The Coral @ Namba Hatch (05th Dec '05)
The Coralは男の約束を果たしに帰って来たのか?
空には一面鉛色の低い雲が立ち込め、今にも泣きそうな表情をしている。The Coralの来日と共に、本格的な冬が到来した。フジロックのレポートで「男の約束を果たしに帰ってこい!」なんて偉そうなことを書いてしまった私は、どんなに寒かろうが見逃すわけにはいかない。珍しく開場時間に到着したのだけれど、どうも会場のキャパを考えると圧倒的に入場していく人が少ない!フジロックでのレッドマーキーを満杯にしていた人たちは一体どこに行ったの?そんなことを考えていると、SEでKing Biscuit Timeの"I walk the Earth"やThe Beta Bandの"Assessment"が流れ、にやにやして一人頷く私であった。
19時20分を指した頃、ようやく7人がステージに登場する。アイガール模様のセーターを着たジェームズやナイキのトレーナー姿のリーを見ていると、取り巻く状況はかなり変わっているはずなのに、彼ら自身は何も変わってなさそうだなぁと変な安心感を抱く。フジロックではいきなり"Goodbye"でオーディエンスを秒殺したけれど、今回は"Spanish Main"からのスタート!三味線のようなズンチャズンチャというリーのギターも健在、ツアーを重ねてきているだけあって、笑顔でアイコンタクトを取り合ってってそれぞれのミスをカバーする余裕すら伺える。でも、オーディエンスは借りてきた猫のようにお行儀がいいというかアウェイでゲームを見ている肩身の狭いサポーターのようでここは本当に大阪?なんて気分にもなる。
"Pass It On"を挟んで"She Sings The Morning"へ…。"Dreaming of You"やフロアが待っていた"Skeleton Key"ではなく、この曲が私にとってのハイライトとなった。というのも今のThe Coralはこれまでの『The Coral』『Magic and Medicine』『Nightfreak & The Sons Of Becker』があっての『The Invisible Invasion』で、今のThe Coralにはこれらの曲がしっくりとハマっていたからだ。あのゆらゆらしたギターの音はアームではなく、ヴァイオリンの弓から作り出されていることを発見。でもオーディエンスの反応はやっぱり1stや2ndの曲の方がいいのは否めない。
"Don't Think You're The First"や"Dreaming of You"などの初期の曲はメロディ感よりも、テンポを重視したコンパクトなアレンジに変身、"So Long Ago"なんかの新しい曲についてはじじっくりと音を確かめるかのように演奏されていく。限界に挑戦な位置にリーがギターを構えると"Far From The Crowd"のイントロが奏でられる。カラっと乾いた空気にはピンと張られた弦を弾く音が一音逃さずスピーカーから響く。そして力強い「チック、タック」というポールのコーラスにより"Calendars & Clocks"で本編が終了。
本国ではアンコールをしないという彼らだが、笑顔で再び登場。形式的なただの間合いだとはわかっていても嬉しいもの。まずはオーディエンスが待っていたであろう高速"Skelton Key"にこの日一番の歓声があがって、続いて"Johnny,Remember Me"というカバー曲が披露された。これが今までのThe Coralのどれにも属さず新鮮だったのだが、ジェームズがどっぷり歌いこむ感じがどうしても80年代のアニメソングを彷彿とさせられ、おかしくてしょうがなかった。ジェームズを主旋律として、その上下3音ずつをポール、リー、ニックが取る"Shadows Fall"の絶品コーラスを堪能した後は、ここしばらくのライヴでは定番となっている"Arabian Sand"にて終了。
ライヴ終了後「どうだった?」と聞かれ「フジよりは良かった」という言葉が出てきた。両手を挙げて絶賛とはいかなかった。頭の片隅には何かひっかかるモノがあった。どうしても拭いきれないこのうやむやの原因は何なのか?演奏は悪くないし、メンバー自身もリラックスして笑っている姿もあった。なのに何が足りなかったのだろうか?じっくり考えてみると、今のThe Coralが目指している方向と、オーディエンスが求めているThe Coral像には溝があったのだ。1st、2nd、ミニ・アルバム、そして3rdと時の経過と共に確実に自分の音楽を結実させていっているのに、こちら側はまだ初期のThe Coralの幻影を求めている人が多かったのではないだろうか?またThe Coral自身もリラックスしているように見えたけれども、The Coralであることを守りに入って自らの稼動範囲を狭めているようにも感じた。肩の力が抜けているようで、実は力が入っていたのではないのだろうか?サポートメンバーをそれぞれが気遣っていたのもすぐにわかった。そこにはまだ不在となっているビルの存在に鍵があるようで仕方ない。やっぱりビルの不在は大きい。それは私なんかよりもThe Coral自身が当然感じているのだろうけど、それでもThe Coralの時間を止めることを選ばず、進み続けている。The Coralがそんな男の決断をしたのなら、女は黙ってついていくとしよう。
--set list -- (原文のまま)
SPANISH MAIN / GOODBYE / PASS IT ON / SHE SINGS THE MORNING / SIMON DIAMOND / BILL McKAY / OPERATOR / DON'T THINK YOU'RE THE FIRST / SO LONG AGO / WARNING / DREAMING OF YOU / FAR FROM THE CROWD / IN THE MORNING / SOMETHING INSIDE OF ME / CALENDERS & CLOCKS
--------
SKELETON KEY / JOHNNY,REMEMBER ME / SHADOWS FALL / ARABIAN SAND
|
report by kuniko and photos by ikesan
|
|
|