button メイ @ 渋谷クラブクアトロ (2nd Dec '05)

気持ちを洗うメイの曲


Mae
「1曲目をもう一度歌ってくれ」後ろにいた男の子がこんな事を言っていた。メイ来日公演の初日、とても彼らの本領が発揮されたライヴとは言い難い感じ、見ている側としてはなんとなく物足りなさの残るライヴに終わってしまった。メイの要でもある、クリアでそよ風のように流れてきて、聴く人の心を幸福感でいっぱいにしてくれるはずのデイヴ(ヴォーカル)の声が、周りの演奏に掻き消され、とても聞き取りづらく、それが一番の物足りなさのしこりとなって残ってしまった。アルバム『The Everglow』と同じく"Prologue"で熱い歓声に迎えられてステージに姿を現し、グッと観客を引き込むはずの1曲目、名曲"Someone Else’s Armes"を歌い始めたデイヴの声は、明らかに調子が悪かった。壮大さと圧倒的な美メロとデイヴのクリアなヴォーカルが武器のメイはこんなはずじゃない。この日しか見られなかった一観客としては、残りのライヴがどうだったか、気になるところだ。

Mae メイはヴァージニア州出身の5人組で、ピアノの旋律と甘酸っぱいメロディ・ラインが非常に印象的なエモ・バンド。メンバーは、ザック(g)、ジェイコブ (d)、マーク(b)、ロブ(keyboards)、そしてデイヴ(vo /g)。デイヴとジェイコブによって結成されたこのプロジェクトは、2001年初頭に5人編成となり、ヴァージニア州を中心にライヴ三昧の日々を送る。そして、2003年にアルバム『Destination: Beautiful』を完成させTooth & Nailよりデビュー。サムシング・コーポレイトなどとのツアーを経て得た経験、メンバー間で生まれた更なる音楽への可能性と持ち前のクリエイティビティの高さをフルに発揮し、プロデューサーに、ピート・ヨーンシャーロット・マーティンなどの美くしいメロディとメローな曲作りを手がけるケン・アンドリュースを迎えて、2005年にセカンド・アルバムとなる秀作『The Everglow』をリリース。

Mae 物語りが綴られるように仕上げられたこのアルバムの"Prologue"と"Epilogue"では、シャーロットの天使のような美声のナレーションが聞ける。絵本のようなブックレットも凝っている。一曲ずつメイの音の世界をゆっくり歩きながら、色んな景色や色や季節の匂いを感じ、イマジネーションが広がるアルバムだ。繊細さと柔らかいメロディの流れ、それでいて力強さも持ち合わせた曲調で色んな感情に突き刺さってくる。ここ日本でも、輸入盤の段階から多くの人の琴線に触れ、遂に日本デビューに至った。圧倒的なスケール感と、ピアノの旋律を効果的に盛り込んだ緻密なサウンドは、サムシング・コーポレイトに非常に近い音を持つバンドだと思う。

 さてライヴに話を戻そう。ライヴで聴くメイの音は、想像以上にロックの勢い充分で、その音の厚みに最初は驚いた。轟音とまではいかないけれど迫力あるその厚い音の重なりの中で、あの柔らかなメロディの流れが聞こえてこないんじゃないかと思ったほどだ。それに加えて、もどかしいほど上手く届いてこないデイヴ声なのだから、なんだかこのままで大丈夫なのかと正直不安に思った。最初はそこで不安を覚えたものの、要のメロディ・ラインがしっかりと耳に届いてくると、ホッとして、メイの音とイメージの中を散歩する。散歩・・・、本当にそんな気分。

Mae "Ready and Waiting To Fall"や"Painless"、"The Everglow"は、春の草花の匂いを感じさせて清々しく、陽光が降り注いできて桜色に空気が染まるイメージが広がる。温かな曲で、本格的に寒い季節が始まったばかりなのに、春が待ち遠しくなる。"This Is The Countdown"や"Cover Me"では、カラッとして突き抜ける空の青さ、思いっきり手を広げて太陽を全身で浴びたくなる。強く訴えかけるメロディが物凄く綺麗で、眩しくて、胸がキュッとなって、淡い感情が込み上げてきて泣けそうになる。アレンジを変えて長めのイントロで盛り上げていく"The Ocean"は、歌詞の通りに本当に星がキラキラと舞い降りてくるような、そんな幻想的なイメージすら浮かんでくるんだから、なんてロマンチックな曲なんだろう。

 途中、前作の『Destination: Beautiful』からの曲だと思われるものも何曲かプレイ。セカンド・アルバムに比べると、かなりロック・テイストが濃厚だ。この時からメイのメロディ・センスは群を抜いていたんだろうけれど、やはり『The Everglow』の方が、物凄く心に響いてくるものがあって、個人的には自然に季節の香りや色が感じられるセカンドの曲の方が好きだ。

Mae 観客はメイの光る音の粒を浴びながら、繰り広げられる優しさに満ちたメロディに浸り、それに身を任せて緩やかに体でリズムを刻んでいた。笑顔と恍惚感でいっぱいの顔が会場のあちこちで見られた。そしてやはり印象的なファースト・シングル"Suspension"が、最高潮に観客の気持ちを弾ませていた。シンプルで凝った捻りもなく、ダイレクトに届けられるアップ・テンポのこの曲は、爽快感を心底感じさせてくれて気持ちイイ。晴れ渡った日に聴けば、きっと笑顔で走り出したくなる。心の曇りは一瞬にして吹き飛ばされるステキな曲だ。

 あまりMCもなく、ひたすら演奏に打ち込む彼ら。デイヴの声の調子は後半にはどうにか少しずつ回復されてきたようだった。それでも本調子とまではいかないかんじだけど。アンコールは"Anything"を含む3曲。あっけなくステージを去ってしまったメイだけど、余計な演出や派手な効果はなく、シンプルに聴かせる。これで充分なのかもしれない。

 メイの曲を聴ければ気持ちのモヤモヤやわだかまりはスッキリ取り払われてしまうから不思議だ。メイ・マジック。ちょっとしたことでイライラが積もって、トゲトゲした気持ちが膨らんでいくことが多い日もある。その棘を、メイの曲は一つずつ取って、穏やかで優しい気持ちにさせてくれる。気持ちの洗濯をしてくれているようなかんじ。忙しない毎日を送っているからか、メイのアルバムにはずいぶんと癒されてる。優しい気持ちと一緒に、明日も頑張ろう!なんていう活力も与えてくれる。そしてようやく見ることができた待望のメイのライヴ。ライヴの後にCDを聴いていて、「もう一度歌ってくれ」と言っていたあの彼の言葉を、私も同じ気持ちで言いたくなった。心はほんわかと温かくなれたけれど、なんだか物足りなさが残ったライヴだった。ちょっとだけ残念...。

The photos were taken by ikesan at Shinsaibashi Club Quattro on the 6th of December in Osaka.


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