストの"We're No Here"(セットリストより)にかけての凄まじい轟音の渦、ギターの残響音で会場全体が揺れて、ノイズのひとつひとつがミラーボールが放つ光のようにキラキラといろんな方向に音が飛び散り跳ね返りぶつかりあって会場の中を満たした。あまりの轟音で足元までもがビリビリと振動しているところまで「音楽」なんだというリズム・メロディ・ハーモニーという音楽の制度まで破壊しかねないギリギリの世界の中に巻き込んでいったのである。中原昌也が雑誌のコラムで「映画なり文学なり音楽なりというのは、自分が知り得ぬ感情や風景、時間を追体験するものであるべき」と書いていたのだけれども、モグワイの轟音というのは、まさに自分の生きる日常にはあり得ない感情であり、風景であり、時間であり、制度に守られた音楽の成り立ちそのものを問うものである。
アンコールはステュワートがヴォーカルを取る"Acid Food"からメドレーのように"Mogwai Fear Satan"。やってきた最高のクライマックス、会場を身動きができないほど埋め尽くした人たちはモグワイの音の世界の中で、音楽が音楽でなくなるようなギリギリのスリルと、自我を失う恐ろしさと、その紙一重である気持ちよさを感じていたのである。
set list(原文のまま)
1.GLASGOW M/S 2.FREAK ( ) 3.TRAVEL 4.STANLEY KUBRICK 5.FOLK DEATH 6.TRACY ( ) 7.RATTS ( ) 8.FRIEND 9.FLIES 10.HELICON 1 11.HAPPINESS 12.WE'RE NO HERE (encore)13.ACID FOOD 14.SATAN ( )
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report by nob and photos by izumikuma
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mag files : Mogwai
ノイズとミラーボール : (06/01/24 @ Daikanyama Unit) : review by nob,photos by izumikuma
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Busting Eardrums : (04/10/05 @ Liquidroom Ebisu) : review by shawn, photos by keco
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photo report : (03/11/06 @ Shibuya AX) : photos by maikokko
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スチュワートに敬意を表して : (03/11/05 @ Shibuya AX) : review by nob, photos by koco
photo report : (03/11/10 @ On Air Osaka) : photos by ikesan
ロックの"先"に見えたもの (01/4/28 @ Osaka Big Cat) : review by ken, photos by ikesan
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no title (01/4/25 @ Akasaka Blitz) : review by nob, photos by nishioka
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