buttonハワイアン6 @ 新木場スタジオコースト (5th Dec '05)



 今年の夏、始めて富士山に登った。

頂上から見る朝の景色は、そりゃあもう、素晴らしいものだった。普段小さな世界・小さな社会の荒波の中で、それでもぶつかり、転がり、もがいている自分も、こうして体も元気で日本一でっかい山に登って、友達と「いい気分だねえ」なんつって頂上でおしるこなんぞを食べているかと思うと、何物にも変え難い幸せを噛み締めたのだった。登っていると、色々な人に出会う。海外からの旅行者が、気温0度以下になる夜明け前の頂上付近で、場違いな短パンですっ転び、膝から血を流しながら座り込んでいる。助け起こす日本人の中学生。ポケットに名前の入った部活ジャージから、バンソウコウを取り出す。片言の「ありがとう」が響く。皆でてっぺんを目指す。誰かが倒れそうになったら誰かが荷物を持ってやる。ご来光を拝んで明日の幸せを願う。平和っていいな。友人にできた子供が来年生まれたら、この光景をいつか見せてあげたいな。この日のハワイアン6のライブからの帰り道、自分にとってのささやかな『平和』を考えていた。

Hawaiian 6 2005年、夏の始まり。今回も正にハワイアン6の日(8月6日)に発売されたNEWアルバム『BEGINNINGS』を引っさげての、この日はレコ発ツアー最終日。冷房の切れた車の中で、汗だくになりながら「うおおお!かっこいいー!」と車内シンガロングしていたあの愛すべきクソ熱い夏から季節は巡り、雪になりそうなぐらい寒さの凍みる冬の新木場。左にお台場の観覧車、右にレインボーブリッジ、正面に三日月が綺麗に映る駅からの道には、ロッカーに荷物を預け、Tシャツ短パン姿で早足に会場を目指す若者達の姿もちらほら。気合いである。「メインでこれぐらいデカイとこでやるのは始めて」というスタジオ・コーストはかなりの超満員。ていうか、入れ過ぎですから、これ(笑)。

 会場入りが遅れてしまったが、すでにRISEと海外からのゲストMad Caddiesのライブが終わり、会場の熱は既に何度かは上がっていた。しかし、恒例のSE、ABBAの"Dancing Queen"がかかってハワイアン6の3人が登場すると、一気に気温は上昇。早くも湯気が立ちのぼる。しかし、メンバーはいたって和やかな佇まい。MC担当のドラム・Hatanoが「ツアーラストだからと言って特別なことは一切しません。でも、特別な夜にします!」と盛り上げて始まったライブ。スタートはNEWアルバムのオープニングと同じ"The Lightning"そして"Everybody Has The Devil On The Inside"から。スゲー!何だこれ?2階からフロアを見下ろす。もう、面白いくらいにグシャグシャである。しょっぱなからこんなんでほんとに大丈夫なのか?思わず心配になってしまうくらいであった。

Hawaiian 6「人生を走り続けろ 世界が終わるその日まで 今を生きろ 後悔しないように」。歌詞の内容も、正にライブの始まりに相応しい、彼ららしいオープニング曲であると思う。CDを聴き始め、この曲が流れると途端に世界がハワイアン6に移り変わったように、ライブでもグッと引き込まれる。やっぱスゲエいいなあ。このバンド。スタートからそんなことを改めて痛感させられ、思わず手に力が入ってしまった。汗が飛び散り、思うままに曲を楽しむオーディエンス。小さな子供を連れた親子が、あまりのモッシュの激しさに、さらに後方へと避難していく。"Thousand Of Snow"まで一気に続き、MC。「ファイナルっていうことで、持ち時間は4時間と30分と許されています(笑)」と言いつつ、対バンと打ち上げで『サムライ・スタイル』(一気飲みのことらしい)をするので「1時間半で帰ります」と笑う。ツアーラストなので特別にベースのToruのMCもあり。ところでその七三分けは何ですかね?オモロ過ぎなんですが(笑)。「禿げつつあるから保険だね」とは本人談。曲とのギャップで吹き出しそうになってしまった。まるで学校の先輩と後輩のようなフレンドリーな会話は、でかい会場でも、小さな会場でも、同じなのだろう。ハワイアン6のライブの始まりである。

Hawaiian 6 ライブは『BEGINNINGS』からの曲を中心に、ワンマンライブのような緊張感もあり、朗らかさもあるという、とてもいい雰囲気の中で繰り広げられた。"World""Magic"などのキャッチーなメロディに溢れる希望の歌が乗る曲では、バンドも、オーディエンスも、リラックスして笑顔で一緒になって踊ったり歌ったりしながら楽しんでいるし、"The Black Crows Lullaby""An Apple Of Dischord   "のような曲では、「ジャンルはパンクでもロックでも何でもない。"ハワイアン6"です!」と彼らが言うように、その深い世界観の中で鳴る3人の音の1つ1つの力強さに目を見張り、思わず拳を握りたくなる。

 そしてこの日、忘れることのできない光景をここで目にした。NEWアルバムに収録されている"A Cross Of Sadness"の曲紹介。Hatanoはこんなことを言っていた。

Hawaiian 6「一言に言って反戦、誰も行ったことのない戦争、わかりません。反戦、どんなことか。おじいさん達は言います。アメリカの人達は嫌いです。でも俺たちはMad Caddiesのメンバーも、アメリカ人も好きです。何処の国の人でも、国だから嫌いってことはありません。俺達はアメリカのバンドと手をつないでツアーを廻りました。でも昔の人は手はつなぎません。殺し合います。でも俺達はそんなのは嫌です。アイツらは9月11日を忘れません。俺達は8月6日を忘れません。それでいいじゃないか。忘れなければ。思い続ければ。そういう、知ったかぶりの歌です。行ったこともない戦争、やったこともない人殺し。知ったかぶりして歌います。知ったかぶりして歌詞書きました。最っ高!に『知ったかぶりの反戦の歌』です」

 語尾は違っているかもしれない。しかし、Hatanoのこの言葉は、観客を一瞬にして無言にさせた。この沈黙。長かった。Yutaが深い息を吸い込んで歌い始めるまでの時間。私達は、ただ、そこで息を殺して、彼らの演奏を待っていた。ゆっくりと歌い出し、そこにHatanoの強く重く曲を全身で表現するような気持ちの入ったドラムと、Toruのアグレシッヴで走るベースが乗る。そしてYutaの躍動感溢れるギター。「I pray for continuing peace eternally」と歌い始め、「I pray for all fate has cursed」と歌い終えるまで、体を動かしながら、こみ上げてくる感情を抑えられず、吠えてしまいそうだった。いや、多くの人が、共に吠えていた。ステージに集中した観客の熱い視線。それを一気に引き受けながら、彼らは、歌う。「Where is the promised land?Can't we grab happiness in our hand?」。世界を見渡せば、反戦の歌をうたう人達はたくさんいる。しかし、ここ日本で、こうして真っ正面から反戦を叫ぶバンドは限りなく少ない。歌うことは簡単だ。しかし、胸が張り裂けそうに曲がこれほど沁みたのは、若い彼らがこのテーマを選んで歌おうとする時、何よりも『知ったかぶりであること』を自覚し、それを口に出したことだった。それでも歌おうとする。音楽で『表現』することでオーディエンスと共に、向かうべき道を必死になって探している。何よりも音楽で皆に『伝えたいこと』があるから。だからこそ、響いたのだ。

Hawaiian 6 そして次に「For the young. Death will never save you,It's no life. No matter what happens,don't turn and run away」と歌う"Crime and punishment"から"Crimson Sky"、さらに「お前等が上げてるその手。その足。ここに集まった皆が目の前でピースをしてること。当たり前のことが、当たり前でないこと。そういうことなんだよきっと。お前達の自由。何の上に立ってますか?隣にいる仲間。待っている家族。全員がいて『平和』です。でも平和はいつか崩れます。でも新しい平和を人はいつか作ります。この先ずっと、否定する奴はいっぱいいます。でも、俺達もお前たちも、絶対に進みます。自分達で作りながら。音楽。『音』を『楽しむ』。平和でいいじゃないか。平和ボケでいいじゃないか。今度は『最っ高!の平和ボケ』の歌です!」と歌った"A Piece Of Stardust"への流れは、この日のハイライトと呼んでいいと思う。たった一つの望み。皆が良い夢が見れますように。と祈る歌。MCでフロアに明かりがついた時上げられた、たくさんのピースマークとステージが繋がった瞬間。そこにあるのは音楽と人間。それはとても、綺麗で純粋な光景だった。

 ラストは「生きていることを実感して前に進もうよ」と歌うおなじみの"Flower"から、「ブスかわいい、とか言われてんだぜ(笑)。どう見てもそのブラウスはベルサイユ宮殿の人みたいだけどな」とHatanoに紹介されたYutaの珍しい挨拶もありつつ、「あきらめるな、っいう歌です」と"Ever Green"を。「誰のためでもなく、自分の為に、あせらずに、どうか道を探し続けることを忘れないでください」とハワイアン6は歌う。パアッと明るい光が放たれるような曲たち。そして最後の最後には、やはりこの曲。"Rainbow Rainbow"!今回のアルバムでこの曲を聴いた時、たくさんの人が思ったことだろう。ハイ・スタンダードがたくさんの笑顔や元気をくれたように、ハワイアン6は僕らのヒーローになれるバンドなんだ、と。

 帰り道、凍える寒さの中、高校生ぐらいの若者達が口々に「すげえ良かった!」と興奮していた。今日が終わり明日が始まり、そのうちこの日のことは忘れてしまっても、何ヶ月、何年先でもいい。いつかふとした時に、「彼らはあの時、あの曲で何を伝えたかったんだろう?」そう思い、また、歌詞を見る。もう1度曲を聴き返す。そんな風に曲が愛され、考えさせられ、互いに育っていくことが、何よりも、音楽の素晴らしさなのだと思う。思いっきり平和ボケしている自分。でも、この日の彼らのライブ、そこに居たたくさんの人達と共に同じ時間を共に過ごせたことを、幸せに思います。

 来年は早い時期にNEWシングル、さらにはあのガーリック・ボーイズ親分達のトリビュート盤で新曲を聴かせてくれるらしい!どうぞお楽しみに。
*なお、写真は11月20日に札幌で撮影されたものを使用しています。

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