Smashing Mag / Carmen Maki @ Shinjuku Loft (17th Jan. '06)

　偶然なんだが、このライヴの数日前、渋さ知らズのゲストとして登場したカルメン・マキを見ていた。大所帯のバンドをバックに、そして、ワイルドなギターに絡むようにシャウトする彼女にオズ時代が垣間見えていたように思える。一方で、この日は、アコースティックなギターのみをバックにしたシンプルな構成。ここで思い出したのはデビュー当時。が、いずれにせよ、彼女の歌が身体と頭のなかを突き抜けていく。圧倒的な存在感は、今も昔も変わっていないように思えた。いや、そうじゃないだろう。あの頃よりも、ずっしりと言霊が響くといった感じかもしれない。

　初めてカルメン・マキを知ったのは、新宿ロフトが生まれる遙か前の69年。寺山修司氏の筆による「時には母のない子のように」だった。ハーモニカのイントロで始まるこの悲しげな曲がヒット・チャートを駆け上り、結果として彼女が、今では信じられないだろうが、紅白歌合戦にまで登場することになる。その時、裸足でステージに上がった彼女は、子供心にも衝撃だった。なにもかもを捨て去ったような表情で物憂げに歌う彼女のイメージが脳裏に焼き付けられることになるのだ。

　それから数年の後、ジャニス・ジョプリンの影響を受けた彼女はブルース・クリエイションとの活動を経て、"カルメン・マキ&OZ"として再び衝撃を与えることになる。「ロックは売れない」と言われていた時代に、10万枚を越える大ヒットを記録。後のロック・シーンに大きな影響を残すことになる。おそらく、カルメン・マキといえば、どうしてもこの頃のイメージが離れないんだが、それほどの「歴史」を作ったアーティストだったということに他ならない。

　浅川マキが70年に発表したアルバムに収められている「カモメ」という曲を、前日同様、この夜も歌っていたのがカルメン・マキ。面白いのは、それと同名異曲が"真夜中詩集　- ろうそくの消えるまで -"という69年発表のデビュー・アルバムに収録されていて、同じく、浅川マキのデビューアルバム、"浅川マキの世界"には、「時には母のない子のように」という同名異曲が収録されている。接点は、今は亡き寺山修司。どういったいきさつでそうなったんだろう...　久しぶりにカルメン・マキの世界に浸って、そんなことを思ってしまった。

- setlist -

1. かもめ 2. 人魚 3. てっぺん 4. Lilly Was Gone With Windowpane 5. 百億の孤独 6. Nord - 北へ -